幹線道路や高速道路を走っていると、自動速度取締り装置をときどき目にします。
これらの装置が何キロオーバーで走行すると作動するのか気になる人も多いことでしょう。
これらの自動速度取締り装置は、「オービス」などと呼ばれていますが、これはアメリカのボーイング社製装置の商標であって、厳密にはすべての自動速度取締り装置がオービスというわけではありません。
しかし、日本では自動速度取り締まり装置のことをオービスと呼ぶことが一般的になっていますので、このページではあえて俗称であるオービスという名称で書かせていただきます。
さて、この自動速度取り締まり装置、すなわちオービスですが、いったいどれくらいの速度オーバーをすると作動するのかという多くの人が抱いている疑問について、詳しく解説をしてみたいと思います。
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一般道30km/hオーバー、高速道路40km/hオーバーで作動?
これまで、追い越し車線を猛スピードで走っていたクルマが、急にスピードダウンしたので「何だろう?」と思ってみると、前方にオービスが設置してあるのが見えたりします。
オービスは、いわゆるネズミ捕りと呼ばれる有人式の速度取り締まりと違い、つねに同一の場所で取り締まりをしていることになりますので、設置場所を知っている人にはまったく効果はありません。
オービスの設置場所を過ぎると、何ごともなかったかのように、再び猛スピードで走りだしたりします。
また、最近のレーザー探知機では、オービスの設置場所があらかじめ地図上に登録されており、GPS機能によって事前にオービスの存在を知らせてくれるようになっています。
そんな、要領のいい違反者を取り締まることのできないオービスですが、どれくらいの速度オーバーをすると装置が作動するのでしょうか?
一般道を走行中の場合には、制限速度を30km/h以上オーバーした場合に作動するといわれています。
また、高速道路の場合には、さらに10km/hプラスされて、制限速度を40km/h以上オーバーしているクルマが摘発されるようです。
しかし、これらの数字は公式に発表されているものではなく、これまでにオービスに捕捉された経験のある人の情報などから、おそらく一般道30km/hオーバー、高速道路40km/hオーバーで装置が作動するのではないかと推測されているにすぎません。
確かに、一般道の場合は30km/h以上の速度オーバーをすると、減点6点で一発免停になります。
同様に高速道路の場合も、40km/h以上の速度オーバーで減点6点の一発免停となりますので、おそらくこうした悪質な速度違反のみにターゲットを絞ってオービスで取り締まりをしているのだと思われます。
ただし、これ以下の速度オーバーでもオービスが作動したという情報もあるようですし、各都道府県警によって微妙に設定を変えていることもあるようなので、正確には何キロオーバーで作動するのかは、誰にも分からないというのが本当のところです。
メーター誤差を考えるとかなり悪質なスピード違反が対象
オービスが作動するのは、一般道が30km/hオーバー、高速道路が40km/hオーバーであると一般には言われていますが、実際にはメーターの表示で一般道90km/hあるいは高速道路140km/hを超えたら作動するという単純なものではありません。
なぜなら、メーターに表示される速度と、実際の速度は微妙に異なるからです。
これをメーター誤差といいます。
実際のクルマの速度というのは、メーターに表示された速度よりも遅いのが一般的です。
参考記事:高速道路は制限速度を超えた110km/h台で走っても捕まらない?~追い越し車線を120km/hだとどうなる?
クルマというのは、メーターの表示速度よりも実際の速度が8%~9%程度少なくなるように設定されていることが多いので、制限速度が100km/hの高速道路でオービスが作動するのは、メーター読みで150km/h以上を出しているときということになります。
また、制限速度が60km/hである一般道においても、メーター読みで100km/h近くまでスピードを出したときに、オービスが作動する可能性が高くなるということです。
こうしてみると、オービスで取締りの対象になるのは「かなり露骨で悪質なスピード違反」ということになります。
そういった悪質なスピード違反を日常的に繰り返すようなドライバーは、どんどん取り締まってもらわなければ困りますね。
首都高速でオービスの餌食になる気の毒な違反者
制限速度が60km/hの一般道や、100km/hの高速道路でオービスの餌食になるのは、かなりの悪質なスピード違反であり、そういったドライバーはどんどん摘発してもらわなければ、他の安全運転をしているドライバーの迷惑になります。
しかし、オービスの餌食になる人のなかには、明らかに気の毒だとしか思えないようなケースもあります。
それが、首都高速に設置されたオービスの餌食になった人々です。
首都高速の制限速度は60km/hであり、環状線などでは50km/h制限のところが多いですし、場所によっては40km/h制限のところもあります。
首都高速は、「高速道路」という名称にはなっていますが、制限速度は一般道と同じなのです。
参考記事:首都高速の制限速度は一般道と同じだということをご存知ですか?
もし、40km/h制限の区間に設置してあるオービスの前を、メーター読みで85km/h~90km/hの速度で走るとオービスが作動する可能性があるのです。
首都高速は、普通に流れに沿って走っていれば80km/h~100km/hほどの速度になっていることも多く、逆に40km/hや50km/hのスピードで流れに逆らって走ると、追突の恐怖すら感じると思います。
実際に空いている首都高速を85km/h程度で走っていたら、突然オービスの赤い光につつまれて心臓が止まる思いをしたという人が何人もいます。
首都高速は、一般道のように歩行者や自転車などが走っているわけでもなく、交差点や信号などもありません。
そんな首都高速を、他のクルマがほとんど走っていない時間帯にメーター読み85km/h程度で走っていて、オービスが光って一発免停になるというのは、なんとも気の毒な気がしないでもありません。
先ほども書きましたように、一般道や高速道路に設置されているオービスは、よほどの悪質なスピード違反をしなければ作動することはありません。
しかし、首都高に設置されたオービスは、普通に流れに沿って走っていても作動する可能性があるのです。
首都高速を走るときには、十分に気をつけたいものです。
時速160キロ以上で走ればオービスは作動しない?
「オービスは、構造上160km/h以上のスピードを出しているクルマを取り締まることができない」
そんな話を耳にしたことがある人もいるかも知れません。
つまり、高速道路を150km/hで走行していると捕まるけど、それよりも速い160km/hで走行すると捕まらないということです。
ただの噂話や都市伝説のようにも聞こえますが、これはまるっきりウソというわけでもないのです。
1980年代までの古いタイプのレーダー式オービスだと、本当に160km/hオーバーで走行すると写真に写らないこともあったようです。
当時のクルマはいまのクルマにくらべて性能が悪かったため、160km/h以上で走行できる車種そのものが限られていましたので、それでも問題がなかったのでしょう。
しかし、最近のクルマは本当に速くなっていますので、160km/h以上のスピード違反を取り締まれないとなると「つかえねー装置」ということになってしまいます。
参考:国産車の最高速度はどれくらい?~ミニバンだと160km/h・GT-Rは315km/h
そのため、現在ではレーダー式であっても、199km/hまで測定ができるようになっています。
ただし、レーダー式のオービスは精度の問題などもあり、最近ではほとんど使われてなくなっています。
現在主流になっているHシステムだと220km/hまでの測定ができるようになっていますし、最新式のLHシステムですと、240km/hまで測定が可能です。
関連記事:オービスの仕組みの違い~レーダー式・ループコイル式・LHシステム・Hシステム・最新のレーザー式
「160km/h以上で走れば捕まらない」などという噂をうっかり信じて実行に移すと、間違いなく痛い目にあいます。
実際に、中央高速を235km/hで爆走した男が、オービスに捕捉されて逮捕となったニュースを覚えている人も多いでしょう。
参考:警察を本気にさせてしまった中央高速235km/h暴走男の誤算~警察なめんなよ!
15キロオーバーで捕まる可能性のある恐怖の移動式オービス
よほど悪質なスピード違反をしなければ、オービスに捕捉されることはないというお話をさせていただきましたが、これはあくまでも固定式オービスでの話です。
最近、飛ばし屋たちを震撼させているのが、レーザー式移動オービスの存在です。
このレーザー式移動オービスは、文字通り移動が可能なため設置場所を特定することが困難で、レーザー光線を使って速度を測定する仕組みになっていますので、従来のレーダー探知機では捕捉できません。
しかも、この移動式オービスは、軽微なスピード違反であっても容赦なく摘発をしてしまうようです。
実際に、15kmオーバーで検挙されてしまったというドライバーによる情報をネット上で見かけたりします。
オービスは赤キップ相当の悪質なスピード違反でなければ摘発しないという、これまでの常識が移動式オービスの場合は通用しないのです。
ネズミ捕りや白バイによる追尾での取締り対象が15km/hオーバー以上といわれていますので、取締り対象がそれらと同等ということになっているものと思われます。
ただし、実測で15km/hオーバーで捕まるということは、制限速度60km/hの一般道をメーター読み80km/h以上の速度で走行していた可能性が高いと思われますので、確かにスピードの出し過ぎであることは間違いありません。
特に、道幅が狭くて歩行者などが多い生活道路で移動式オービスの取締りをしていることが多く、30km/h制限の区間を45km/hで走行して15km/hオーバーで検挙されたりすることがあるようです。
最近は、渋滞区間を避けるためにナビの情報をもとに生活道路を猛スピードで走る悪質なクルマが後を絶ちません。
移動式オービスが、そういった悪質なクルマを取り締まる目的で利用されているということであれば、15km/hオーバーでの摘発は大歓迎です。
関連記事:レーザー式オービスでスピード違反車両は一網打尽にされてしまうのか?~現在の探知機では捕捉は不可能
ナンバープレートが確認できないと検挙できない
オービスによる取り締まりで、違反者を特定するための証拠となるのは、撮影された写真です。
その写真に写り込んだ人物の顔と、クルマのナンバープレートにより、違反者を特定するわけです。
実際にこのどちらかが確認できなければ、違反者の特定は困難だといえるでしょう。
この点が、現行犯で御用となるネズミ捕りとの大きな違いとなります。
2013年に、バイクに乗った男が40km/hオーバーのスピード違反で、37回もオービスに補足されていながら、検挙されなかったという事件(?)が発生しました。
メンツをつぶされた大阪府警は、10人態勢で張り込みをして、なんとか道交法違反容疑でこのおバカさんライダーを現行犯逮捕しました。
しかし、なぜオービスは37回もこの悪質なライダーを見逃してしまったのでしょうか?
理由は単純で、バイクのナンバープレートは後ろにしかついていないからです。
オービスは、運転をしている人の顔と前についているナンバープレートを同時に撮影する仕組みになっているために、前面にナンバープレートのないバイクの場合には、人物の顔だけしか撮影できないことになります。
この逮捕された男はそのことを知っていて、警察を小馬鹿にするように何度も意図的にオービスの前で違反を繰り返したために、大阪府警を本気で怒らせてしまったわけです。
なかには、オービスに向かってピースサインをしながら記念撮影(?)をするような不届きなライダーもいるようですが、警察を怒らせるのもほどほどにしておかないと痛い目にあいます。
また、オービスによってナンバープレートを撮影されないように、赤外線を吸収するナンバープレートカバーを着けて走っているクルマを以前はよく見かけました。
しかし、2016年4月の道路運送車両法の改正により、ナンバープレートカバーが全面禁止になったために、さすがに最近ではそういった車をほとんど見かけなくなりました。
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サングラスとマスクで変装したら捕まらないのか?
たとえ違反者の顔が写真に写っていたとしても、車両のナンバープレートが確認できないことには摘発は困難だということが、これまでの説明で分お分かりいただけたかと思います。
それでは、ナンバープレートは写っているけれども、違反者がサングラスやマスクで顔を隠していた場合にはどうなるのでしょうか?
普段から運転中にサングラスをしている人はいますし、花粉症の季節になればマスクをしている人も多いでしょう。
実際に、オービスが明らかに光ったにもかかわらず、その後に警察からはまったく音沙汰がないという人も少なくありません。
以前であれば「オービスのフィルムが切れて撮影できなかったのだろう」という話になることが多かったのですが、フィルム式のオービスは2008年に製造中止になっています。
現在のオービスは、デジカメで撮影したものをデータ転送する仕組みのものが多くなっていますので、かつてのようにフィルム切れでは説明がつかなくなっています。
フィルム切れじゃないとすると、オービスが光ったにもかかわらず警察から音沙汰がない理由として考えられるのは、写った写真からではナンバープレートと人物の特定ができなかったということです。
実際に猛スピードで走っている車を撮影するわけですから、写真がブレてしまうこともあるでしょうし、1枚の写真に2台のクルマが写ってしまった場合なども、どちらの車両が違反車両なのかを特定するのは困難なこともあるでしょう。
また、サングラスやマスクなどにより、人物の特定が困難なために違反者を特定できないということもあるでしょう。
仮にナンバープレートははっきりと写っていたとしても、そのとき運転していたのがクルマの所有者とは限りません。
その日はたまたま友人に車を貸していたと主張されたら、それ以上の追及をするのは難しいからです。
「変装をして運転をしていればオービスで捕まることはない」などと都市伝説のように言われることがありますが、意外にもこれは真実なのかも知れません。
オービスでの取締りは、白バイやネズミ捕りのように現行犯で摘発するわけではありませんので、つねに冤罪の可能性を考えなければなりません。
たった1枚の写真を判断材料にする以上、摘発がより慎重になってしまうのは当然といえます。
オービスが光ってから1ヵ月以上たっても警察からまったく音沙汰がないようであれば、何らかの理由であなたの違反は特定されなかったと考えていいと思います。
ただし、先ほどの37回もオービスを作動させたおバカさんライダーのように、警察をコケにすると痛い目にあいますので、くれぐれも変装してオービスを何度も作動させるなどというアホなことはやめましょう。
文・山沢 達也
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