中央高速道路を235km/hという狂気のスピードで走行した男が逮捕されて話題になりました。
235km/hというスピードもそうですが、そんな猛スピードにもかかわらず、しっかりとそのクルマを画像におさめた自動速度取り締まり装置(通称オービス)の撮影能力にも驚かされされます。
これまで、オービスは160km以上のスピードだと撮影できないとか、200km/h以上だと捕捉されないなどといったさまざまな噂がありましたが、実際には235km/hのスピードで走るクルマをしっかりと画像に残すことができたわけです。
また、この暴走男はクルマの前面のナンバープレートを外すことで、オービスに撮影されても検挙されることはないとタカをくくっていたようです。
しかし、男のある行動が警察を本気にさせてしまい、結果的に逮捕されることになりました。
いったい235km/h暴走男のどういった行動が警察の逆鱗に触れてしまったのでしょうか?
※オービスというのは、ボーイング社製自動速度取り締まり装置の商標ですが、ここではあえてすべての自動速度取り締まりのことを俗称であるオービスと表現しています。
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235km/h暴走男はオービスのことを知り尽くしていた?
中央道で235km/hの猛スピードで走行したとして逮捕された暴走男は、まるで警察を小馬鹿にするかのように中指を立てた姿で、オービスの画像に写っていたようです。
あきらかに警察を挑発しているとしか思えないその行動から、愉快犯であることは間違いないのですが、実はこの暴走男はオービスを知り尽くしていた可能性があります。
クルマの前側のナンバープレートを取り外していたようですが、オービスというのはその構造上、クルマを前方から撮影することになりますので、前側のナンバープレートを取り外していると、車両の特定が困難です。
また、オービスというのは、メーカーや測定方式によっても変わりますが、測定できる速度に限界があります。
現在日本国内に設定されている最新のオービスであっても、240km/hが限界だといわれています。
つまり、240km/hを超えるとオービスに写らない可能性があるのです。
この爆走男は、そういったオービスの特性を知っていて、あえて撮影できるギリギリの速度である235km/hで意図的に走行した可能性があります。
なぜなら、この男が乗っていたダッジ・チャレンジャーというモンスターマシンの最高速度は、300km/hを超えるといわれているからです。
オービスに写らないとされている240km/h以上のスピードで走行することも余裕でできたはずなのに、あえてそれをせずに235km/h速度で走行したということは、オービスに写りたかったのかも知れません。
235km/hで走行するクルマを撮影できるオービスは限られます
どんなタイプのオービスでも、235km/hという猛スピードのクルマを捕捉できるわけではありません。
オービスには、仕組みの違いによって「レーダー式」「ループコイル式」「LHシステム」「Hシステム」といった方式があります。
参考記事:オービスの仕組みの違い~レーダー式・ループコイル式・LHシステム・Hシステム
これらのさまざまな方式のオービスのなかで、実際に235km/hで走行するクルマを捕捉できるのは、LHシステムか、データ転送方式の最新のループコイル式になります。
これらの方式の速度測定限界は240km/hとされています。
つまり、235km/h暴走男を捕捉したシステムは、LHシステムかデータ転送方式のループコイル式ということになります。
ちなみに、235km/hが記録されたのは国立市内の中央自動車道上り車線に設置されているオービスとのことですので、LHシステムのオービスであると思われます。
160km/h以上だとオービスに捕捉されないというのは過去の話です
160km/h以上のスピードで走行すれば、オービスに写らないという噂話を耳にしたことがある人もいるかも知れません。
確かに、1980年代に生産されていた一部のオービスのなかには、速度測定限界が160km/hとなっていた機種も存在しました。
しかし、こういった古い機種は現在では設置されていないと思われますので、160km/h以上で走ればオービスに捕捉されないというのは、現在では完全な間違いということなります。
ちなみに、レーダー式やフィルム式のオービスの速度測定限界は199km/hとなっていますので、200km/hオーバーで走行すると写らない可能性があります。
いま話題になっている移動オービスの場合ですと、レーダータイプの速度測定限界が199km/h、光電管式タイプの速度測定限界が230km/hとなっています。
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オービスの記録は235km/hでもメーター読みの速度は250km以上だった?
暴走男が中央高速のオービスに捕捉された速度は235km/hとなっていますが、クルマにはメーター誤差というものがあります。
メーターの表示というのは、実測よりも8%~9%ほど高く表示されるようになっているのです。
GPS機能付きのドライブレコーダーやレーダー探知機を設置している人は、そこに表示されている速度とメーターに表示されている速度を比較してみると分かりますが、GPSによる速度の方が遅く表示されます。
こうしたメーター誤差があるため、制限速度が60km/hの一般道を70km/h程度で走っていてもスピード違反で捕まることはまずないと考えられています。
そういったメーター誤差のことを考慮した場合、この男が乗っていたダッジ・チャレンジャーのメーター指示値は250km/h以上となっていた可能性があります。
制限速度100km/hの高速道路を、メーター読みで250km/h以上の速度で走っていたわけですから、まともな神経の持ち主ではないことは間違いなさそうです。
ナンバープレートを外していたのに暴走男はなぜ逮捕されたのか?
先にも書きましたように、オービスに捕捉されたとしてもナンバープレートが鮮明に写っていないと、車両や違反者を特定することは困難です。
235km/h暴走男も前側のナンバープレートを外していたわけですから、そう簡単には特定されないことになります。
もしこれが、40km/hオーバー程度の速度違反であれば、警察もそのまま放置した可能性が高いでしょう。
実際にオービスに撮影されたにもかかわらず、ナンバープレートが鮮明に写っていないなどの理由で、そのまま放置されてしまうケースも少なくないようです。
警察も暇ではありませんから、よほどのことがない限りは割に合わない捜査はやらないわけです。
しかし、今回のケースは少し事情が違います。
235km/hという非常識なスピードを出していたということや、警察を小馬鹿にしたように中指を立てた画像が写っていたことなどもあり、警察を本気にさせてしまったわけです。
警察を本気にさせてしまうと、たとえナンバープレートが写っていなくても、違反者が特定されてしまうこともあるということが、今回の件ではっきりとしたわけです。
本気になった警察が執念で行った「車当たり捜査」
今回の暴走男を逮捕するために、2年以上にわたって警視庁は執念の捜査を続けてきました。
俗に「車当たり捜査」と呼ばれる、疑わしいと思われるクルマを1台ずつしらみつぶしに確認していく捜査を長期間続けたのです。
各料金所に設置された監視カメラらやNシステムの画像などを使って、暴走男の居住地を絞って行ったわけです。
Nシステムというのは、高速道路や幹線装置に設置された、撮影装置のことです。
なんとなく形がオービスと似ているので、速度取り締まりと勘違いをしてドキッとさせられた経験のある人も少なくないでしょう。
暴走男が速度違反をした当日の行動パターンも、そういったデータを徹底的に活用して絞り込んでいったようです。
また、暴走男が乗っていたクルマが、黄緑色のダッジ・チャレンジャーという非常にめずらしいクルマであったことも、捜査の重要な手掛かりになったに違いありません。
そういった警視庁の執念が実って、ついに「警察を舐めている」暴走男は逮捕されることになったわけです。
警察当局は、逮捕時に記者クラブに声をかけて、暴走男が逮捕される姿をしっかりと撮影させて「さらし者」にしました。
警察もよほど腹に据えかねていたのでしょう。
警察を舐めるとロクなことにはならないといことを、この暴走男が証明してくれた事件でした。
文・山沢 達也
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