車の免許をお持ちの方ならば誰でもご存知なはずですが、日本の高速道路における制限速度は100km/hです。
2019年3月より新東名と東北道の一部区間で、試験的に制限速度が120km/hの区間が設けられていますが、まだまだ一般的ではありません。
こうした一部の試験的な区間以外の高速道路では、制限速度である100km/hを1km/hでもオーバーすれば取り締まりの対象となります。
しかし、それはあくまでも建て前です。
なぜなら、実際にはこの制限速度を10km/h以上オーバーした110km/h~120km/h程度で走行していても、捕まる可能性は低いからです。
さすがに、120km/hを超えると摘発される可能性が高くなります。
それはいったいなぜでしょうか?
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追い越し車線を110km/h~120km/hで走ってもなぜ摘発されない?
実際に高速道路を走っていると、近くをパトカーが走っているにもかかわらず、追い越し車線を平然と110km/h~120km/h程度で走っているクルマをみかけます。
そういった光景をみると、制限速度が100km/hなのはあくまでも本線だけであって、追い越し車線は120km/hまでOKなのかと勘違いする人もいるかも知れません。
しかし、道路交通法では、どの車線を走っていても100km/hが高速道路の法定速度ということになっています。
たとえ追い越し車線であっても、100km/hを1km/hでもオーバーしたら速度違反ということに厳密に言えばなるのです。
そうなると、追い越し車線を110km/h~120km/hで走行しているクルマはスピード違反をしているということになりますが、なぜパトカーが摘発しないのでしょうか?
メーターで表示されている速度と実際の速度はかなり違います
追い越し車線を110km/h~120km/hくらいのスピードで走っているクルマをパトカーが摘発しない理由はいくつか考えられますが、その1つにメーター誤差の問題があります。
クルマのスピードメーターには誤差があり、実際にメーターで表示されている速度と実際の速度は異なります。
メーター誤差は車種によっても異なりますが、多くの国産車はメーターの表示よりも実際の速度が8%~9%遅くなるように設計されています。
ちなみに、車検のときには必ずこのメーター誤差がチェックされますが、その基準は以下の数式に当てはまる範囲となっています。
10(V1 -6)/ 11 ≦ V2 ≦(100 / 94)V1
V1というのはメーターに表示されている速度で、V2が実際の速度になります。
この数式のV1に100km/hを代入してみると、実際の車の速度は85.5km以上106.3km以下ということになります。
それでは、こんどは110km/hをV1に代入してみましょう。
すると、実際の速度は94.5km/h以上117km/h以下ということになります。
もし、メーターで110km/hを示しているときにパトカーに捕まっても「メーター誤差があるから実際の速度は95km/hくらいしか出ていなかったはず」と主張する人がいるかも知れません。
これが、120kmとなると話は別です。
メーターで120km/hを表示しているということは、実際の速度は103.6km/h以上127.7km/h以下ということになり、どう言い訳をしても制限速度の100km/hは超えてしまうことになります。
ということは、メーター読み120km/hで高速道路を走るとスピード違反で摘発されてしまうのでしょうか?
実際には、そんなことはありません。
先ほども書きましたように、パトカーをメーター読み120km/hくらいのスピードで追越していくクルマはいくらでも見かけますし、そのクルマが摘発されることもありません。
なぜなら、15km/h未満の速度違反で摘発される可能性はきわめて低いという事実があるからです。
先ほども書きましたように、新車で販売される多くのクルマは、メーターの表示よりも実際の速度が8%~9%少なくなるように設定されています。
そのため、追い越し車線を120km/hのメーター表示で走っているクルマの実際の速度は、110km/hくらいになります。
実際の速度が110km/hということは、10km/hオーバーということになるわけです。
過去の取締りのデータをみても、10km/hオーバー程度のスピード違反で摘発をされるといことはめったにないのです。
なぜ15km/h未満の速度違反は取り締まらないのか?
これは、高速道路に限ったことではなく一般道も含めてのことですが、15km/h未満の速度違反で捕まることはまずないというまぎれもない事実があります。
実際に、2013年度の全国での速度取り締まりによる検挙数は205万件(一般道のみ)ありましたが、その中で15km/h未満の速度違反で検挙されたのはわずか15人です。
205万人中の15人ですから、15km/h未満の速度違反で捕まるというのは確率的にほぼゼロに近く、本当に稀なケースであるということがお分かりになると思います。
なぜ15km/h未満の速度違反を摘発しないのかといいますと、先ほど書きましたメーター誤差の問題もさることながら、測定機器の誤差の問題も当然あります。
よく「ネズミ捕り」などと呼ばれるレーダーによる定置式の速度取り締まりが行われますが、こうした定置式の取り締まりの場合、機器のセッティングの仕方などによって誤差が出てしまう場合も少なくないのです。
関連記事:レーダー式のネズミ捕りは誤測定が当たり前?~濡れ衣で検挙もありえます
また、白バイやパトカーなどの追尾による測定も、取り締まりをするやり方によっては誤差が出てしまう可能性があるわけです。
つまり、そういったさまざまな誤差や機器の設置ミスによる誤測定によって冤罪を生まないために、15km/h未満の速度違反に関しては、なるべく検挙しないようなルールになっているのではないかと思われます。
そうでなければ、15km/h未満の速度違反で捕まった人が、205万人中でたった15人しかいないというのは説明がつきません。
高速道路の追い越し車線をメーター読みで120km/hほどのスピードで走っていたとしても、実際の速度は110km/h程度ですから、速度違反の区分としては15km/h未満ということになります。
ですから、あなたが205万人中の15人に入るくらい特別に運の悪い人でなければ、まず摘発されることはないと考えていいと思います。
ただし、メーター読みで125km/h以上で走行する場合は、実測でも115km/h以上になる可能性が高いので、いつ摘発されてもおかしくありません。
ちなみに、これを制限速度が60km/hの一般道に当てはめてみますと、75km/h程度まではまず捕まらないが、80km/hになると捕まる可能性があるということになるでしょう。
メーター読みだと、80km/h程度まではギリギリ捕まらない可能性が高いですが、85kmだと確実に捕まると考えていいと思います。
もちろん、あなたが205万人中15人の運の悪い人になる可能性もゼロではありませんので、日頃からスピードは控えめにして安全運転を心がけましょうね。
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タイヤやホイールを交換している人はメーター表示に注意です
クルマにはメーター誤差というものがあり、メーターに表示されている速度よりも実際の速度は8%~9%ほど遅いというお話をさせていただきましたが、これはあくまでもノーマルのタイヤとホイールを使用している状態での話です。
ドレスアップでホイールやタイヤを交換する人も多いと思いますが、そのことによってメーカーが想定していたメーター誤差の範囲に入らなくなってしまう可能性があります。
交換したあとのタイヤの直径が大きくなってしまうと、メーターの表示はノーマルのときよりも遅い表示になります。
そうなると、メーター誤差があるから高速道路の追い越し車線は120km/hくらいまでは大丈夫と思っていたのに、実際には思っていたよりも速度がでていて、速度違反で摘発されてしまうということもあり得ます。
逆に、タイヤの直径が小さくなっているときには、ノーマルのときにくらべてメーターの表示は速くなります。
そうしたケースの場合は、追い越し車線を120km/hオーバーで走行していても、摘発されない可能性があります。
タイヤやホイールを交換している人は、ノーマルのときにくらべてタイヤの直径が大きくなっているのか小さくなっているのかを確認しておくといいでしょう。
タイヤやホイールのサイズと直径に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
タイヤを変えるとスピードメーターが狂う?~インチアップのときにはサイズにご用心
法定速度を厳密に守っていたら大型車を追越すのは不可能?
片側2車線の高速道路では、大型車両などが本線を80km/h~90km/h程度で走っていることが多く、普通車がそういったクルマを追い越し車線からどんどん抜き去っていきます。
そういった大型車両を追い越していく場合、制限速度の100km/hを厳密に守っているとけっこう大変なことになります。
たとえば、長さ10mの大型トラックが100m前方で80km/hで走っていたとします。
この大型トラックを、全長5mの普通車が時速100km/hで追い越したあと、後方に100mの車間距離を確保しようとすると、約1kmも走行しなければならないのです。
時間でいうと、40秒近くかかることになります。
さらに、前方を走っている大型車両が90km/hで走っていて、あとの条件はまったく同じだった場合には、約2kmも走行しないと追い越しできないことになります。
たとえ追い越し中であっても制限速度は守らなければなりませんので、これはこれで正しいといえるのですが、一つだけ困ったことが起こるのです。
それは、通行帯違反の問題です。
追い越し車線を走っている車両は、追い越しが完了したらすみやかに本線に戻らなければいけません。
もし、本線にもどらずにずっと追い越し車線を走り続けていると「通行帯違反」で捕まる可能性があるのです。
意外にこれを知らない人も多く、追い越し車線を我が物顔で延々と走り続ける人をときどき見かけます。
しかし、これは立派な違反であり、摘発されると違反点数1点と反則金6,000円の罰則が科せられます。
実際に、追い越し車線をどれくらいの距離走ると通行帯違反になるのかといいますと、明確な基準はないようですが、およそ2km程度といわれています。
先ほど書きましたように、時速90kmで走っている大型トラックを、制限速度内の100km/hで追い越そうとすると約2km走行しなければなりませんから、速度違反では捕まらなくても通行帯違反で捕まる可能性が出てくるわけです。
前方に90km/hで走っている大型トラックが2台~3台連なっている状況のときに、それらを一気にゴボウ抜きしようと思えば、100km/hの制限速度を守っていると、間違いなく通行帯違反となることでしょう。
つまり、厳密に道路交通法を守ろうとすると、時速90kmで走っているトラックを追い越すのは難しいということになるのです。
前方を90km/hで走っている大型トラックを追い越しできないとなると、今度は渋滞が発生する可能性が出てきますので、それはそれで問題なわけです。
そういった理由もあり、追い越し車線をメーター読みで120km/hくらいで走っている車がいたとしても、パトカーは大目に見てくれているという部分はあるのだと思います。
オービスの場合はメーター読み150km/h程度までは大丈夫?
追い越し車線をメーター読みで120km/h以上の速度で走っていると、スピード違反で摘発される可能性があるということがここまでの説明でお分かりになったかと思いますが、オービス(自動速度取り締まり装置)の場合はどうなのでしょうか?
オービスというのは、基本的に悪質なスピード違反を対象として取締りをしていますので、メーター読みで120km/hを少し超えた程度の速度で摘発されることはまずありません。
一般に高速道路の場合だと、オービスが作動するのは40km/hオーバー以上だといわれています。
参考:オービス(自動速度取締り装置)は何キロオーバーで走ると作動する?
つまり、実際のスピードで140km/h以上、メーター読みだと150km/h以上で走行するとオービスが作動する可能性が高いということになります。
メーター読みで150km/hというと、かなり悪質なスピード違反ということになります。
ですから、一般的なドライバーが追い越し車線から大型車両を抜き去る程度のスピード違反では、オービスは反応しないと考えていいでしょう。
首都高速を120km/hで走っていたら免許証がいくつあっても足りない?
高速道路の追い越し車線をメーター読み120km/h程度のスピードで走っていてもパトカーに捕まる可能性は低く、オービスに捕捉されるということもまずありません。
しかし、それはあくまでも高速道路の制限速度が100km/hである場合です。
実は、高速道路の制限速度というのは必ずしも100km/hとは限りません。
山間部などではつねに80km/hに制限されている区間もありますし、圏央道の片側1車線区間のように70km/h制限のところもあります。
また、普段は100km/hの区間であるにもかかわらず、悪天候などにより一時的に制限速度が低くおさえられることもあります。
こういった区間では、当然ながら取り締まりの対象となる速度も下がります。
そういった区間をいつもの調子でメーター読み120km/hくらいの速度で走行していると、突然うしろからサイレンの音が聞こえてきて、口から心臓が飛び出るほど驚くことになるかも知れません。
特に注意をしなければならないのが、首都高速です。
名称は首都高速道路となっていますが、厳密にいうと高速道路ではなく、制限速度も一般道と同じ60km/hです。
環状線にいたっては50km/h制限になっていますし、場所によっては40km/h制限の区間もあります。
関連記事:首都高速の制限速度は一般道と同じだということをご存知ですか?
首都高速を一般の高速道路と同じだと勘違いをして120km/h近いスピードで走行していると、あっと言う間に運転免許証の点数がなくなってしまうことでしょう。
クルマを運転するときには、つねに速度制限の道路標識を確認して、安全運転につとめるようにしたいものですね。
文:山沢 達也
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