かつては、車の耐用年数はおよそ10年で、走行距離の限界は10万kmといわれておりました。
クルマを買い替える際などにも、10年落ちで10万kmを超えていると下取りの対象にならず、廃車にするしか選択肢がなかった時代が確かにありました。
しかし、最近ではその程度の年式や走行距離で、クルマを廃車にすることを考える人は少ないと思います。
車の耐用年数が昔にくらべてどんどん伸びてきたことにより、10年落ちで10万kmオーバーのクルマであっても普通に売れるようになってきたからです。
実際に、国産車の耐用年数はどれくらいなのでしょうか?
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車の耐用年数が40年前とくらべて1.8倍に伸びている理由
いまの国産車は、10年以上乗ったクルマであっても、かつてのようにボディが腐って穴が開いてしまったり、エンジンに異常をきたしたりすることはほとんどなくなっています。
つまり、10年以上乗ったクルマであっても普通に実用になり、中古車としての価値も十分に残っているということになります。
ある程度の年齢の方は、車は10年過ぎたら乗りつぶしか廃車にするしかないというイメージを持っているかも知れませんが、それはいまの国産車の耐用年数が大幅に伸びているということを知らないからです。
実際に、現在のクルマの平均寿命(新車登録されてから廃車にされるまでの期間)が、40年前にくらべて1.8倍にまで伸びているのです。
塗装の技術が未熟なために平均寿命が短かった40年前のクルマ
車が新車登録されてから廃車になるまでの平均寿命は、いまから40年前の1976年には約7年でした。
この当時のクルマは塗装の技術が低く、5年も乗るとボディのあちらこちらにサビや腐食が起こりました。
特に、海に近い地域で乗っていたクルマのボディの劣化がひどく、5年ほどでドアの下部などに穴が開いてしまうクルマも珍しくありませんでした。
エンジンは5年程度でダメになるということはありませんでしたが、ボディが持たなかったのです。
そのため、5年も乗るとほとんど車としての価値がなくなり、下取りにおける査定額もほぼゼロになるというのが一般的でした。
そして、新車登録から7年ほどで廃車にされるというのが、当時のクルマの一生だったのです。
ところが、平成27年のデータでは普通車の平均寿命(平均使用年数)が12.53年、小型車で12.28年と12年を軽くオーバーしています。
40年前とくらべて、平均寿命が1.8倍も伸びていることになります。
塗装技術の進歩によって最近のクルマがさびにくくなったことによって、平均寿命もどんどん延びてきたわけです。
最近のクルマはどんな色のボディでも、かならず最後にクリア塗装をしますが、40年前のクルマでクリア塗装がされたのはメタリック色だけでした。
つまり、当時は塗装の被膜そのものが、現在のクルマにくらべて薄かったということです。
また、クリア塗装をしていないボディは、年月が経つことにより、チョーキングという指で触ると白い粉のようなものが着く現象がよく起きたものです。
最近では、かなり年式の古いクルマであっても、チョーキングやさびが発生しているクルマはめったに見かけなくなりました。
塗装技術の進歩は、クルマの平均寿命をのばすことに大きく貢献をしているわけです。
参考記事:廃車寸前のポンコツ車がそれなりの査定額で評価される理由
クルマの耐用年数が10年と考えられていた時代もありました
かつて、車の耐用年数は10年程度であると考えられていたのは、塗装技術が未熟だったからだけではありません。
一昔前までは、タイミングベルト寿命の問題がありました。
エンジンのカムシャフトを動かすタイミングベルトが切れると、エンジンはまったく動かなくなってしまいます。
そのタイミングベルトの寿命が、およそ10万kmといわれていました。
タイミングベルトを交換すると、5万円~8万円程度の費用がかかるため、それならば廃車にしてしまった方がいいと考える人も当時は少なくなかったのです。
ところが、現在の車の多くは、タイミングベルトではなくタイミングチェーンが使われているため、交換時期が30万kmまで伸びました。
そのため、普通に乗っている分には10年程度ではまったく廃車を考える必要などなくなったわけです。
関連記事:10万kmでタイミングベルトの交換は過去の話です~今はタイミングチェーンが主流
また、かつて新車登録から10年過ぎると廃車といわれたもう一つの理由としては、メーカーの部品供給義務が販売から10年であるという点も影響していると思われます。
クルマを長く乗りたいと思っても、メーカーが部品を供給してくれなければ、メンテナンスをすることができなくなってしまうからです。
しかし、実際には10年過ぎても供給されている部品は多く、人気車種の場合には20年以上たっても部品の供給がされることも少なくありません。
かりにメーカーの部品供給がとまったとしても、リサイクル部品を使うことが常識となった現在では、廃車となった中古車などから部品を調達することでなんとかなってしまうことも多いです。
公道を走っている車の平均車齢は8年
車の平均寿命が大幅に伸びたということは、いま走っている車の平均車齢も大きく伸びたことになります。
いまから40年前の1976年には、公道を走っている車の平均車齢は3.5年ほどでした。
つまり、当時は本当に新しい車ばかりが道路を走っていたことになります。
ところが、平成26年になると公道を走っている車の平均車齢は、約8年にまで伸びています。
公道を走っている車の平均車齢が8年ですから、多くのクルマが7年前後で廃車にされていた40年前には考えられないほど、国産車は高齢化(?)をしているわけです。
6年落ちや7年落ちのクルマであっても、公道上を走っているクルマの平均車齢とくらべるとまだまだ新しいクルマということになります。
7年落ち程度のクルマが思った以上に高額査定になることがあるのも、当然といえば当然のことなのです。
ときどき「10年落ちのクルマは売れるわけがない」などと言う人がいますが、そういう人は、かつて7年前後でクルマが廃車にされてきた時代の記憶がいまだに残っているのかも知れません。
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海外では30万km程度まで走らせるのが普通
10年で10万km以上を走った車でも、廃車にすることを考える必要がなくなった理由は、塗装技術の向上やタイミングベルトの問題だけではありません。
日本でニーズのなくなった古いクルマであっても、発展途上国などで新たな活躍の場を得ることができるようになってきたということも一つの大きな理由です。
品質が高くて壊れにくい日本車は、たとえ古い年式のものであっても、海外では非常に人気が高く飛ぶように売れていきます。
まだまだぜんぜん乗れるにもかかわらず、「型が古くなってしまってみっともないから廃車にする」などという発想は彼らにはありません。
とにかく動かなくなるまで、メンテナンスをしながら20万kmでも30万kmでも大切に乗り続けます。
日本の古いクルマが海外にどんどん輸出されるようになったことで、かつては廃車にされていたような古いクルマでも積極的に買取りをしてくれる業者が増えてきたのです。
クルマの耐用年数をのばすためにやるべきメンテナンス
日本車の耐久性がアップしているとはいえ、実際に20年落ちや30年落ちの車を、普通に公道を走らせることが出来るのかどうか疑問に思う人もいるでしょう。
しかし、しっかりとメンテナンスさえすれば、日本のクルマは30万kmどころか50万km以上を走らせることも十分に可能なのです。
実際に、タクシーなどは廃車にされるまでに50万km以上を走破するといわれています。
つまり、日本のクルマにはそれだけの走行距離を走らせることができるだけの、ポテンシャルがあるということになります。
それでは、10万kmを超えたクルマを耐用年数ぎりぎりまで乗り続けるためには、どういったメンテナンスをすればいいのでしょうか?
ウォーターポンプ・ダイナモといった補機の交換で30万kmは走る
クルマの耐用年数を伸ばすためのエンジンのメンテナンスに関しては、補機類の交換がポイントになります。
10万km程度で寿命のくるタイミングベルトやウォーターポンプ、15万km程度が寿命といわれているダイナモなどを適切な時期に交換することで30万km程度は問題なく走らせることが可能になります。
もちろん、オイル交換などは普段からまめに行っておく必要があります。
オイル交換を少しくらいさぼってもすぐにエンジンが壊れるということはありませんが、20万kmや30万kmまで乗り続ける予定であれば、メーカー推奨のタイミングでオイル交換をすることをおすすめします。
関連記事:もしオイル交換をしなかったら本当にクルマは壊れるのか?
エンジン本体にくらべて壊れやすいといわれていたミッションに関しても、最近は耐久性が格段にアップしています。
エンジンオイルだけではなく、ミッションオイルも小まめに交換をすることで、30万km程度であれば問題なく走らせることができるでしょう。
最近は、変速機にトルコン式のATではなくCVTを採用するクルマが増えています。
メーカーによってはCVTのオイル交換は原則として不要としているところもあるようですが、20万km、30万kmと長く乗り続けるつもりであれば、正規ディーラーに交換のタイミングを相談した方がいいでしょう。
ボディの耐用年数をのばすためのメンテナンス
先ほども書きましたように、最近のクルマは本当に塗装がよくなっていますので、昔のように5年~6年程度でボディにサビが浮いてしまうということはなくなりました。
しかし、15年~20年とクルマの耐用年数をのばすためには、どういったボディのケアをすればいいのでしょうか?
まず気をつけなければいけないのが、飛び石などによる小さな傷です。
これを放置したままにしておきますと、そこからサビが発生して、やがてボディが腐食してしまったりすることがあります。
特に、クルマのアンダーボディは飛び石の影響を受けやすいので、もし傷を見つけたらタッチペイントなどで小まめに補修をしておくといいでしょう。
また、クルマのボディは鉄でできていますので、塩の付着には要注意です。
海岸線近くを走って潮風をあびたようなときには、必ず洗車をしてボディに塩分が残らないようにすることが大切です。
特にボディのサビに注意をしなければならないのが、雪国の人たちです。
なぜなら、道路にまく融雪剤というのは「塩化カルシウム」という塩の仲間だからです。
塩がまかれた道路を走っているわけですから、そのまま放置をしているとサビが発生しやすくなってしまいます。
雪国の人がクルマの耐用年数を伸ばそうと思ったら、小まめな洗車は必須といえます。
高圧洗浄機などを使用して、ボディの下回りを中心に洗浄をするようにするといいでしょう。
融雪剤によって塩害を受けたクルマは、ボディの痛み具合によっては事故車扱いになって、売却時の査定額が著しく下がってしまうことがありますので注意が必要です。
参考記事:雪国で使われた中古車を買うときはボディの痛みに注意せよ
10年落ちのクルマは売るべきか乗りつぶすべきか?
このように、耐久性のアップにより30万km程度までは走ることができるようになった日本車ですが、実際に10年落ちになったときに、そのまま乗りつぶすべきか売却すべきか悩む人も少なくないでしょう。
クルマの査定額というのは、年式や走行距離だけで決まるものではなく、人気の有無などによっても大きく評価が変わりますので、売るべきは乗り潰すべきかの判断はなかなか難しいといえます。
人気車種であればある程度の値がつくうちに売却してしまった方がお得な場合もありますし、不人気車の場合は乗りつぶしが正解ということもあり得ます。
まだまだエンジンも快調でボディもきれいなのに、不人気車種だからという理由で査定額が二束三文になってしまったり、廃車にしなければならなかったりするのはもったいないからです。
しかし、年式が古くて過走行でなおかつ不人気車種といった条件であっても、発展途上国への輸出ということであれば高く評価をしてくれる可能性もあります。
ダメ元で海外への輸出ルートを持つ買取専門店などに査定を受けてみるといいでしょう。
ネットから複数の業者に査定を依頼できる一括査定サイトに加盟している買取り専門店であれば、海外輸出に強いところも多くなっています。
一括査定サイトであれば複数の買取店から同時に査定額を提示してもらうことができますので、一番高い業者を選んで売却をするということが可能になります。
以下の「かんたん車査定ガイド」にも、海外輸出に強い業者がたくさん加盟していますので、古いクルマの売却を考えている方は利用してみるといいでしょう。
文:山沢 達也
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