一昔前であれば、まったく査定の対象にならずに廃車にしてそのまま解体屋に持ち込む以外に方法がなかったポンコツ車が、最近ではそれなりの価格で買取りをされることが多くなっているようです。
15年落ち以上の古いクルマであったり、20万km近く走っている過走行のクルマであったりしても、しっかりと査定額を提示してもらえることがあるのです。
いったいそれはなぜなのでしょうか?
実は、そういった日本国内ではポンコツ扱いされるクルマを海外に輸出するルートが最近は確立されているのです。
日本人が価値のない車と判断したボロ車であっても、中東やアフリカ・東南アジアなどの海外では十分なニーズがあるのです。
海外における日本の中古車の評価は想像以上に高く、日本人なら見向きもしないようなポンコツ車でも高くかってくれたりします。
その結果、これまで日本国内でスクラップにされていたようなクルマが、普通に買取りをしてもらえるようになってきているのです。
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なぜ海外で日本の古い中古車が人気になっているのか?
日本人が思っている以上に、海外の人にとって日本車というのは品質が高くて優秀に感じるようです。
年式が古くても走行距離が伸びてしまっていても、日本車は丈夫で壊れにくいというイメージが強いのです。
また、日本車は燃費がよくてガソリン代を節約できることや、装備がいいことなども大きな魅力になっているようです。
10万kmどころか50万km走っても壊れない品質の高い日本車
日本車は多少古くなったとしても、なかなか壊れません。
この壊れないという部分が、中東や東南アジアの人たちには魅力的に感じるわけです。
日本では10万kmを超えたクルマの査定額は厳しくなってしまったりしますが、実際は10万km程度の走行距離であれば、まったく問題なく走れるわけです。
10万kmどころか、しっかりとメンテナンスをしていれば20万kmや30万kmくらいは問題なく走ります。
ちなみに、タクシーなどは50万km以上を走行したクルマであっても、普通に現役で走っています。
参考記事:タクシー専門の買取り店では走行距離50万kmでも買取りが可能!?
もちろん、タクシーだけが特別に頑丈に作られているわけではありません。
日本車というのは、どのクルマでも50万km以上を走ることができるだけのポテンシャルをもっているのです。
ですから、海外では20万km以上を走って日本国内でポンコツ扱いされているようなクルマであっても、喜んで買ってくれるのです。
現地のクルマにくらべて装備が充実している日本のクルマ
日本車というのは、装備も非常に充実しています。
アフリカや東南アジアで売られているクルマは、エアコンやパワーウインドウなどがオプションだったりします。
ところが、日本車であればこれらの装備はほとんど標準装備となっています。
いまどき、日本国内で夏場に窓全開で走っているクルマはまず見かけませんし、しかもその窓を手でハンドルをぐるぐる回して開けるなどといくクルマもまずないでしょう。
しかし、そういったことがあたり前の国に日本車を輸出すれば、非常に装備が充実していると感じるわけです。
世界トップクラスの燃費の良さを誇る日本のクルマ
燃費がいいというのも、日本車の大きな特徴です。
燃費のいいクルマを作る技術に関しては、日本は世界一といっていいと思います。
ハイブリッド車であれば、カタログデータで30km/L以上となっているのが普通ですし、実燃費でも20km/L以上走ります。
また、ハイブリッドじゃない普通のガソリンエンジンでも、軽自動車であれば実燃費で20km/L以上走るクルマも少なくありませんし、コンパクトカーでも実燃費で15km/L程度は普通に走ってしまいます。
これほど燃費のいいクルマを作っている国は、日本以外には見当たりません。
以下のランキングをくらべてみれば一目瞭然です。
しかし、ふだん日本車にしか乗る機会のないわれわれは、海外のクルマと比較することができませんので、そういった日本車の優秀さになかなか気がつかないのです。
海外の中古屋さんは本当にボロ車ばかり並んでいます
海外の中古自動車屋さんに行ってみると、そこに並んでいるクルマがあまりにもボロ車ばかりなのでびっくりするに違いありません。
日本であれば10万円以下の値段でもまず売れないようなクルマが、普通の中古車として決して安くはない値段で売られていたりします。
日本というのは、本当に豊かな国です。
食料の廃棄に関する問題がときどきクローズアップされますが、これはクルマであっても同様です。
海外であれば普通の中古車として販売することのできるクルマを、日本では廃車としてスクラップにされてしまっていたわけです。
しっかりとメンテナンスをすれば50万km以上も走らせることができるにもかかわらず、10万km~15万kmくらいの走行距離でスクラップにされてしまうわけですから、本当にもったいない話です。
こうしたもったいない乗り方になっている原因の1つに、税制の問題があります。
日本では、13年以上乗ったクルマの自動車税がアップしてしまうのです。
参考:13年以上乗った車の税金がアップ!~乗り潰すか廃車にするか?
そのため、新車登録から12年~13年で、まだまだ乗れるクルマを廃車にしてしまう人が少なくないのです。
日本のクルマが新車登録されてから廃車にされるまでの平均使用年数は、平成27年のデータでは12.53年となっています。
参考:車の耐用年数と乗りつぶしや廃車にする時期をどう判断するか?~平均使用年数は12.53年
税金のアップする13年前後でクルマを廃車にしてしまう人が多いということが、このデータから読み取れます。
年間130万台以上の中古車が海外に輸出されて行きます
日本の中古車が海外に輸出された台数は、2018年のデータで132万台となっています。
日本国内での中古車の販売台数が380万台程度であることを考えますと、ものすごい数の中古車が海外に輸出されていることがお分かりになるかと思います。
日本国内における中古車販売台数の3分の1以上にあたる数の日本車が、中古車として海外に輸出されているわけです。
輸出先を順位別に見ていきますと、1位U.A.E、2位ニュージーランド、3位ロシア、4位チリ、5位南アフリカ、6位ケニア、7位スリランカ、8位ミャンマー、9位モンゴル、10位タンザニアとなっています。
かつては、日本国内で廃車にされてしまっていたようなクルマが、こうした国々で大活躍をしているのです。
輸出台数2位になっているニュージーランドは、人口400万人ほどの小さな国ですが、2018年には11万6千台もの日本の中古車を受け入れてくれています。
ニュージーランドでは年間約20万台の車が売れますが、そのうち新車と中古車の数は半々程度だといわれています。
ということは、ニュージーランドで売られている中古車のほぼすべてが日本車ということになるのです。
日本国内ではポンコツ扱いされてニーズのない中古車が、この国では大歓迎されているということがお分かりになるかと思います。
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中古車の海外輸出がクルマの買取り市場にあたえた影響
このように、かつて日本国内では価値がないとして廃車にされていたクルマが、海外で活躍の場を得たことによって、クルマの買取市場にも大きな変化があらわれてきました。
これまで廃車にされてスクラップになっていたクルマに、大きなニーズがあることが分かったわけですから、これまでの価値観が大きく変わるのは当然のことです。
10年落ちで10万kmオーバーのクルマでも普通に買取りをしてもらえます
最近では、10年落ちで10万kmオーバーといった条件の悪いクルマを買取店にダメ元で持ち込んだら、意外なほど高く買い取ってもらってびっくりしたという話しをしばしば耳にするようになりました。
売れればラッキーくらいの気持ちで持ち込んだクルマに、しっかりとした査定額が提示されたとなれば、まさに嬉しい誤算といえるでしょう。
特に、海外のバイヤーと直接ルートのあるような買取店に持ち込んだ場合は、より高価な買取価格が提示される可能性が高いといえます。
実際に、10年落ちで走行距離が14万kmのアルファードが70万円で売れたという事例もあります。
また、軽自動車は10年落ちで10万kmオーバーだとまず売れないという都市伝説がありますが、実際にはそんなことはありません。
10年落ちで10万kmオーバーのダイハツタントが25万円で売れた事例も実際にありますので、以下の記事をご覧になってください。
関連記事:走行距離が10万kmを超えた車は売れないなんてウソです
かつては廃車にすべきかどうかを検討せざるを得なかった年式の古いクルマであっても、いまでは普通に買取りをしてもらえるようになったのです。
古いクルマであってもあきらめなければ必ず売れます
このように、最近の中古車市場は古い車でもしっかりと売れるというのが常識になりつつありますので、買取店やディーラーに持ち込んだクルマの査定額がたとえゼロ円であっても諦める必要はありません。
何店舗かを回っているうちに、海外への輸出に強い買取店が驚くような金額を提示してくれる可能性は十分にあります。
一番いけないのは、一社だけに持ち込んでゼロ円査定をされたからといって、そのままあきらめて廃車にしてしまうことです。
たまたまその店では価値がないとの判断になっただけであって、他の店に持ち込めば十分に価値のあるクルマと判断してくれる可能性はあるのです。
先にも書きましたように、海外では20万km以上走ったポンコツ車であっても、日本車であれば確実なニーズがあるのです。
まだまだ走ることが出来るクルマをスクラップにしてしまうような悲しいことは、出来ればしたくないものですね。
海外で人気が高い日本の中古車はどんな車種?
日本の中古車の輸出先は、中東やアフリカといった国が多いですので、そういった国で人気のある車種となると、どうしてもクロカンをイメージすると思います。
実際に、ガソリン車にくらべて壊れにくいイメージがあるディーゼル車は中東などでは非常に人気があります。
しかし、海外で売れている日本の中古車は、そういった車種ばかりではありません。
ヴィッツやフィット、デミオといった、いわゆるコンパクトカーも非常に人気があります。
やはり、こうしたコンパクトカーの魅力はなんといっても燃費です。
どこの国でも、燃費のいいクルマには高いニーズがあります。
日本という国はガソリンが高いというイメージがあると思いますが、世界的にみると決してそんなことはありません。
参考:ガソリンの高い国と安い国
日本よりガソリンの高い国はたくさんあるわけですから、燃費のいいクルマの人気が高いのは当然といえます。
もちろん、同じ理由でプリウスやアクアといったハイブリッド車の人気が高いのは言うまでもありません。
また、軽自動車も新車に関しては国内でしか販売されていませんが、中古車は海外にどんどん輸出されています。
新車が売られていないということや燃費がいいことなどから、海外では中古の軽自動車の人気が高くなっています。
先ほど10年落ちで10万kmのタントが25万円で買取りされた事例を紹介しましたが、昔のように「年式が古かったり走行距離が伸びていたりする軽自動車は売れない」という先入観を持たない方がよさそうです。
ただし、そういった年式が古かったり走行距離が伸びていたりするクルマは、海外ルートの有無などによって買取店によって評価が大きく変わります。
売却をする前に、必ず複数の買取り業者に査定をしてもらうことが大切です。
文:山沢 達也
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