車のエンジンオイルは、5000kmごと、あるいは6か月ごとに交換すべきであると思っているドライバーは少なくないでしょう。
実際にディーラーなどが行う6か月ごとの定期点検でもオイル交換が行われていますし、カー用品店などでも、6か月ごとか5000km走行でのオイル交換を勧められることが多いと思います。
しかし、本当にクルマのエンジンは6か月ごとや5000kmごとにオイル交換をしないと壊れてしまうのでしょうか?
ここでは、オイル交換をしないと本当にエンジンが壊れてしまうのかどうかという点に関して、真実を追求してみたいと思います。
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メーカーはオイル交換の推奨期間を1年ごととしています
ディーラーで新車を買ったときに、メンテナンスパックなるものに入ることを勧められたりします。
メンテナンスパックに入ると、次の車検までの3年間にわたって6か月ごとの定期点検をお得に受けることができるというわけです。
そして、そのメンテナンスパックの内容を見てみますと、半年ごとにオイル交換をすることになっています。
メーカーの販売窓口であるディーラーがメンテナンスとして行っていることですから、このことに対しては誰も疑問を抱かずにすべてお任せしてしまっていると思います。
しかし、メーカーによって書かれたクルマの取扱い説明書を、いま一度よく読んでみて下さい。
ほとんどの人は、クルマの取扱い説明書なんてグローブボックスに入れっぱなしで、まず見ることはないかと思いますが、せっかくの機会なので一度目を通してみることをお勧めします。
そこには、しっかりとオイル交換の推奨時期も書かれています。
メーカーごとに推奨の交換時期や距離数はことなると思いますが、トヨタの場合ですと普通のガソリン車であれば15,000kmまたは1年ごとにオイル交換をするようになっているはずです。
参考:トヨタ車のオイル交換時期
ちなみに、日産もトヨタと同様に15,000kmまたは1年ごとになっており、ホンダは10,000kmまたは1年ごとになっています。
つまり、クルマを製造しているメーカーは、10,000km~15,000kmごとのオイル交換であっても、まったく問題ないと太鼓判を押しているわけです。
実際にメーカーに問い合わせてみると分かりますが、説明書通りの交換時期でまったく問題ありませんという回答が返ってきます。
メーカーがさまざまな実験をしてデータ分析したうえで、自信を持って決めた推奨期間ですから、それを販売店であるディーラーやカー用品店が否定するというのはおかしな話です。
また、メーカーの交換推奨時期というのはかなり余裕を持って計算されているはずなので、実際にはそれを多少オーバーした走行距離や期間であっても特に問題が起こることはないはずです。
ただし、推奨時期を守らないと保証の対象外になる可能性があるので、保証期間内はメーカーの推奨交換時期をしっかりと守った方がいいと思いますが、少なくともディーラーやカー用品店の推奨交換時期は無視しても問題ないといえます。
なぜディーラーやカー用品店の交換時期は短いのか?
クルマを実際に作ったメーカーが10,000km~15,000kmまたは1年ごとでいいといっているのに、なぜディーラーやカー用品店では頑なに5,000kmまたは半年ごとの交換をすすめてくるのでしょうか?
理由は簡単です。
なるべく短い期間でたくさんオイル交換をしてもらった方が、儲かるからです。
1年に1度のオイル交換よりも、半年に一度交換してもらった方が、単純に2倍儲かることになるわけです。
カー用品店は、商売的に少しでもたくさんのオイルを売りたいはずなので、なるべく短い期間での交換を推奨することは理解できます。
それでは、メーカーの販売窓口ともいうべきディーラーまでもが5000kmや半年ごとでの交換を推奨しているのはなぜでしょうか?
実はこちらも理由は同じで、儲かるからなんです。
もちろん、ディーラーの本業は新車を売ることですが、それだけで利益を出しているわけではありません。
ディーラーにとっては、クルマのアフターメンテナンスも非常においしいビジネスなのです。
そのため、新車を購入したひとに「メンテナンスパック」などを積極的にすすめて、アフターメンテナンスの囲い込みをしようとするわけです。
最近ではセルフのガソリンスタンドが多くなっていますが、店員さんにガソリンを入れてもらっていた時代には、サービスと称してエンジンオイルの点検などをしてくれていたりしました。
実は、これも「あわよくばエンジンオイルの交換で儲けたい」という思いがあったからです。
クルマを扱うビジネスをしている人たちにとって、オイル交換というのは簡単に利益を出すことのできる打ち出の小槌なのです。
しかし、何度も繰り返しになりますが、メーカーが太鼓判を押している交換時期よりも、短い期間でオイル交換をしなければならない理由はまったくないのです。
たとえば、ある食べ物の消費期限をメーカーが製造から半年と決めているのに、お腹を壊すといけないからという理由で販売店が3ヶ月で廃棄処分にするなどということはナンセンスといえます。
5,000kmごとあるいは半年ごとで交換するのが正解の時代もありました
現代のクルマは、メーカーのオイル交換の推奨時期が10,000km~15,000kmごとか1年ごとになっていることが多いのは、先に書いた通りです。
しかし、実際に5000kmごと、あるいは半年ごとにオイル交換をするのが正解だった時代もあるのです。
かつてはオイルの性能がいまとくらべて悪く、確かに5000kmも走行するとあきらかにオイルが劣化してしまいました。
そのため、当時は5000kmごとのオイル交換は必須だったわけです。
しかし、ここ数十年でオイルの耐久性は劇的にアップしています。
特に2010年以降に運用が開始されたSNグレードの耐久性は非常に高く、5000kmどころかメーカーの推奨期間である10,000km~15,000km以上の走行距離はまったく問題なく走れてしまいます。
しかし、一般の人はオイルの耐久性能が劇的に伸びていることなど知りませんから、昔と同じように5000kmでオイル交換をしましょうといわれると、何の違和感も持たずにそのまま信じてしまうわけです。
まさに、ディーラーやカー用品店の思うつぼということになります。
最近の欧州車ではメーカーが推奨するオイル交換時期は30,000kmごと
精度の高い現代の日本車のエンジンが、わずか5,000km程度でオイル交換をしなければ壊れるということは絶対にないはずです。
しかし、長年のあいだディーラーやカー用品店、ガソリンスタンドなどに洗脳され続けた交換時期というのは、そう簡単には頭から抜けきれないわけです。
その結果、いまも多くの人がディーラーやカー用品店に勧められるままに、せっせと半年ごとにエンジンオイルを交換しているわけです。
メーカーが絶対に大丈夫だと保証をしてくれている推奨期間のわずか半分の期間で、まだまだ使えるオイルをどんどん捨ててしまっているわけですから、ある意味では地球環境的にも問題といえるでしょう。
ちなみに、最近のベンツやBMWなどの欧州車は、メーカーのオイル交換推奨時期が30,000km程度となっているようです。
つまり、国産車のメーカー推奨期間の約2倍です。
こうした欧州車のディーラーの場合、国産車のディーラーのように5,000kmごとにオイル交換をすすめてくることはなく、基本的にはメーカーが推奨する期間で交換をしています。
欧州では日本にくらべて環境問題に厳しいということもあるのかも知れませんが、メーカーが問題ないといっている期間を無視して、ディーラーが無駄にオイルを廃棄するということはないのです。
もちろん、国産車のエンジンの耐久性がベンツやBMWにくらべて著しく劣っているなどということは絶対にありません。
実際には、国産車であっても30,000km程度はオイル交換などしなくても、エンジンが壊れることはないはずです。
もちろん、国産車の場合はメーカー保証が受けられなくなる可能性があるので、一応メーカーの推奨期間を守ることをおすすしますが、オイル交換の時期をあまり神経質に考える必要はないといえます。
2年に1度4万kmごとのオイル交換しかしていないレンタカー会社
実際に、あるレンタカー会社などでは、2年に1度のタイミングでしかオイル交換はしていないそうです。
オイルが不足したら補充するのみで4万km程度は走っているようですが、それが原因でエンジンが壊れたことは一度もないそうです。
ここ重要ですからもう一度いいますが、「エンジンが壊れたことは一度もない」のです。
たまたま運よく1台や2台壊れなかったということではありません。
過去にレンタカーとして使用した数百台のクルマが、すべて壊れなかったのです。
5,000kmごとにオイル交換しないとエンジンが壊れると主張する人たちは、こういった事実に対してどう反論するのでしょうか。
こうした事例をみても、メーカーが指定する10,000km~15,000kmというのは、かなりの余裕を持って設定された数字であることがお分かりになるかと思います。
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メーカーが早めのオイル交換を推奨するシビアコンディションとは?
これまで何度も書いてきましたように、メーカーの取扱い説明書には、走行距離が10,000km~15,000km、または1年ごとにオイル交換をするように書かれています。
しかし、取扱い説明書をよく見てみますと、シビアコンディションのときは5,000km~7,500kmまたは半年ごとなどと書かれていたりします。
つまり、標準の推奨オイル交換時期の半分です。
そもそも、シビアコンディションとはどういった使い方をするときのことをいうのでしょうか?
メーカーが想定しているシビアコンディションには、「悪路走行が多い」「走行距離が多い」「山道などの頻繁な走行」といった使い方が該当するようです。
「悪路走行が多い」というのは、現在の日本国内の道路事情を考えると、ほとんどの人は該当しないと思われます。
「走行距離が多い」かどうかというのは、年間で2万km以上の走行が目安になるようです。
年間で2万kmといいますと、5年間で10万km以上ですから、かなりの過走行といえます。
「山道などの頻繁な道の走行」は、通常走行にくらべてエンジンに負荷がかかりますから、どうしてもオイルの痛みが早くなるのでしょう。
これ以外にも、短距離走行の繰り返しなどもシビアコンディションに含まれるようです。
エンジンが冷え切っていてオイルが十分に回っていない状態で車をスタートさせることは、エンジンに大きな負担をかけるからです。
長距離トラックが100万km以上も走ることができるのは、一般のクルマのように短距離走行を頻繁に繰り返すということがないからだといわれています。
関連記事:年間に10万km以上走る長距離トラックの寿命は?~100万kmでも問題なく走ります
そういった意味では、すぐ近くのスーパーへの買い物にしか使わないようなクルマも、シビアコンディションのクルマといえるわけです。
こうしたシビアコンディションのクルマは、ディーラーやカー用品店が推奨する5,000kmごとというのはともかく、メーカーの指定する通常の推奨期間にくらべて早めにオイル交換をするようにした方がいいかも知れません。
オイル交換をしないで13万kmを走破したクルマのエンジンは?
ディーラーやカー用品店に勧められるままに、短期間にオイル交換をする必要はないということはご理解いただけたかと思いますが、それでは新車で購入してからまったくオイル交換をせずに走り続けたらどうなるのでしょうか?
あくまでも推測ですが、5万km程度までは壊れることなく普通に走ってしまうのではないかと思われます。
実際に自分のクルマで実験をする勇気のある人はいないと思いますが、新車で購入してから10年近く一度もオイル交換をしたことがないというツワモノが実際に存在しますし、クルマも壊れることなく普通に走っているようです。
私たちが思っている以上に、車のエンジンというのはノーメンテナンスでも壊れないのかも知れません。
ただし、実際に修理工場でメンテナンスをしているプロの整備士などに聞くと、新車登録時からまったくオイル交換をせずに、7万km~8万kmを走った時点で愛車のエンジンをブローさせてしまう人がときどきいるそうです。
ですから、まったくオイル交換せずに5万km以上走らせるというのは、さすがにリスクが高いといえそうです。
ちなみに、海外の話ですが、新車で購入してから13万kmを走破するまでオイル交換を一切しなかった車が話題になっています。
アウディのTTという車種ですが、3200ccのV型6気筒エンジンはまったく壊れる様子はなかったようです。
しかし、その車のエンジンを分解してみると、びっくり!
真っ黒なスラッジがシリンダーヘッドのカムシャフトなどに気持ち悪いほどこびりついています。
問題なく走っていたとはいえ、さすがにこのエンジン内部を見るとゾッとしますね。
エンジンオイルをまったく交換しなくても、壊れずに13万kmもの距離を走れることもあるというのはまぎれもない事実のようですが、良い子の皆さんはマネをしない方がよさそうです。
この事例はあまりにも極端ですが、いずれにしても車のエンジンは、少しくらいオイル交換をさぼっても、そう簡単に壊れるものではないということは間違いないようです。
ディーラーやカー用品店のいいなりになって、まだまだ使えるきれいなオイルを捨ててしまうというのは一考したほうがいいかも知れません。
ただし、メーカーの推奨期間を大きく過ぎてもオイル交換をしないというのはリスクのあることですので、もしやるのであれば自己責任で行ってくださいね。
文・山沢 達也
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