WordPressを別のサーバーに移転する際に気をつけなければいけないのが、旧サーバーと新サーバーのPHPのバージョンです。
両者のPHPバージョンが大きく違っていたりすると、WordPressの引越しがうまくいかないことがあります。
最悪の場合は、WordPressの画面が真っ白になって動作不良を起こしてしまったりします。
ここでは、これからWordPressを別のサーバーに移転しようと思っている方に向けて、PHPのバージョンに関する注意事項について分かりやすく解説をしています。
WordPressのバージョンと対応する動作可能なPHPのバージョン
WordPressの引越しをする際には、現在運用中のWordPress本体のバージョンと、サーバーのPHPバージョンを確認する必要があります。
それらの情報を元にして、移転先サーバーのPHPバージョンを考慮しなければなりません。
特に、古くから運営をしているWordPressの場合、サーバーのPHPバージョンもWordPress本体のバージョンも古いままになっているケースが多いので注意が必要です。
WordPress本体のバージョンとそれに対応する動作可能なサーバーのPHPバージョンは以下の通りです。
●WordPress4.4:PHP5.2~7.0
●WordPress4.7:PHP5.2~7.1
●WordPress4.9:PHP5.2~7.2
●WordPress5.0:PHP5.2~7.2
●WordPress5.3:PHP5.6~7.3
●WordPress5.6:PHP5.6~7.4
●WordPress5.8:PHP5.6~8.0
●WordPress5.9:PHP5.6~8.1
●WordPress6.0:PHP5.6~8.1
●WordPress6.2:PHP5.6~8.2
この一覧に記載のPHPバージョンは、あくまでもWordPressを動作させることができるということであって、必ずしも推奨バージョンということではありません。
WordPress本体のバージョンごとのPHP推奨バージョンに関しては、のちほど詳しく解説します。
古いWordPressを最新のサーバーに引越しするケース
WordPress本体のバージョンやPHPのバージョンが古いままのサイトを、最新のレンタルサーバーに引っ越しをする際に気をつけなければいけないことがあります。
たとえば、2016年当時はWordPressのバージョンは4.7でしたが、その当時作成されたサイトがそのままのバージョンで運用されていたとします。
このサイトの引越しをするときにまず確認しなければならないのが、移転先のサーバーのPHPバージョンです。
WordPress4.7で構築されたサイトを引越しするためには、移転先サーバーのPHPバージョンは5.2~7.0に対応していなければなりません。
表示速度が速いことで人気なっている「wpX Speed」というレンタルサーバーがありますが、このサーバーが対応しているPHPバージョンは7.2~8.0となっています。
つまり、PHP7.0までしか対応していないWordPress4.7で構築されたサイトは、そのままでは「wpX Speed」に引っ越しはできないということになります。
こういうケースでは事前にテスト環境を作って、WordPressのバージョンを上げても問題ないか検証をしたうえで、引越しをする必要があります。
ただ、古いWordPressのバージョンをアップするのは、単純に行かないことも多いです。
テーマやプラグインとの相性によってエラーが発生する可能性があるからです。
●移転先のサーバーのPHPバージョンの確認
●古いWordPressのバージョンをアップするのは、単純に行かないことも多い
WordPressを古いPHPのサーバーに移転するケース
WordPressのサーバー移転にはさまざまなケースがあります。
新しいPHPバージョンで運用されているサーバーから、古いPHPバージョンで運用されているサーバーに引っ越しをするケースも実際にあります。
PHPバージョンが7.4のレンタルサーバーで運用していたWordPress5.6のサイトを、PHPバージョン5.3のサーバーに移転をしたいというケースなどです。
サイトの売買や、古くから運用しているサイトのサブディレクトリに、新しく作ったWordPressのサイトを引越ししたいというケースで、よくこういうことが起こります。
また、サーバーによっては、マルチドメインに対応していても、個別のドメインごとにPHPのバージョン設定ができないものもあります。
このようなケースで、そのまま単純にサーバー移転をしますと、PHPバージョンが合わずにWordPress5.6のサイトが表示されなくなってしまうことがあります。
WordPress5.6が動作するのはPHP5.6~7.4なので、PHP5.3のサーバーでは動作しないのです。
そうならないためには、移転先の古いサーバーのPHPバージョンを上げる必要があるのですが、状況によってはそう簡単に行かないことがあります。
たとえば、移転先のサーバーですでに運用しているWordPressがあって、そのWordPressのバージョンが古いケースです。
これから移転をするWordPressのためにサーバーのPHPバージョンを上げると、これまでそのサーバーで運用していたWordPressバージョンが古くて、動作しなくなってしまうことがあるのです。
●古くから運用しているサイトのサブディレクトリに、新しく作ったWordPressのサイトを引越するケース
●単純にサーバー移転をすると、PHPバージョンが合わずにWordPress5.6のサイトが表示されないこともある
●移転先の古いサーバーのPHPバージョンを上げる必要があるが、状況によってはそう簡単に行かないこともある
WordPressのバージョンごとの推奨PHPバージョン
WordPressのバージョンによって、動作が可能なPHPのバージョンがあることはお分かりいただけた方と思いますが、それとは別にWordPressの推奨バージョンというものがあります。
たとえばWordPress5.6の場合、PHPのバージョンが5.6~7.4であれば動作はしますが、推奨のバージョンはPHP7.4以上となっています。
つまり、WordPress5.6はPHP5.6のサーバーであってもなんとか動作はしますが、出来れば7.4以上のサーバーを利用してほしいということです。
PHPを推奨のバージョンとすることで、WordPressの表示速度がアップしたり、サイトのセキュリティが向上したりといった多くのメリットがあります。
たとえば、WordPress5.6で構築されたサイトを、PHP5.6で運用した場合とPHP8.0で運用したときでは、表示速度に2倍以上もの差が出ると言われています。
ですから、これからWordPressの引越しを計画している方は、可能であれば推奨バージョンでのサーバー移転が出来るように工夫をした方がいいでしょう。
参考までに、WordPressのバージョンごとの推奨PHPバージョンを以下に一覧で紹介しておきます。
●WordPress4.4:PHP5.6以上
●WordPress4.7:PHP7.1以上
●WordPress4.9:PHP7.1以上
●WordPress5.0:PHP7.3以上
●WordPress5.3:PHP7.3以上
●WordPress5.5:PHP7.3以上
●WordPress5.6:PHP7.4以上
●WordPress5.8:PHP7.4以上
●WordPress5.9:PHP7.4以上
●WordPress6.0:PHP7.4以上
●WordPress6.2:PHP7.4以上
古いバージョンのPHPでWordPressを動かすことのリスク
WordPressのバージョンとPHPのバージョンがうまく対応できて、無事にサーバーの移転が完了したとしても、それで安心はできません。
これからWordPressで構築されたサイトをずっと運営していくにあたっては、PHPのバージョンが古いままであることのリスクを頭に入れておかなくてなりません。
たとえばWordPress5.8が動作可能なPHPのバージョンは7.1~8.0となっていますが、実はPHP7.1のセキュリティサポートは、2019年12月で終了しているのです。
さらに、PHP7.4のセキュリティサポートも2022年11月に終了していますので、2023年5月現在だとWordPressを安心して運用するためには、PHP8.0以上にする必要があります。
しかし、そのPHP8.0でさえも、2023年11月にはサポートが終了予定となっています。
WordPressを古くから運用している人の中には、このPHPのバージョンに無頓着な人も少なくないですが、大切なサイトを悪質なハッカーから守るためには、可能な限り最新のPHPバージョンで運用することが大切といえます。
●PHPのバージョンが古いままであることのリスクを頭に入れておく
●PHP8.0も、2023年11月にはサポートが終了予定
●大切なサイトを悪質なハッカーから守るためには、可能な限り最新のPHPバージョンで運用することが大切
最新のPHPバージョンでWordPressに重大エラーが起こる?
古いPHPバージョンで運用しているWordPressのサーバー移転の難しさや、さまざまなリスクについて解説してきましたが、単純に最新のPHPバージョンに切り替えればOKなわけではありません。
なぜなら、最新のPHPバージョンに切り替えることで不具合が起こることもあるからです。
実際にPHPのバージョンを切り替えたとたんに、WordPressの画面が真っ白になってあわてる人も少なくありません。
関連記事:WordPressの画面が真っ白になる原因と修復・復旧をするための方法
2023年5月現在における最新のPHPバージョンは8.2です。
レンタルサーバーがPHP8.2の提供を開始したからといって、すぐに切り替えるのは危険です。
たとえWordPress本体のバージョンが最新の6.2であったとしても、テーマやプラグインなどがPHP8.2に対応していない可能性があるからです。
PHP8.2にアップして重大なエラーが起こった事例の多くは、テーマやプラグインが対応していないことが原因です。
WordPressの引越しのタイミングで、サーバーのPHPを最新バージョンにしたいという気持ちも分かりますが、テーマやプラグインなどが対応するようになるまでの間は、1つ手前の古いバージョンで運営をするのが無難といえます。
●最新のPHPバージョンに切り替えることで不具合が起こることもある
●テーマやプラグインなどがPHP8.2に対応していない可能性がある
●テーマやプラグインなどが対応するようになるまでの間は、1つ手前の古いバージョンで運営するのが無難
オリジナルテーマのWordPressとバージョンアップの問題
他のサイトと似たようなデザインのサイトにしたくないという理由で、オリジナルデザインのWordPressテーマにこだわる人も少なくありません。
しかし、長い間WordPressを運営していくことを考えたら、オリジナルテーマでサイトを作成することはおすすめしません。
なぜなら、多くの人が使っている汎用のWordPressテーマであれば、WordPress本体やPHPのバージョンアップに伴い、それに対応したバージョンアップが無償で行われるのが普通だからです。
つまり、現在運用中のWordPressを最新のバージョンに切り替えながら、長く運用を続けることが可能になるわけです。
ところが、個別に制作したオリジナルテーマだと、そのサイトのためだけに制作元が最新のPHPやWordPressのバージョンに合わせて修正をしてくれるとは限りません。
かといって、よほど規模の大きい会社でもなければ、WordPress本体やPHPのバージョンアップがあるたび、わざわざお金を出して制作会社にサイトの修正を依頼するというのは現実的ではありません。
そのような理由から、弊社ではWordPressのサイト構築にあたっては、比較的人気があって多くの人が使っている汎用のテーマを使用することをおすすめしています。
●オリジナルテーマでサイトを作成することはおすすめしない
●WordPressを最新のバージョンに切り替えながら、長く運用を続けることが可能になる
●比較的人気があって多くの人が使っている汎用のテーマを使用することをおすすめ