車というのは、もともと重税感のある商品です。
クルマを購入するときに、車両本体価格とディーラーなどから提示されるいわゆる「乗り出し価格」との金額差に、愕然となった経験をお持ちの方も多いことでしょう。
消費税はもちろんのこと、自動車税、重量税、取得税などのさまざまな名目の税金が見積もりに加算されています。
また、そういった直接税だけではなく、給油をするたびに燃料税を間接的に払わされることになります。
クルマというのは、まさに税金漬けといってもいいほどです。
クルマが贅沢品であった時代ならばともかく、地方においてクルマはいまや生活必需品です。
生活必需品に対してここまでの重税を課すというのは、なんとも理不尽なことだと思っている人も少なくないでしょう。
そんな重税感のあるクルマにもかかわらず、平成26年度の税制改正によって、古い車の重税感がさらに増すことになりました。
13年以上乗ったクルマの自動車税や重量税がアップすることになったのです。
この税制改正によって、新車登録から13年以上経過したクルマに乗っている人は、そのまま高い税金を払い続けて乗り潰すか、廃車にするか、あるいは売却をするかといった選択を迫られることになります。
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まだまだ乗ることのできるクルマが税金アップでスクラップになる運命に
江戸の町がリサイクル社会であったことは有名ですが、かつての日本人には物を大切につかうという文化がありました。
まだまだ使える物を捨ててしまうというのはもったいないと、かつての日本人は考えていたわけです。
しかし、それがいつの間にか、使い捨てが当たり前の文化に変わってきてしまったようです。
日本のクルマは普通に20万km以上走らせることが可能です
いまの日本車の品質を考えれば、しっかりとメンテナンスさえすれば20年程度は問題なく乗れるはずです。
走行距離にしても、20万km程度であれば、まったく問題なく走行できます。
実際に、タクシーなどは50万km以上走行した車両が普通に走っていますし、長距離トラックなどは100万km以上走った車両が現役で活躍していたりします。
参考:タクシー専門の買取り店では走行距離50万kmでも買取りが可能!?
参考:年間に10万km以上走る長距離トラックの寿命は?~100万kmでも問題なく走ります
クルマのエンジンにタイミングベルトが採用されていたころは、交換時期である10万kmというものが意識されたりしました。
しかし、最近のクルマはタイミングチェーンが採用されていますので、30万km程度までは交換の必要がなくなっています。
参考:10万kmでタイミングベルトの交換は過去の話です~今はタイミングチェーンが主流
このように、いまの日本車というのは品質が高く、メンテナンスさえしていれば20万km以上は普通に走れてしまうのです。
しかし、平成26年の税制改正によって、古い車を乗り続けることが困難になってしまいました。
新車登録から13年経過したガソリン車やLPG車の自動車税や重量税が上がってしまったからです。
ディーゼル車にいたっては、新車登録から11年を経過したクルマの税金がアップします。
古い車を乗り続けるということは、それでなくてもメンテナンスに費用がかかるわけです。
そこに税金アップの追い打ちをかけられるわけですから、古いクルマを維持し続けることが非常に難しくなってしまいます。
まだまだ走らせることのできるクルマをスクラップにしてしまうなんて、江戸時代の人が聞いたら目を丸くして驚くに違いありません。
世界的にみてもスクラップにされるまでの期間が短い日本車
日本のクルマの平均使用年数(新車登録から廃車になるまで)は13年ほどです。
これは、世界的にみてもかなり短い期間といえます。
日本LCA学会研究会が発表した「耐久財の使用年数分布の国際比較分析」によりますと、海外でのクルマの平均使用年数は次のようになっています。
●オーストラリア:22.6年
●フランス:15.2年
●カナダ:15.4年
●ブラジル:17.5年
●スペイン:18年
●フィンランド:22年
●デンマーク:16.8年
日本車というのは非常に品質が高く、海外のクルマにくらべて壊れにくいということは誰もが認識していると思います。
そんな壊れにくい日本車が、諸外国のクルマにくらべて早々にスクラップにされてしまっているのです。
いかに日本人がもったいないクルマの乗り方をしているかということが、こうしたデータからお分かりになるかと思います。
その状況で、新車登録から13年以上経過したクルマに対する増税をしたわけですから、日本車の平均使用年数が今後伸びることはまずないでしょう。
どれくらい税金がアップするのか?
それでは、新車登録から13年を経過したクルマは、実際にどれくらい税金が高くなるのでしょうか?
まずは、毎年春先に納付が義務付けられている、自家用自動車の自動車税についてみていきたいと思います。
・13年を経過すると自動車税はほぼ15%アップします
ご存知の通り、自動車税は排気量ごとに事細かに税金額が決められています。
1000cc以下の小型車の場合通常は、29,500円の税額となっています。
これが13年を経過した年から、33,900円にアップすることになります。
1000ccを超えて1500ccの場合ですと、それまで34,500円だった自動車税が13年経過で39,600円ということになります。
排気量ごとの自動車税の額を以下に一覧にしてみます。
●1,000cc超1,500cc以下=34,500円が13年経過で39,600円
●1,500cc超2,000cc以下=39,500円が13年経過で45,500円
●2,000cc超2,500cc以下=45,000円が13年経過で51,700円
●2,500cc超3,000cc以下=51,000円が13年経過で58,600円
●3,000cc超3,500cc以下=58,000円が13年経過で66,700円
●3,500cc超4,000cc以下=66,500円が13年経過で76,400円
●4,000cc超4,500cc以下=76,500円が13年警戒で87,900円
●4,500cc超6,000cc以下=88,000円が13年経過で101,200円
●6,000cc超=111,000円が13年経過で127,600円
どの排気量においても、13年を経過した車の自動車税がほぼ15%アップしていることがお分かりになるかと思います。
ちなみに軽自動車の場合は以下の通りです。
平成27年3月31日以前に登録された車は、7200円の軽自動車税が13年経過したときには12,900円となります。
平成27年4月1日以降に登録された軽自動車の場合ですと、10,800円が13年経過後は12,900円の課税になります。
軽自動車の場合、平成27年3月31日以前に登録された車両の場合、もともとの税額が安かったこともあり、13年経過で80%近い増税になります。
・車検ごとにかかる重量税は18年経過でさらにアップします
13年経過した車の負担が重くなるのは自動車税だけではありません。
重量税もアップしてしまうのです。
重量税は自動車税のように毎年納税するものではなく、クルマを新たに購入したときと車検を受けるときに納めることになります。
重量税は、その名の通り排気量ではなくクルマの重量によって税額が決められています。
車検のスパンとなる2年ごとで見ていきますと、エコカー減税対象外のクルマの場合以下のようになります。
0.5t以下の車の場合、8,200円の重量税が13年経過で、平成28年3月31日まで10,800円、平成28年4月1日以降11,400円となっています。
さらに、18年を経過すると12,600円に大幅アップします。
同様に重量ごとに以下の通り決められています。
●1tを超えて1.5t=24,600円が13年経過で32,400円(平成28年3月31日まで)、34,200円(平成28年4月1日以降)、18年経過で37,800円
●1.5tを超えて2t=32,800円が13年経過で43,200円(平成28年3月31日まで)、45,600円(平成28年4月1日以降)、18年経過で50,400円
●2tを超えて2.5t=41,000円が13年経過で54,000円(平成28年3月31日まで)、57,000円(平成28年4月1日以降)、18年経過で63,000円
●2tを超えて2.5t=41,000円が13年経過で54,000円(平成28年3月31日まで)、57,000円(平成28年4月1日以降)、18年経過で63,000円
●2.5tを超えて3t=49,200円が13年経過で64,800円(平成28年3月31日まで)、68,400円(平成28年4月1日以降)、18年経過で75,600円
一覧をご覧になってお分かりのように、13年経過で約30%の増税となり、さらに18年経過で約5%が上乗せされます。
自動車税よりも、むしろ重量税の方が古いクルマに対して厳しいということになります。
重量税の場合は、自動車税のように自分で税金を支払うわけではありませんので、増税感は感じにくいかも知れません。
しかし、13年を過ぎたクルマの車検を受けるときには、しっかりと法定費用として上乗せされることになります。
つまり、それでなくても高い車検費用が、古いクルマだとさらに高くなるということです。
日本政府は、とにかく古いクルマには乗り続けてほしくないようです。
古いクルマに乗り続ける人が多くなると、新車が売れなくなって景気に悪影響を与えると考えているのかも知れません。
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エコカーであれば13年乗っても増税の対象外となります
古いクルマの税金をアップする理由には、新車を買わせたいという政府の思惑のほかに、地球環境への負担が大きいクルマを廃車にしたいという狙いがあります。
つまり、燃費の悪い古い車を、クリーンで燃費のいいクルマにどんどん買い替えてほしいわけです。
そのため、現行基準をクリアーしているエコカーに限っては、13年経過後の税率アップが免除されることになっています。
ちなみにエコカーの現行基準は以下のように決められています。
●平成32年度燃費基準+10%達成車
●平成32年度燃費基準達成車
●平成27年度燃費基準+5%・10%達成車
これらの基準を満たしているエコカーであれば、13年を経過しても税金がアップしないことになります。
エコカーの重量税は以下の通りです。
●0.5を超えて1t=10,000円
●1tを超えて1.5t=15,000円
●1.5tを超えて2t=20,000円
●2tを超えて2.5t=25,000円
●2.5tを超えて3t=30,000円
クリーンディーゼル車はエコカー減税適用ですが自動車税が11年経過で増税
ガソリン車の場合は、13年経過で自動車税と重量税がアップし、さらに18年経過で重量税が増税になります。
しかし、クリーンディーゼルと呼ばれる最近のディーゼル車の重量税に関しては、エコカーとして電気自動車やプラグインハイブリッドなみの税制優遇が適用になります。
そのため、13年経過と18年経過のどちらも増税されることはありません。
また、新車登録時と初回の車検時の重量税が免除になります。
ただし、自動車税に関しては、11年経過で税額がアップするというガソリン車よりも厳しいディーゼル車独自の決まりがあります。
これはクリーンディーゼル車であっても例外ではありません。
つまり、クリーンディーゼル車の場合は、重量税に関しては電気自動車やプラグインハイブリッドなみの優遇措置を受けることができますが、自動車税に関しては一般のガソリン車よりも2年前倒しで増税ということになってしまうのです。
それにしても、クルマの税制というのは本当にややこしいですね。
13年以上経過したクルマはどうすべきなのか?
13年以上経過した車は、高い税金を納めながら乗り続けなければならないのでしょうか?
それとも、まだまだ乗れるクルマを廃車してスクラップにしてしまうしかないのでしょうか?
自分がこれまで乗ってきたクルマが13年の節目にさしかかったとき、多くの人はこの2つの選択肢しか頭に思い浮かばないと思います。
普通の人は13年以上乗ったクルマがまともな金額で売却できるとは考えませんので、それは仕方のないことです。
しかし、最近の中古車市場を考えた場合、売却するという選択肢も十分にあり得るのです。
関連記事:13年落ち以上の車が50万円以上で売れた事例~廃車はもったいない
最近では、開発途上国などでの日本の中古車人気が非常に高く、多くの買取り店においてそういった国々への輸出ルートが確立しつつあります。
つまり、日本では税金が高くなってしまって乗り続けるのが困難なクルマであったとしても、日本の税制の及ばない海外であれば、まったく問題なく使い続けることができるわけです。
新車登録から13年目のクルマですと、走行距離も10万km~15万kmほどになると思います。
しかし、先にも書きましたように、品質の高い日本車が10万kmや15万kmで走れなくなるということはまずありません。
海外に輸出をすることによって、まだまだ十分に現役で使い続けることができるのです。
車種によっては、廃車にするよりもずっと高い金額で買取りをしてくれることも多いですし、これまで自分が長い間乗ってきた愛着のあるクルマがスクラップにされずに済むのであれば、売却という選択肢を選ばない理由はないと思います。
13年以上経過した車に現在乗っていて、クルマの買い替えを検討しているという方は、ダメもとでいくつかの買取り店に査定だけでも受けてみるといいでしょう。
1社だけでは買値がつかないこともありますが、複数の店に査定をしてもらうことで、意外なほど高い買取り価格を提示してくれる業者がでてくることもあります。
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