カタログに書かれた燃費の良さにひかれてそのクルマを購入してみたものの、実際の燃費はカタログに表示されたものとは程遠い数字で、がっかりとさせられた経験を持つ人も少なくないでしょう。
一部のメーカーがカタログにウソのデータを書いて問題になったことがありますが、すべてのメーカーがそのようなことをしているわけではありません。
基本的に、カタログに書かれた燃費というのは、基本的には正しいと考えていいでしょう。
それでは、なぜカタログに書かれた燃費と実際の燃費に差が生じるのでしょうか?
それは、あなたがクルマを走らせている環境と、メーカーが燃費のテストを行っている環境が違うからです。
また、同じような環境でクルマを走らせていても、乗り方によっても大きく変わってしまうのが燃費なのです。
ここでは、カタログに書かれた燃費と実燃費で、なぜこれほど違いが出るのかについて解説をしてみたいと思います。
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カタログデータと実燃費にはこれだけ差があります
「e燃費」というサイトに、実際の車のオーナーからの実燃費を集計したランキングが掲載されています。
e燃費:https://e-nenpi.com/enenpi/
このサイトの最新ランキングをもとに、実燃費とカタログデータの違いを見ていきたいと思います。
ハイブリッド車やミニバンの実燃費とカタログデータを比較
まず、1位のトヨタヴィッツのハイブリッドを見てみますと、実燃費が26.42km/Lとなっています。
ヴィッツハイブリッドのカタログに記載されたJC08モード燃費は、34.4km/Lとなっていますので、実燃費が26.42km/Lというのは非常にいい数字ということがいえます。
たまたまこのクルマの実燃費を報告したオーナーたちの生活環境が、信号などが少なく燃費に好影響を与えるような場所であったのか、あるいは燃費のよくなる運転術を心得ているオーナーが多かったのかは分かりませんが、カタログデータの8割ほどの実燃費です。
ライバル車であるホンダフィット(ハイブリッド)の実燃費が22.86km/Lであることを考えると、ヴィッツの26.42km/Lというデータがどれほどすごいかがお分かりいただけると思います。
2位はハイブリッド車のパイオニア的存在であるプリウスで、実燃費が24.89km/Lとなっています。
プリウスのカタログに記載された燃費は、JC08モードで34.4km/L~40.8km/Lとなっていますので、実燃費はカタログデータの6割~7割ということになります。
3位は、同じくトヨタのハイブリッドカーであるアクアで、実燃費は23.57km/Lとなっています。
アクアのカタログに記載されたJC08モード燃費は38km/Lとなっていますので、実燃費はカタログデータの62%ほどになります。
これらの実燃費トップスリーを見る限りにおいては、カタログデータの6割~7割程度の数字が実際に走行したときの燃費であるといえそうです。
燃費が悪いといわれているミニバンで比較をしてみましょう
ミニバンは車重がありますし、真四角なボディ形状で空気抵抗が高いので、燃費的にかなり不利や車種となります。
実燃費で10km/Lを切ってしまうイメージがありますが、実際にはどうなのでしょうか?
まずは、人気ミニバンであるトヨタのノアですが、実燃費は11.12km/Lとなっています。
カタログデータは16km/Lとなっていますので、実燃費はその7割ほどということになります。
ノアの車重は1.5tを超えますので、実燃費で11kmオーバーは悪くないと思います。
次に重量級ミニバンの代表ともいうべきアルファードですが、こちらの実燃費は2500ccモデルで9.65km/Lとなっています。
2t近い車重がありますので、さすがに実燃費では10km/Lを切ってしまうようです。
しかし、カタログデータは12km/L~12.4km/Lとなっていますので、むしろ実燃費はむしろ良いといっていいでしょう。
次にホンダステップワゴンのハイブリッドを見てみましょう。
こちらは実燃費が17.35km/Lと、さすがにハイブリッドなだけあってミニバンとしてはかなり優秀な数字となっています。
カタログデータは25.0km/Lとなっていますので、やはり実燃費は7割程度になってしまうようです。
実燃費はカタログデータの6割~8割程度と考えておく
いくつかの車種の、カタログに記載された燃費と、実際にその車に乗っているオーナーの報告にもとづいた実燃費を比較してみましたが、おおむねカタログデータの6割~8割ほどが実燃費になるということが分かりました。
もちろん、渋滞の多い地域かあまり信号のない地方かといった環境的要因や、ドライバーの運転の仕方によって実際の燃費は大きく変わってきてしまいますので、その範囲に収まらないこともあるでしょう。
しかし、カタログデータの6割~8割の範囲から大きく外れていなければ、それがそのクルマの実燃費などだと考えるようにしましょう。
メーカーが燃費のテストを行っている環境
実際に公道を走らせると、カタログに記載された燃費の6割~8割程度しか走らないということが分かりました。
それでは、メーカーがカタログに記載している燃費は、いったいどういった条件でテストされたものなのでしょうか?
それは、私たちの日常の運転する道路状況と大きくかけ離れているものなのでしょうか?
国産車の燃費測定の基準となっているJC08モードとは?
もともと、カタログに記載する車の燃費は、1991年より10・15モードという方法で測定されていました。
しかし、10・15モードで測定されたデータと、実燃費のデータにあまりにも差がありすぎるということが以前から指摘されていました。
そこで10・15モードよりも実際の走行に近づけるかたちで、新たな測定方法が開発されました。
それが2011年4月以降に型式認定を受けるクルマから適用されることになった、JC08モードと呼ばれる燃費測定方法です。
JC08モードでは、10・15モードにくらべて実際のクルマの使用状況により近づけるために、細かい速度変化をつけて運転したり、エンジンが暖まった状態だけではなく、冷えた状態からスタートしたりする方法なども測定項目に加わりました。
その結果、10・15モードで測定した場合にくらべて、JC08モードで測定した場合には1割ほど低いデータになるといわれています。
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ドライバーの運転の仕方で大きく変わってしまう実燃費
JC08モードでの燃費測定は、実際にユーザーが車を公道上で走らせるときの条件にかなり近づけた状態で測定されています。
それにもかかわらず実燃費が、JC08モードで測定された数字の6割~7割程度になってしまうのはなぜなのでしょうか?
理由として一つだけ確実に言えることは、JC08モードで測定をするときに運転をするドライバーは、いわゆるエコ運転のテクニックを極めたプロであるということです。
各メーカーとも、0.1km/Lでもライバル車よりも燃費を伸ばそうと努力をしているわけです。
もちろん、燃費向上のためには車の設計そのものが最も重要ですが、テストでいい結果をだすためにはドライバーの「腕」もそれに劣らず重要です。
社内でもナンバー1の技術を持つ、エコ運転のプロがテストを行っているに違いありません。
カタログデータと実燃費がこれほど大きく違うのは、エコ運転のプロとわれわれ素人ドライバーの運転技術の差でかなり影響しているといえそうです。
多くの人が勘違いをしている燃費をよくするための走り方
いま乗っているクルマの燃費性能そのものは変えることができませんが、それを運転するわれわれが「エコ運転」をマスターすることで、燃費を大きく向上させることは十分に可能であるといます。
しかし、本当に燃費のよくなる走り方を知っている人というのは少数です。
燃費をよくするつもりで、むしろ悪くしてしまっているような走り方をしている人も実際には多いようです。
ノロノロとスタートするとかえって燃費は悪化します
燃費が悪くなる運転の仕方といいますと、どうしても急発進や急加速といった、アクセルを強く踏む運転の仕方をイメージする人が多いと思います。
しかし、必ずしもそうとばかりは言い切れないのです。
むしろ、慎重すぎる運転をすることが燃費を悪くしてしまうことがあるのです。
クルマのエンジンというのは、トルク曲線の関係で一番効率のいい回転数というものがあります。
そのため、あまりエンジンの回転をあげずにゆっくりと加速することは、むしろエンジンの効率を悪くして燃費を悪化させてしまう可能性すらあるのです。
CVTのついた車に乗ると、発進時に思った以上にエンジンの回転数が上がっていると感じている人も多いと思います。
これがまさに、効率のいい走りなのです。
CVT車はコンピューター制御により、エンジンの一番おいしい回転数を選んでクルマを加速させているために、実際のスピードよりもエンジンの回転数が高いように感じてしまうのです。
最近のクルマが一般的なATからCVTに変わることで、燃費が劇的に良くなったというのは、そういったエンジンの効率を最大限に生かした走りが出来るようになったからなのです。
関連記事:車はゆっくり発進したほうが低燃費なんて真っ赤なウソかも?
やたらブレーキばかり踏むと燃費は悪化します
運転に慎重な人は、必要もないのにやたらとブレーキを踏む傾向があります。
もちろん、安全のためには、必要に応じてしっかりとブレーキを踏まなければなりません。
しかし、あまりにも過剰に意味もなくブレーキばかり踏んでいると、燃費が悪くなります。
クルマというのは、ある一定の速度でクルージングしているときには、それほど燃料は消費しません。
しかし、発進や加速をするためにアクセルを強めに踏み込んだときにたくさんの燃料を消費するわけです。
運転に慎重なあまりこわごわとブレーキばかり踏んでいる人は、同時にそれと同じ回数だけアクセルを踏み込んで加速をしているということになります。
ブレーキを踏んで減速した車をもとの速度に戻すためには、アクセルを踏んで加速をしなければならないからです。
逆に、燃費の良くなる走りを考えたときは、これと反対のことをすればいいのです。
道路の状況や車の流れなどを先読みして、アクセルの開度をなるべく一定に保つような運転をすればいいことになります。
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文・山沢 達也
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