車の燃費をよくする方法に関して、さまざまな話を耳にすることがあると思います。
ただの都市伝説的なものや、噂の域をでないものまでさまざまです。
アクセルをあまりあげないで、ノロノロと発進するようにすれば燃費がよくなると信じている人も少なくないかも知れませんが、どうやらそれも真実とは限らないようです。
参考記事:車はゆっくり発進したほうが低燃費なんて真っ赤なウソかも?
また、タイヤの空気圧が下がると燃費が悪くなるとか、高速道路は80km/hで走ると一番燃費がいいなどという話もよく耳にします。
ベストカーという雑誌で、そういった燃費にまつわる噂について実際に実験をしていますので、紹介をしてみたいと思います。
クルマが重くなると燃費は本当に悪くなるのか?
クルマの重さが燃費に影響をするというのは、なんとなくイメージ的に理解できそうです。
エンジンが重いものを動かすときと軽いものを動かすときで、どちらの方に負荷がかかるのかは考えるまでもありません。
人間がリヤカーを押すときに、空荷の場合と荷物を満載した状態では、どちらが重いのかを考えてみればすぐに分かることです。
ベストカーでは、エスティマの2.4リットルに1名乗車したときと、2名乗車、7名乗車のときで燃費の違いを比較しています。
1名乗車のときにくらべて、2名乗車だとプラス62kg、7名乗車だとプラス460.5kg重くなっています。
それぞれ乗車人数別に東京都内の1周4.5kmのコースを3周した結果、1名乗車のときが7.6km/L、2名乗車のときが7.5km/L、7名乗車のときが6.8km/Lとなりました。
2名乗車のときよりも1名乗車のときの方が、燃費が悪くなっていますが、実は1名乗車のときは雨が降っており、走行抵抗が増えてしまったものと考えられます。
晴天であれば、もう少し燃費は伸びていたでしょう。
さすがに7名乗車になると、1km/Lほど燃費が悪くなります。
まさに多くの人が思っている通りの、想定内の結果となっています。
高速道路は80km/hで巡航すると一番燃費がよくなる?
日本の高速道路は、制限速度が100km/hとなっています。
しかし、100km/hで走行するよりも80km/hで走った方が、燃費がよくなるといったことをよく耳にすると思います。
そこで、ベストカーでは同じエスティマを使って、東北道の久喜インターと館林インター間を、80km/h、90km/h、100km/hでクルーズコントロールを使って走らせてみました。
その結果、80km/hのときの燃費が17.7km/L、90km/hのときの燃費が16.3km/L、100km/hのときの燃費が15.0km/Lとなりました。
これもまさに噂どおり、高速道路では80km/hで走行すると燃費がよくなるということを証明した結果となっています。
80km/hで走行したときと100km/hで走行したときでは、燃費は2.7km/hも違ってしまいます。
スピードがアップすればするほどエンジンの回転数は上がりますし、空気の抵抗も増すことになりますので、燃費が悪くなるのは当然のことといえます。
特に今回は、空気抵抗の大きいミニバンで実験をしたことで、より顕著な結果が出たのかも知れません。
タイヤの空気圧が下がると燃費が悪くなるという噂は本当?
クルマのタイヤは、メーカーより適正な空気圧が指定されています。
この指定空気圧よりも下がった状態で走行すると、燃費が悪くなるという話もよく耳にします。
ベストカーでは、スズキのハスラーを使って、タイヤの空気圧ごとに燃費のデータを取得しています。
コースは、エスティマを使って乗車人数別の燃費測定をしたときと同じで、4.5kmのコースを3周しています。
ハスラーの指定空気圧は前後ともに250kPaですが、この状態で走ったときの燃費は17.8km/Lとなっています。
それに対して、20kPa下げた230kPaの状態で同じコースを走らせると、燃費は17.1km/Lとなりました。
タイヤの空気圧が20kPa低下しただけで、燃費が0.7km/L悪化しているということになります。
こちらも、まさに噂どおりの結果ということになったわけです。
これだけ燃費が違うと、満タンにするたびにガソリン1リット以上も損することになってしまいます。
そういった意味では、日頃から小まめな空気圧チェックをすることは、とても重要であるといえそうです。
ちなみに、指定空気圧よりも20kPaあげた270kPaで同じコースを走った場合、燃費は18.4km/Lとなり、ノーマル状態にくらべて0.6km/Lも燃費がよくなっています。
空気圧を上げるとタイヤの転がり抵抗が減るので、燃費がよくなるのは当然といえそうです。
しかし、だからといって単純に空気圧を高めにすればいいというものではありません。
空気圧をあげるとタイヤが固くなりますから乗り心地は悪くなりますし、少しの段差でもクルマが跳ねやすくなってしまいます。
また、タイヤが膨らむことで接地面積が少なくなり、本来のタイヤの性能が発揮できないことになります。
メーカーが適正空気圧を指定しているのは、しっかりとした根拠があるからなのです。
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アイドリングストップ機能は本当に燃費向上に役立つのか?
最近は、アイドリングストップ機能のついたクルマが増えてきています。
確かに、クルマがまったく動かない停車時にエンジンがかかっているのは、ガソリンの無駄使いですから、アイドリングストップが燃費の向上に役立つ機能であることは間違いなさそうです。
ただ、信号で止まって発進をするたびにセルモーターが回るのは煩わしいと感じる人もいるかも知れません。
実際に、アイドリングストップ機能を有効にした場合と無効にした場合では、どれくらい燃費に差が生じるのでしょうか?
ベストカーで、ハスラーを使って都内の同じコースを、アイドリングストップ機能をオンにしたときとオフにしたときで、どれだけ燃費に違いが出るか実験をしています。
アイドリングストップ機能をオンにした状態だと、ハスラーの燃費は17.8km/Lという結果になりました。
これが、アイドリングストップ機能をオフにした状態だと、燃費は15.5km/Lと一気に悪化します。
その差は2.3km/Lとなり、ガソリンを満タンにするたびに4リットルほどの差が生じることになります。
やはり、アイドリングストップ機能というのは、あなどれないということになります。
ただ、今回の実験はあくまでもゴーストップの多い都内でのものなので、信号の少ない郊外であればここまでの差は生じないと思われます。
オープンカーの屋根を開けると燃費が悪くなる?
最近のクルマの燃費が良くなった原因の1つに、空力性能の向上があります。
ボディーの下にまでカバーを取り付けて、空力に配慮しているクルマも少なくありません。
そういったことを考えてみた場合、オープンカーというのは空力的にはかなり不利であるといえそうです。
屋根がない状態で走るわけですから、空気の流れは乱れることになります。
空力的によくないということであれば、燃費にも影響が出て来ることになるはずです。
ベストカーでは、ユーノスロードスターの屋根をオープンにした状態と閉じた状態で首都高速を走って、実際に燃費のデータを出しています。
交通量の少ない夜間の首都高(片道23km)を、屋根を開けた状態で走ると燃費は18.1km/Lとなりました。
それに対して、まったく同じコースを、屋根を閉めた状態で走ると燃費は19.3km/Lまで伸びたのです。
やはり、オープンカーは屋根を開けたまま走ると、燃費が悪くなってしまうのです。
かといって、いつも屋根を閉めた状態で走っていたのでは、オープンカーを買った意味がなくなってしまいます。
燃費の悪化は、あくまでも解放感と引き換であると考えるべきなのでしょう。
とりあえず、この実験で空力が燃費に大きく影響するということがはっきりしたわけです。
エアコンをつけると燃費が悪くなるという理由から、ときどき窓を全開にして走っているクルマを見かけますが、空力の悪化を招くという点で考えてみると、逆効果になる可能性もあるわけですね。
文・山沢 達也
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