クルマの走った距離に応じて税金を課税する、いわゆる走行税の導入を政府が検討しているようです。
日本でクルマを所有すると、さまざまな名目で税金が課せられます。
自動車税・重量税・取得税・消費税・燃料税という名目で、クルマのオーナーはまさに税金漬けにされています。
そんな税金漬けになっているクルマの所有者に対して、政府はさらに走行距離に応じて走行税という名目で課税をしようとしているのです。
ちなみに、すでに走行税を導入しているニュージーランドでは、走行距離1,000kmあたり最低でも5,000円の走行税がかかります。
つまり、年間で1万km走行する人の場合だと、最低でも毎年5万円の走行税を払わなければならないことになります。
日本政府は、いったいなぜクルマのオーナーにさらなる負担を強いることを計画しているのでしょうか?
スポンサーリンク
電気自動車やハイブリッド車の普及で税収が減っていく?
政府がクルマの所有者から猛反発を受けそうな走行税なるものを打ち出した背景には、クルマ関連の税収がこれからどんどん先細りしていく可能性が高いという現実があります。
なかでも税収先細りの大きな要因となっているのが、ハイブリッドカーや電気自動車の普及です。
ハイブリッドカーの登場で、日本車の燃費は劇的に向上しました。
最近はガソリンスタンドがどんどん潰れていますが、ガソリンの消費量がどんどん減ってしまっていることが原因の1つといわれています。
参考記事:激減するガソリンスタンドの影響で給油が困難になってしまう?
ガソリンの消費量がどんどん減ってしまえば、燃料税による税収もどんどん減ってしまうのは当然のことです。
実際、ガソリンの消費量は2010年に58,379kLだったものが、2017年には51,904kLまで減っています。
将来的に、電気自動車などが普及してくると、ガソリンの消費量はさらに減っていくことが予想されます。
ちなみに、日本政府は2050年までに世界で売る日本車すべてを電気自動車にするという方針を打ち出しています。
すべてのクルマが電気自動車になってしまうと、当然のことながら燃料税は税収として見込めなくなります。
ガソリンの価格の半分近くは税金ですので、その税収が見込めなくなってくると、国としても困ってしまうわけです。
自動車税の課税額が安くなるクルマが増えてきています
最近のクルマは、自動車税に関しても有利なクルマが増えてきました。
自動車税というのは、基本的に排気量に応じて課税額が決まる仕組みになっています。
排気量が大きくなるにつれて高い税金を納める必要があるのですが、最近のクルマは同じ性能に対して排気量が小さくなる傾向にあります。
たとえばハイブリッドカーですが、モーターとエンジンを組み合わせることで動力性能を発揮する仕組みになっています。
そのため、実際に搭載されているエンジン以上の性能を発揮することができます。
ホンダのフィットハイブリッド場合、搭載されているエンジンは1496ccとなっていますので、自動車税の区分としては1500cc未満ということになります。
しかし、フィットハイブリッドのエンジンとモーターを合わせたシステム出力は137PSもあり、性能的には1800ccクラスのクルマに匹敵します。
自動車税は、1リットル超~1.5リットル以下が34.500円、1.5リットル超~2リットル以下が39,500円となっていますので、フィットハイブリッドの税額は動力性能に対して5,000円安いことになるわけです。
また、ダウンサイジングターボのクルマにも同様のことがいえます。
ターボ車の場合、排ガスを利用して過給をしていますから、同じ排気量であればノンターボのクルマにくらべて高出力になります。
たとえば、ステップワゴンは2000ccクラスのクルマであるにもかかわらず、ダウンサイジングターボ化することで1496ccのエンジンが搭載されています。
その結果、ダウンサイジングターボ化されたステップワゴンの自動車税は、これまで2000ccのエンジンを搭載していたときにくらべて5,000円安くなるわけです。
電気自動車の場合には、さらに自動車税が安くなります。
電気自動車は、エンジンがないために排気量で税額を決めるということができません。
そのため、便宜的に1リットル以下のクルマと同額の自動車税が適用されています。
たとえば、日産リーフ(e+)の最大トルクは340N・mもありますので、ガソリンエンジンの3,500ccクラスと同等です。
3,500ccのガソリン車であれば58,000円の自動車税を払わなければなりませんが、リーフのオーナーが支払う自動車税は29,500円です。
参考記事:排気量で決まる自動車税は電気自動車やダウンサイジングターボだとお得になります
カーシェアリングによって個人でクルマを所有する人が減って行く?
地方に住む人にとっては、通勤などに必要になるためクルマは生活必需品といえいます。
しかし、公共の交通機関が発達した都市部周辺に住む人にとっては、クルマはある意味では贅沢品といえます。
クルマを所有していたとしても、週末などにしか利用しないことが多いからです。
税金や保険料、駐車場代などの維持費を考えると、都市部周辺で個人的にクルマを所有することは効率的ではないといえます。
そういったところに目をつけて、徐々に普及しつつあるのが、カーシェアリングです。
カーシェアリングというのは、あらかじめ会員登録している人に対してクルマを貸し出しする形で、クルマを共有するサービスになります。
クルマを個人的に所有しなくても、必要な時だけ利用することができるために、たまにしかクルマを使わない人にとっては魅力的なサービスといえます。
今後はこのカーシェアリングがどんどん普及してくると予想されていますが、そうなると個人でクルマを所有する人がどんどん減ってしまうことになります。
個人でクルマを所有する人が減ってしまえば、自動車税や重量税といったクルマを所有することで発生する税収が減ってしまうことになります。
スポンサーリンク
走行税は地方に住んでいる人にしわ寄せがきます
自動車関連の税収が将来的にどんどん減って行ってしまう可能性が高いということがお分かりになったかと思いますが、政府としてはそれをそのまま見過ごすわけにはいきません。
道路や橋などの、クルマのためのインフラ整備をする財源が確保できなくなってしまうからです。
そこで、日本政府が目をつけたのが、走行距離に応じて課税する走行税ということになります。
しかし、それでなくても税金漬けとなっているクルマのオーナーに対して、新たに税金をかけるとなると反発は必至といえます。
特に、クルマが生活必需品ともいえる地方の人にしてみれば、クルマにこれ以上の税金をかけられるなんて納得がいかないでしょう。
しかも、週末にしかクルマに乗らずにそれほど走行距離を走らない都会周辺の人よりも、通勤でクルマを使うことで多くの走行距離を走る必要のある地方の人の方が、たくさん税金を納めなくてはならなくなります。
これ以上地方での生活がしにくくなれば、過疎化に拍車がかかってしまう可能性もあります。
もともと日本のクルマに対する税金は諸外国にくらべて高い
さまざまな要因によってこれまでにクルマにかけられていた税金が減ってしまうと予想されることが、政府が走行税導入の検討をしている主な理由です。
しかし、そもそも日本のクルマに対する税金は諸外国にくらべて高すぎるという現実があるのです。
日本で自動車を取得して、その後13年間にかかる税金の総額は、アメリカの31倍、ドイツの2.8倍、イギリスの2.8倍にもなります。
参考記事:クルマの維持費が高すぎる!~クルマを40年間乗り続けると家が1件買える!?~税金・ガソリン代・車検費用
クルマにこれだけ高い課税をかけておきながら、新たに走行税を課税するというのは、そう簡単には理解が得られないでしょう。
走行税はまだ検討の段階ですが、実現させるとなるとクリアしなければならない課題が山積みであるといえそうです。
文:山沢 達也
スポンサーリンク