反則金を肩代わりしてくれる交通違反の保険に加入する意味はあるのか?

赤と青の2台のミニカーと保険資料交通違反で捕まったときに、支払わなければならない反則金を肩代わりしてくれるという保険が存在するのをご存知でしょうか。

交通違反の反則金なんてたかが知れてるし、わざわざ保険に入る意味はないと考える人が大半でしょう。

しかし、反則金といっても、違反の内容によってはバカにならない金額になるようです。

たとえば、大型車が高速道路で35km/h以上40km/h未満のスピード違反をしたときの反則金は4万円となっています。

この金額だけをみると、万が一のときのために保険に入っておこうという人もいるのかも知れません。

はたして、交通違反の反則金を肩代わりしてくれる保険に加入する意味はあるのでしょうか?

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そもそも交通違反の保険金を肩代わりする保険とは?

交通違反で捕まったときに、本人の代わりに反則金を支払ってくれる保険といっても、仕組みが分からない方も多いと思いますので、具体的に説明をしてみたいと思います。

そういったサービスを提供しているある会社のホームページを見てみますと、入会金は0円で、年会費が個人8,000円、会社などの法人が10,000円となっています。

この年会費を納めることで、入金日の翌日午前0時より保険が有効になります。

もし、1年間無違反だった場合には、翌年以降の年会費が10%ずつ下がっていって、最大で50%割引されるようです。

つまり、5年間一度も違反をしなかった場合は、年会費が個人で4,000円、法人で5,000円まで安くなるわけです。

また、30日間で2回以上、あるいは90日間で3回以上の違反を繰り返した場合には、保険による補償の対象外となるようです。

このように、仕組みとしてはいたって単純な保険となっています。

駐車違反で摘発されたときに対象外になってしまう?

交通違反で摘発されたときの反則金肩代わり保険で、注意をしなければならない点があります。

それは、補償の対象になるのが「反則金」だけということです。

木でできた車と一万円札悪質な違反に適用される「罰金」には適用されません。

飲酒運転などの場合には、最大で100万円の罰金が科せられることもありますので、そこまで補償をしてしまうとビジネス的に成り立たなくなってしまうのでしょう。

また、罰金だけではなく、駐車違反で摘発されたときにも対象外になってしまう可能性があるのです。

駐車違反のステッカーを貼られたときに、本人が素直に認めて出頭すると違反が確定して反則金を支払うことになります。

そして、さらに1点~2点の違反点数が科されることになります。

ところが、出頭せずに放置をしていた場合には、ドライバーはお咎めなしとなる代わりに、クルマのオーナーに「放置違反金」が科されることになります。

この「放置違反金」の場合には、違反点数が科されませんので、正直に出頭するドライバーは少ないと思います。

参考記事:正直者が馬鹿をみる「放置違反金」制度~駐車違反なのに違反点数がつかない?
       
そういった場合に、支払うことになるのは「放置違反金」であり、「反則金」ではないために、保険の対象外となってしまうわけです。

駐車違反のときに対象外となってしまうのでは、保険としての魅力は大幅に半減してしまうことになります。

そもそも一般の優良ドライバーが加入する意味があるのか?

保険に加入するということは、掛け金に見合ったメリットがなければ意味がないということになります。

交通違反の反則金を肩代わりしてくれる保険には、掛け金に見合うだけのメリットはあるのでしょうか?

日本国内で、運転免許証を所有しているドライバーの数は、8,000万人を超えています。

それに対して、年間の交通違反の取り締まり総数は800万件ほどです。

1人のドライバーが何度も違反を繰り返すケースもありますから単純にはいえませんが、ドライバーのおよそ10人に1人が1年間で何らかの交通違反をして検挙されているということになります。

つまり、確率的に言えば、一般の優良ドライバーが交通違反で検挙されるのは、10年に1度あるかないかといった程度になります。

それでは、反則金の肩代わりをしてくれる保険を10年間払い続けた場合、トータルでいくらになるのでしょうか?

無違反が続いた場合、掛け金が最大50%まで下がりますので、1度も捕まったことのない人が10年間に支払うトータルの掛け金は以下になります。

8,000円+7,200円+6,400円+5,600円+4,800円+4,000円+4,000円+4,000円+4,000円+4,000円=52,000円

つまり、10年間で52,000円もの掛け金を支払うことになるわけです。

仮に、先ほど紹介した一番高い反則金額が適用される、大型車が高速道路で35km/h以上40km/h未満のスピード違反をしたとしても、反則金は40,000円ですから、まだ12,000円の払い損ということになります。

しかも、反則金そのものは保険を使って支払ったとしても、違反をしたことによって科される違反点数が免除になることは絶対にありません。

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交通違反には保険に入るだけのリスクはないといえます

そもそも保険というものは、万が一のときに生活に破綻をきたしかねないほどの経済的な負担が想定できるときに加入すべきものです。

たとえば、人身事故などを起こしてしまったときには1億円を超える賠償金額になることも少なくありません。

一般の人がそんな大金を用意することは不可能ですから、リスクヘッジをするために任意保険に加入するわけです。

火災保険などもそうです。

数千万円の借金をして購入したマイホームが火事で焼けてしまった場合、保険に入っていなければ、家そのものがなくなってしまったにもかかわらず、その後もずっとローンの返済を続けなければならなくなります。

そのように、万が一のときに生活が破綻してしまうようなリスクを回避するために、保険というものが存在するわけです。

赤と青のクルマと一万札数枚それに対して、交通違反の反則金というのは、最高で4万円です。

普通車が15km/h以上20km/h未満のスピード違反で捕まったときの反則金は15,000円であり、20km/h以上25km/h未満のスピード違反であっても、18,000円です。

万が一こういった交通違反を犯してしまたったとしても、この程度の金額であればちょっと生活をやりくりすれば問題なく支払うことが可能でしょう。

しかも、そういった違反で摘発される可能性は10年に一度あるかないかの確率です。

そのようなことを考えた場合、10年間で52,000円もの掛け金を支払うのはバカらしいということになります。

また、交通事故や住宅の火災などの場合には、自分が気をつけていても避けることができないことも多いものです。

つまり、運に左右される部分も大きいわけです。

それに対して、交通違反の場合は、自分がしっかりと交通ルールを守ってさえいれば、摘発されることはないわけです。

こういったことを冷静に考えてみますと、一般のドライバーが交通違反の反則金を肩代わりしてくれる保険に入る意味は、ほとんどないということがいえます。

反則金肩代わり保険の現状はどうなっているのか?

このように、加入するメリットのほとんどない交通違反の反則金を肩代わりしてくれる保険ですが、現在では多くの業者が事業から撤退をしているようです。

最初は物珍しさで加入する人もいたのでしょうが、加入してもほとんどメリットがないということにほとんどの人が気づいたのでしょう。

また、2006年に法改正があったことも、こういったサービスを提供している業者に大打撃を与えました。

法改正の内容というのは「保険と同様の金融商品を扱う場合、加入者が1000人を超える場合は規制対象になり、金融庁の認可がないと販売できない」というものです。

こうした法改正の影響もあり、多くの業者が廃業を余儀なくされてしまったわけですが、現在でも実際に営業しているところもあることはあるようです。

しかし、そういった保険が存在するからといっても、加入する意味がほとんどないということは、ここまで読んでくださった方であれば十分に理解できることでしょう。

文・山沢 達也

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