駐車禁止の場所に10分程度クルマを止めて、用事を済ませて戻って来てみると、フロントガラスに「駐車違反」と書かれた黄色いステッカーが貼られていてドキッとした経験のある人もいることでしょう。
駐車違反で捕まると、反則金と違反点数のペナルティを覚悟しなければなりませんから、その日は一日ブルーになるに違いありません。
このステッカーを貼られてしまったら、観念して警察署まで出頭をして反則金を払うというのが、一般の人の普通の認識だと思います。
しかし驚いたことに、まじめに出頭をして駐車違反をしたことを素直にみとめた正直者が、バカをみるようなシステムになっているのです。
実は「放置違反金」という制度ができた2006年以降に、そのようなおかしなことが起こるようになってしまったのです。
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そもそも放置違反金制度とはどのようなものなのでしょうか?
駐車違反をしたときに貼られるステッカーには、上の方に小さく「放置車両確認標章」と書かれていると思います。
「おれはクルマを放置したつもりなんかねーし」などとヘリクツを言っても通用しません。
駐車違反をしたクルマは、基本的に放置車両とみなされることになっているからです。
なぜそうなっているのかといいますと、2006年以降は駐車違反をしたクルマに対して、持ち主に対する責任を問うことになったからです。
駐車違反をしたドライバーを確実に摘発するためには、その車の近くで待ち伏せをして、ドライバーがクルマに戻ってきたタイミングで違反切符を切る必要があります。
しかし、ドライバーがいつ戻って来るか分かりませんし、そんなことをしていたら非常に効率が悪いといことになってしまうため、駐車違反のステッカーを貼って後日出頭させることで効率化を図っているわけです。
そうすることで、確かに効率よく駐車違反の取り締まりをすることができますが、その反面さまざまな問題が発生することになります。
つまり、駐車違反をした車両を運転していたドライバーが、必ずしもクルマの持ち主とは限らないという問題です。
夫名義のクルマを妻が運転することは普通にありますし、友人や知人にクルマを貸すこともあるかも知れません。
そのようにクルマの名義人とドライバーが異なる場合であっても、2006年6月以前には、クルマの所有者が違反をしたということを前提で取り締まりをしていたわけです。
当然ながら、そこには冤罪が発生することになります。
また、実際にはクルマの名義人本人が駐車違反をしたにもかかわらず「その日は友人にクルマを貸していた」などと、言い逃れをするケースもあるでしょう。
逆に、運転免許証の違反点数が残り少なくなってしまった人が、知人に身代わりでの出頭をお願いするかもしれません。
そこで、そういったややこしいことが起こらないように、クルマの持ち主にもしっかりと責任を持ってもらおうという趣旨のもとに生まれたのが「放置違反金」という制度なのです。
その結果「その日は友人にクルマを貸していた」などという見苦しい言いわけは通用しなくなったわけです。
ステッカーを貼られてもあえて出頭する必要はない?
「放置車両確認標章」が自分のクルマに貼られていた場合、とるべき行動は2つのパターンに分けられます。
1つは管轄の警察署に出頭して「私が駐車違反をした本人です」と、正直に認めるパターン。
もう一つは、貼られたステッカーを無視して出頭しないパターンです。
前者の場合だと、普通に「駐車違反」として反則切符がきられて反則金を納めることになり、さらに違反点数が課されることになります。
ところが、後者のパターンを選ぶと、後日郵送で「放置違反金」の納付書が送られてくることになります。
その場合、納付書に記載された金額を納めれば、すべての処理は終わることになります。
駐車違反をしたドライバーが誰だか特定できない状態なわけですから、クルマの持ち主に対して反則金を課すわけにいきません。
そのため、同じ駐車違反をしたにもかからず、正直に出頭した場合には違反点数のペナルティが課され、「放置違反金」の納付書が送られてくるまで無視をしていた人は違反点数にはまったく影響がないということになります。
つまり、わざわざ出頭するということは、違反点数のペナルティをもらいに行くようなものなのです。
駐車違反の反則金よりも高い放置車両違反金
駐車違反をしても出頭せずに放置をしておくことで、「放置車両違反金」の支払いのみで済み、違反点数にはまったく影響がないということがお分かりになったかと思います。
これで駐車違反の反則金と放置車両違反金が同額であったならば、誰も正直に駐車違反で出頭する人などいなくなってしまうに違いありません。
しかし、さすがにそれでは「あまりにも正直者がバカを見るシステム」となってしまうため、駐車違反の反則金と放置車両違反金に、金額差をつけています。
駐車禁止場所で駐車違反をした場合の普通車の反則金は10,000円となっていますが、これが放置車両違反金だと15,000円となります。
さらに、駐車も停車もできない駐停車禁止区域で違反をした場合、反則金であれば12,000円ですが、放置車両違反金だと18,000円となっています。
つまり、正直者がバカを見ないように、支払うべき金額に5,000円~6,000円の差をつけているわけですね。
駐車禁止違反の違反点数は、駐車禁止場所が1点、駐停車禁止場所が2点となっていますので、ドライバーにしてみれば、余分にお金を払うか違反点数を守るかの2者択一を迫られることになるわけです。
もし本当に友人にクルマを貸した時にステッカーを貼られてしまったら?
「放置車両違反金」制度というのは、「誰が駐車違反をしたのかは知りませんけど、クルマの持ち主がちゃんと責任を取ってくださいね」ということなのですが、もし本当に知人にクルマを貸していた場合にステッカーを貼られたときにはどうすればいいのでしょうか?
クルマのオーナーは、駐車違反をした知人に対して「こら!お前が駐車違反をしたんだから、正直に出頭しろ」と催促をするのもありです。
しかし、この場合でも、あえて「放置車両違反金」の請求書が届くまで無視を続けるという方法もありです。
とりあえず、クルマのオーナーが「放置車両違反金」を知人に代わって支払っておき、あとから知人にその分を請求すればいいことになります。
「放置車両違反金」の場合には、違反点数にまったく影響がありませんから、クルマのオーナーにネガティブな要因はありません。
むしろ得をするのが駐車違反をした本人で、知人に立て替え払いをしてもらった「放置車両違反金」を返済すればそれで済んでしまい、本来であれば課されるはずの違反点数のペナルティを受けなくて済みます。
こういったことは「犯人隠避(はんにんいんぴ)」という立派な犯罪になるはずですが、いまのところ罪に問われたという話を聞いたことがありません。
とりあえず、お金さえ払えばいまのところまったくは問題ないようです。
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もし「放置車両違反金」を払わなかったらどうなる?
仮に駐車違反をしたとしても、出頭をせずに後日送られてくる納付書を使って「放置車両違反金」を納めれば、違反点数のペナルティを受けなくて済むといことがお分かりいただけたかと思います。
それでは、もし放置車両違反金を納めなかった場合にはどうなるのでしょうか?
当然のことながら督促状が送られてくることになるのですが、実はその督促状が「運輸支局」や「軽自動車車検協会」などにも送られることになるのです。
その結果どうなるかといいますと、「放置車両違反金」を納めるまで車検を受けることができなくなってしまうのです。
車検が受けられないというのは困りますから、結局は放置車両違反金を払わざるを得なくなるわけです。
原付バイクや250cc以下の自動二輪には車検がありませんから、そのまま放置車両違反金を払わずに済むのかといいますと、世の中そうは甘くありません。
そのまま支払いを拒否し続けると、公安員会によって差し押さえをされることになります。
多くの場合は、年利14.8%の延滞金を上乗せして、銀行口座から勝手に引き落としをされてしまいます。
通帳の出金欄に「差し押さえ」と印字されていれば、それが強制的に引き落としされた「放置車両違反金」ということになるわけです。
もし銀行口座に残高がない場合には、バイクなどの現物が差し押さえられる可能性もあります。
放置車両違反金は、悪あがきをせずに素直に支払った方がよさそうです。
文・山沢 達也
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