「この前、一時停止違反で捕まっちゃって罰金を取られたよ」とか「信号無視で捕まって7千円も罰金を払うはめになった」などといった会話をよく耳にすることがあります。
こういったときに多くの人が口にする「罰金」というのは、実は反則金であることが多いのです。
もちろん、交通違反で摘発されたときには「罰金」を支払うことになるケースもありますが、その場合は同時に「行政処分」も課されることになります。
「行政処分で免停を食らった」などという話もよく耳にしますね。
それでは、交通違反で摘発されたときに課される罰則である「反則金」「罰金」「行政処分」には、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
スポンサーリンク
罰金と反則金は具体的にどこが違うのでしょうか?
もともと、交通違反で摘発されたときにペナルティとして納付させられるのは罰金だけでした。
しかし、車の普及とともに交通量が増え、交通違反で摘発される人の数が増えてしまったことにより、裁判所の処理が限界になってしまいました。
そこで、1968年7月より反則金というものが登場し、軽微な違反に関しては裁判所を通さずに、その場で違反をしたことに同意して反則金を納めれば済むようになりました。
反則金と罰金の違いは、違反をしたときに切られるキップの色ですぐに見分けがつきます。
いわゆる「青キップ」と呼ばれるものが反則金で、「赤キップ」と呼ばれるものが罰金ということになります。
交通違反で摘発されたときに切られるキップは、90%以上が青キップだといわれていますので、ほとんど人は罰金ではなく反則金を納めていることになります。
反則金の支払いというのは任意だって知っていましたか?
罰金というのは裁判所からの命令ですから、これは絶対に納めなければなりません。
ところが、意外なことに反則金の支払いはあくまでも任意であって、支払っても支払わなくてもどちらでもいいことになっています。
「そんな馬鹿な!」と思う人も多いと思いますが、これはまぎれもない事実です。
しかし、さすがに反則金を納めないという勇気のある人はそう多くはないようで、実際に反則金を納めない人というのは、青キップを切られた人の3%程度だといわれています。
つまり、97%の人は、任意であるはずの反則金をしっかりと納付していることになります。
「それなら正直に反則金を払う人が損をすることになるじゃないか」と思う人もいるかも知れませんが、そう話は簡単ではありません。
反則金を支払わないと刑事手続きが開始されます
反則金というのは、あくまでも任意なので支払っても支払わなくてもどちらでもいいのですが、もし本当に支払わなかった場合は警察のなかにある「違反通告センター」というところに出頭しなければならなくなります。
つまり、反則金の支払いは任意ですが、素直に違反を認めて反則金を支払うか「違反通告センター」に出頭するかの、二者択一を迫られることになるわけです。
反則金を支払わない場合には、違反通告センターで払わない理由をじっくりと話を聞くというスタンスですね。
もし出頭したときに、納得して反則金を納めればそれで終わりですが、納得がいかずに支払いを拒否した場合には、刑事手続きに移行することになります。
また、違反通告センターへ出頭せずに、なおかつ支払いの督促に対して無視を続けた場合にも、最終的には同様に刑事手続きに移行されることになります。
つまり、何度も納付のチャンスを与えてあげたのに、それでも納付しないのであれば裁判で白黒つけましょうということになるわけです。
つまり、赤キップと同じ扱いになってしまうわけですね。
反則金の支払いはあくまでも任意ですが、だからとって違反をしたにもかかわらず支払いを拒否する人が得をするようなシステムにはなっていないのです。
任意で素直に納付すればそれで処理は終わりですが、支払いの拒否を続けると、いろいろなところに呼び出されて面倒なことになりますよ、というシステムなのですね。
参考記事:反則金を肩代わりしてくれる交通違反の保険に加入する意味はあるのか?
罰金に該当する交通違反の場合は裁判にかけられる?
悪質な違反をして赤キップを切られた場合には、いわゆる刑事手続きをとる形になりますので、本来であれば裁判をしなければならないことになります。
しかし、実際に赤キップを切られたことで、裁判にかけられたという人の話は聞いたことがありません。
実は、交通違反の場合には略式の起訴となるために、実際に裁判が行われることは稀です。
赤キップを切られた人が交通裁判所に行くと、略式の起訴をする検察官と罰金の支払い命令をだす裁判官がいて、違反をしたドライバーに対して罰金の支払い命令を出すことになります。
これを「三者即決処理方式」といいますが、面倒な裁判をしなくても、違反をしたドライバーが罰金の支払いに納得をすれば、それで済んでしまうわけです。
「三者」とはいっても、違反をしたドライバーが直接裁判官と会うことはなく、別室にいる裁判官は罰金の額が書かれた書類にハンコを押して回すだけです。
ドライバーはその書類を窓口に持って行って、罰金を納めることで、すべての処理が終わることになります。
早ければ、出頭してから罰金を支払うまで30分程度で済んでしまいます。
本来であれば、本格的な裁判をしなければならない刑事の扱いであるにもかかわらず、交通違反の場合には、あまりにも数が多いためにこのように略式で進められるわけです。
もちろん、自分が摘発されたことにどうしても納得がいかないというドライバーは、略式での処理を拒否して、本格的な裁判を受けることも可能です。
参考記事:交通違反の罰金をずっと払わないとどうなる?~労役場に留置されます
スポンサーリンク
赤キップを切られると前科一犯になってしまうのか?
刑事罰を受けると、いわゆる「前科」がつくことになります。
交通違反であっても、悪質な違反は刑事罰の対象になります。
そうなると、赤キップを切られたときにも前科がつくことになってしまうわけです。
「前科○犯」などというと、いかにも凶悪な犯罪人のイメージがありますが、交通違反で前科ついてしまうとなると、ちょっとシャレにならないですね。
ただし、交通違反の刑事罰を受けたことによる前科の記録は、検察管内だけに保管されるようになっており、他の犯罪の場合のように市区町村に連絡がいくことはありません。
そのため、同じ刑事罰を受けたことによる「前科」であっても、交通違反の場合は少し意味合いが違ってくるようです。
実際に、交通違反によって「前科一犯」となったとしても、日常生活に支障をきたすということはまずないはずです。
気になるのは、履歴書の処罰の欄に記入すべきかどうかという点です。
前科があるのにこの欄に記入をしなかった場合、告知違反ということで就職の取り消しや懲戒処分の対象になることがあります。
しかし、交通違反での前科が会社にバレることはまずないと思いますし、仮にばれたとしても交通違反の犯罪歴があることを理由に懲戒処分を科す会社というのはそう多くはないと思います。
行政処分というのはいわゆる免停や免許取り消しのことです
「反則金」や「罰金」の意味の違いは理解できたことと思いますが、それでは「行政処分」というのは、どのようなペナルティのことをいうのでしょうか?
簡単にいってしまえば「免停」や「免許取り消し」などのことになります。
反則金の対象になる交通違反の場合には行政処分を受けることはありませんが、罰金の対象となる悪質な交通違反は行政処分を受けることになります。
つまり、悪質な交通違反をした場合には、刑事的な処分と同時に行政処分を受けることになり、ダブルでペナルティが課されるということになります。
免停の前歴がない場合、違反点数が6点~8点で30日間の免停、9点~11点で60日間の免停、12点~14点で90日間の免停、15点以上で免許取り消しとなっています。
ただし、免停の期間は講習を受けることで以下のように短縮することが可能です。
30日の免停⇒20日~29日
60日の免停⇒24日~30日
90日の免停⇒35日~45日
30日の免停の場合、最大で1日に短縮できることになりますが、これらの短縮日数は、講習のあとに行われる試験の成績によって決まるようなので、くれぐれも講習中に居眠りなどしないようにしたいものですね。
また、これらの講習を受けるためには、安くはない費用が発生します。
30日の免停講習が13,800円、60日の場合で23,000円、90日の場合が27,600円となっています。
結局は、お金を払ってペナルティを軽くしてもらうようなものなのですが、罰金を支払ったうえに講習代での出費はけっこう痛いですね。
余分なお金を国庫に納めないためにも、くれぐれも安全運転に努めたいものです。
文・山沢 達也
スポンサーリンク