車のナンバープレートなんて、普段はあまり気にすることがないでしょう。
たまに変わった番号やゾロ目のナンバープレートのクルマが前方を走っていたりするときに、気にかける程度だと思います。
しかし、実はこのナンバープレートが、世の中のさまざまな場面で活用されていたりするのです。
あなたの車のナンバーは、クルマで出かけたときの行く先々でデータとして取得され、あなたの行動が監視されているのです。
車を使って移動をする限り、あなたはこのナンバープレートによる行動の監視から逃れることは出来ないことになります。
あなたの車のナンバープレートは、どのようなところで活用されているのでしょうか?
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道路の上部に設置されている怪しげなカメラの正体
高速道路や幹線道路などを走っていると、道路の上部に怪しげなカメラのようなものが設置されていることに気がつくことがあると思います。
その装置はオービスと呼ばれる自動速度取り締まり装置か、Nシステムと呼ばれるナンバー読取装置のどちらかです。
この2つの装置は、形は似ていますが実はまったく別のものなのです。
参考記事:オービスの仕組みの違い~レーダー式・ループコイル式・LHシステム・Hシステム
・犯罪捜査に利用されるNシステム
Nシステムというのは、その道路を走るクルマのナンバープレートを撮影して、主に犯罪捜査のために使われる装置になります。
盗難車などの犯罪にかかわっている車のナンバーをNシステムが感知すると、その車両が走っている付近の警察官や巡回中のパトカーなどに即座にその情報が伝わるようになっているのです。
このNシステムがあることで、犯罪捜査のための検問を減らすことができ、交通渋滞などを起こさなくてすむわけです。
スピードオーバーで走っているときに、前方にあるこのNシステムを発見すると自動速度取り締まりと勘違いしてドキッとする人も少なくないと思いますが、Nシステムでは速度を記録することはできませんので安心してください。
・Nシステムで問題になっている人権侵害
このNシステムでは、クルマのナンバープレートだけではなく、運転者や助手席に乗っている人の顔まで撮影されるようになっています。
しかも、オービスの場合には速度オーバーしたクルマだけしか撮影されませんが、このNシステムの場合には、通過した車両がすべて撮影されることになります。
つまり、あなたがいつ誰とどこの道路を走っていたかということが、すべて記録されてしまうことになるのです。
もしあなたが不倫相手を助手席に乗せて道路を走っていたりすると、その状況がすべてNシステムに記録されてしまうことになるわけです。
そのため、プライバシーなどの人権侵害の問題があると一部で指摘されています。
1999年に新潟県のある警察署の課長が、女性警察官との交際問題で辞職に追い込まれたことがありました。
このとき、新潟県警がNシステムを使って、この課長の行動を追跡していたことがあきらかになっており、非番の警察官のプライベートな部分の動向まで監視するのは悪用ではないかとの指摘がされています。
また、2006年には、愛知県警のPCがコンピュータウイルスに感染し、ある地域を走行したクルマのナンバープレート情報と通過日時を記録したファイルが、ネット上に流出するという事件も起きています。
基本的には犯罪捜査以外には利用されないことになっているNシステムですが、クルマで出かけたときの個人のプライベートな部分が記録されるということに、なんとなく不安をおぼえる人も少なくないでしょう。
民間でもナンバープレート活用があたり前?
ナンバープレートのデータを活用しているのは、Nシステムだけではありません。
実は、民間におけるさまざまなサービスにおいて、このナンバープレートが活用されているのです。
こういったシステムにより、店舗によってはVIP客を判別するようなことも行われているのです。
・駐車場のゲートが勝手にあく仕組み
大型スーパーなどのゲート式の駐車場を利用したときに、出るときに勝手にゲートが開いたりすることがあります。
出口でわざわざ窓から手を伸ばして清算をする必要がないため大変便利なシステムですが、これは駐車場に入るときに発券と同時にクルマのナンバープレートを撮影することで、可能になっているのです。
事前清算機で清算がすんだというデータが出口のゲートに転送されることで、出るときに勝手にゲートが開く仕組みになっているわけです。
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・ロック板のないコインパーキング
コインパーキングというと、不正防止のためのロック板を思い浮かべる人も多いと思います。
しかし、最近ではこのロック板のないコインパーキングが増えています。
こういった最新式のコインパーキングの場合には、ロック板がない代わりにナンバーを撮影するためのカメラが設置されているのです。
つまり、車のナンバーによって、どの車両がどれだけの時間駐車をしたかということを管理しているわけです。
もし、カメラを隠して不正をしたりしようとすれば、すぐに異常信号が管理室に行き、警備員が駆け付ける仕組みになっています。
実際に、この最新式のコインパーキングにおける不正の発生件数は、ロック板式にくらべて約半分に減るそうです。
・VIPなお客様をえこひいきするためのシステム?
カメラによって撮影されたナンバープレートの情報を、来店するお客様の差別化に活用しているようなところもあります。
たとえば、大型の新車ディーラーなどでは、入り口付近にカメラを設置して、どのような人が来店したのかがすぐに分かるようなシステムを構築しているところがあるのです。
車のナンバープレートが撮影されると、店内のモニターにそのお客様の過去のあらゆる情報が表示されます。
もし、そのお客様が過去に何台もクルマを購入してくれているような超お得意様だったりした場合、モニターを見ればすぐに分かることになります。
休日などで店内が混んでいて誰が来店したのか分からないような状態のときでも、システムによってVIPなお客様がきたことが事前に分かれば、すぐに営業マンがお出迎えをして対応することが可能になるわけです。
また、このシステムにより、車検や点検などの予約で来店したお客様の情報なども即座に把握できることになります。
こういったシステムを導入しているディーラーに混んでいるときに行って、すぐに営業マンがお出迎えをしてくれたら、あなたはVIP扱いされているのかも知れません。
ナンバープレートから個人情報が知られることはないのか?
このように、いろいろなところで利用されているあなたの車のナンバーですが、そもそもナンバープレートから個人情報が漏れることはないのかどうか不安になる人もいることでしょう。
たとえば、若い女性などが車に乗っていて、たまたまストーカーのような人物にその車のナンバーを控えられて、住所や氏名などが分かってしまうということになれば大問題です。
実は、こういった問題が起こることを想定して、2007年の道路運送車両法の改正によって「自動車登録事項証明書」の交付条件が厳しくなりました。
かつては、車のナンバーさえわかれば「登録内容の確認」といった理由で誰でも簡単に「自動車登録事項証明書」発行してもらうことが可能でした。
「自動車登録事項証明書」には、クルマ所有者の住所や氏名が書かれていますので、かつては車のナンバーから簡単に個人情報が取得できたことになります。
しかし、法改正のあった2007年11月19日以降は、車のナンバーに加えて車体番号が分からないと「自動車登録事項証明書」を発行してくれなくなりました。
車体番号は、ボンネットを開けなければ見ることができませんので、第三者に知られることはまずないといえるでしょう。
また、ナンバーと車体番号の両方が分かったとしても、何のために「自動車登録事項証明書」が必要なのかを詳しく記載する必要があり、職員が不当な目的と判断した場合には発行してもらえなくなりました。
例外的に、私有地にクルマを違法に放置されている場合に限り、ナンバー記入だけで「自動車登録事項証明書」を発行してもらえる場合がありますが、その場合であっても、現場の写真や見取り図などの証拠の提出が求められます。
ですから、車のナンバープレートから見知らぬ人によって個人情報を取得されるという心配は、いまではまずなくなっているといっていいでしょう。
文・山沢 達也
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