車で一番大切なブレーキ性能になぜみんな注目しないのか?

ブレーキを踏む足とタイヤクルマは、止まっている状態であれば、事故を起こすことはありません。

信号待ちで止まっていて後ろから追突されることはありますが、自らが事故を発生させてしまうということはないわけです。

ところが、いったん走り出した車というのは、いつ事故に遭遇するかもしれないというリスクを常に抱えているわけです。

それにもかかわらず、クルマをしっかりと停止させるための、ブレーキ性能に注目をする人はあまりいません。

最大出力や最大トルクといった、エンジンの性能を気にする人は多いのですが、ある意味では一番大切であるブレーキ性能に注目をして車選びをする人はほとんどいないのが現実です。

カタログの主要諸元表などをみても、エンジンの性能に関してはこと細かに書いてありますが、ブレーキの性能については一切書かれていません。

なぜ、これほど大切なブレーキに対して、メーカーも含めて無関心なのでしょうか?

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ブレーキ性能の良し悪しは命に直結します

クルマを購入するときに、室内の広さやエンジンの出力などを気にする人は多いですが、ブレーキの性能について気にする人はほとんどいません。

多少室内が狭くても、そのことが命にかかわるようなことにはなりません。

同様にエンジンの性能が良くなくても、それが危険につながるということもありません。

現在の国産車は、かつてのクルマのように、エンジンの加速性能が悪すぎて高速道路の合流や追い越しのときに危険を感じるというようなことは基本的にないわけです。

しかし、ブレーキというのは、命に直結する部分です。

仮にエンジンが壊れたとしても、クルマが走らなくなるだけですから、命が危険にさらされることはありません。

ここが飛行機やヘリコプターなどの空を飛ぶ乗り物と、クルマの大きな違いです。

ところが、走行中にクルマのブレーキが壊れたら、それこそ死を覚悟しなければならない状況になります。

クルマを運転するあなたの命を守ってくれるのは、エアバッグなどの安全装備だけではありません。

クルマにとって一番安全に直結する装置がブレーキなのです。

まずは、ぶつからないためのブレーキの性能こそ、車にとって一番重要な指標といえるのです。

ドイツ車のホイールが汚れやすい理由

紺色のBMWメルセデス・ベンツやBMWなどのドイツ車は、国産車にくらべてブレーキ性能が格段に良いといわれています。

速度制限のないアウトバーンのあるお国柄ですから、メーカーもブレーキの性能にはこだわりがあるに違いありません。

ドイツ車は、ホイールがブレーキダストですぐに汚れてしまうといいますが、これはとりもなおさずブレーキ性能がいいことの証明です。

ドイツ車は制動力を高めるために、ブレーキパッドに「ロースチール系」の素材を使っているので、どうしてもホイール周りに削り取られたブレーキダストがたまってしまうわけです。

「ロースチール系」の素材を使ったブレーキパッドは、国産車で主に使われている「NAO系」の素材を使ったブレーキパッドにくらべてブレーキ性能が高い反面、素材自体が高額なだけではなくブレーキパッドの減りも早くなります。

また、「ロースチール系」の素材を使った場合、ブレーキパッドだけではなく、ディスクロータの摩耗も早くなります。

ドイツのメーカーには、命にかかわるブレーキの部分には、コスト的に妥協をしないというポリシーがあるのでしょう。

また、「ロースチール系」のパッドを使ったときのもう一つの特徴として、「NAO系」のパッドにくらべて耐熱性に優れているという点があげられます。

ブレーキというのは、発熱することでどんどん効きが悪くなってきます。

ながい下り坂が続くような道では、なるべくエンジンブレーキを使って、フットブレーキを使いすぎないようにしましょうといわれるのは、ブレーキを踏み続けることで発熱してしまって、制動力が大幅に落ちてしまうからなのです。

確かに日本ではアウトバーンのような超高速で走れる道路はありませんが、地形的に坂道は多いですし、下り坂であってもAT車をDレンジのまま走らせる人も多く、エンジンブレーキをあまり使わないためにフットブレーキへの負担はどうしても大きくなります。

もし下り坂の途中で、ブレーキが効かなくなったらと想像すると、誰でもゾッとするはずです。

消費者がもっとブレーキ性能に関心を持たないことには、メーカーとしてもブレーキにコストをかけても注目されることがないので、どうしてもコスト優先になってしまうのかも知れません。

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ミニバンこそ高性能なブレーキを装備すべし

トヨタノアの右下部分クルマに限らず、物体の重さが大きければ大きいほど、ブレーキングしたときの制動距離は長くなります。

踏切事故を起こした列車がすぐに止まることができずに、しばらく線路上を滑走してしまうのは、その重さゆえに慣性力が強く働くからです。

クルマの場合も、クルマの重量が重くなれば当然止まりにくくなるわけですから、より高性能なブレーキが必要になってくるわけです。

重量のあるクルマといえば、最近とくに人気になっているミニバンです。

本来であれば、ミニバンこそ高性能なブレーキを装備すべきなのです。

国産車の場合、スポーツカーなどには性能の高いブレーキが取り付けられることが多いようです。

確かにスポーツカーという性質上、走ることと止まることの性能にはこだわりがあるのかも知れませんが、重さという点で考えるとスポーツカーはミニバンなどとくらべるとはるかに軽量です。

また、たとえスポーツカーといえども、日本国内においての制限速度は高速道路でも100kmまでとなっています。

公道を走るという条件ではまったく同じなのに、車体が軽くてブレーキ性能のいいスポーツカーだけが圧倒的に制動能力が高くなっているわけです。

よくスポーツカーは危険だなどと言う人がいますが、実はそれは大きな間違いで、より確実に止まれるという観点からみれば、スポーツカーほど安全なクルマはありません。

参考記事:スポーツカーが危険な車というのはウソ?~本当は一番安全です

むしろ、大きなボディにもかかわらず、ブレーキ性能にこだわりを持っていないミニバンこそが危険な車だということがいえるでしょう。

しかも、ボディサイズが大きい分、事故を起こしたときには対人であれ対物であれ、相手に大きな被害を与える可能性があります。

それにもかかわらず、現在でもディスクブレーキは前輪だけで、後輪にはドラムブレーキを採用しているミニバンが多いようです。

ディスクブレーキよりも、ドラムブレーキを使った方がコスト的には安く済むからです。

ブレーキング性能よりも、コストを優先させているわけです。

一部の上級ミニバンやホンダなどのブレーキにこだわりをもつメーカーなどは、4輪ともディスクブレーキを採用しているようですが、どう考えてもここはコストを優先すべき部分ではないような気がします。

ぜひ各自動車メーカーには、車両重量があってたくさんの人を乗せることの多いミニバンにこそ、高性能なブレーキを装着してもらいたいものです。

そして、これから車を購入する人には、ブレーキにもっともっと関心を持ってもらいたいと思います。

カタログの主要諸元表を見てもブレーキ性能に関する記述はありませんが、リアブレーキがディスクなのかドラムなのかくらいは簡単に判断できます。

ブレーキにコストをかけた車がどんどん売れるようになれば、メーカーも考えざるを得なくなることでしょう。

文・山沢 達也

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