「買取り専門店に持ち込んだら査定が0円だといわれた車を、ディーラーに下取り車として持ち込んだら5万円で引き取ってくれた」
などという話をよく耳にします。
一般に、ディーラーよりも買取り専門店の方が高額査定になりやすいといわれていますが、逆に廃車寸前の低年式車や過走行車をディーラーに持ち込んだ場合は、買取り専門店よりも高くなることがあるようです。
なぜ、ディーラーでは廃車寸前の車に5万円の下取り価格を提示できるのでしょうか?
車をほとんど見ないで下取り額を提示してくる
10年落ちで走行距離が17万kmを超えており、カスタムのために配線をいろいろと改造した結果、ウインカーがときどき点灯しなくなるというまさに廃車寸前のクルマを、新車購入時の下取り車としてディーラーで5万円で引き取ってもらったという事例があります。
しかも、車検証と走行距離を確認しただけで、車そのものはほとんど見ないで金額を提示してきたようです。
また、メーターが故障していてシートには穴が開き、リサイクル料が未納といった状態のクルマでも、ディーラーが3万円で下取りしてくれたという別の事例もあります。
しかも未納であったリサイクル料までディーラーで負担してくれるという太っ腹ぶりです。
この事例の場合も、車検証だけを見て実際にはクルマをまったくみないで3万円の下取り額を提示してきたようです。
この2つの事例のように、車をほとんど見ないで金額を提示しているということは、ディーラーはこういった状態の車を下取りした後に、中古車として販売することはあまり考えていないということが推測できます。
ディーラーの目的はどこにあるのでしょうか?
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下取り額を提示することでお客を囲い込む作戦
廃車寸前の車に乗っている人が、新車に乗り換えようとしているときに、下取り額にはほとんど期待はしていないはずです。
自分で廃車の手続きをするのも面倒だから、タダでもいいから引き取ってもらえたらいいと考えている人も少なくないでしょう。
そんな心理状態のときに、ディーラーから「下取り額は5万円です」といわれたらどうでしょう。
なんだか得した気分になって、そのディーラーの担当者に親近感を持つと思います。
ましてや、買取り専門店で「0円です」といわれた車だったりすると、たかが5万円とはいえ高額査定に感じてしまうに違いありません。
まさに、そこがディーラーのねらい目なのです。
ディーラーは、値のつかないような状態のクルマであっても、下取りとして3万円とか5万円の金額を提示することでお客様の囲い込みを狙っているわけです。
廃車になってもおかしくない車に5万円の下取り額が提示されたことで気分を良くしたお客様が、そのままその店で新車を購入する確率が高くなるということを、ディーラーの営業マンは知っているのです。
ディーラーは下取り車で利益を出す必要はない
買取り専門店の場合には、引き取った車を中古車市場に流通させて利益をあげなければなりませんから、買取りをしてもメリットがないと判断した車に対しては「0円」の提示をしてくるのは当然です。
しかし、ディーラーの場合は違います。
ディーラーというのは、あくまでも新車を売るのが本来の目的であって、下取りというのはあくまでも新車を購入するお客様に対するサービスの一環で行っているという側面もあるわけです。
下取りをした車で利益を出すことができなくても、新車を購入してもらってそこから利益がでればまったく問題ないわけです。
新車が売れれば、さらにアフターサービスなどで継続的にそのお客様からの利益が期待できます。
仮に下取りをしたクルマを廃車処分にするしかないとしても、現在では鉄スクラップの単価が高いこともあって、3万円や5万円程度であればほとんど相殺できてしまう可能性もあるのです。
参考記事:中古車の買取り保証~どんなオンボロ車でも必ず買取れる理由とは?
そこが、引き取った車で必ず利益を出すしかない買取り専門店とディーラーとの大きな違いになるわけです。
0円でも5万でも最終的にお客様の懐から出るお金は同じ?
廃車寸前の車に5万円という下取り額を提示して、お客様にお得感を抱かせて新車購入にむすびつけるのが、ディーラーの営業手法であるというお話をさせていただきました。
ところが、実際にはお客にとってはお得でもなんでもなく、最終的には自分の懐から出て行くお金は変わらない可能性があるのです。
どういうことかといいますと、ディーラーの場合は、新車の販売価格でいくらでも利益の調整をすることが出来るのです。
たとえば、廃車にする予定の車を5万円で引き取ったとしても、まるっきり5万円がマイナスになるわけではなく、鉄スクラップとして売却する分である程度は相殺できます。
仮に、5万円すべてが持ち出しになったとしても、その程度の金額であれば新車の値引き額で簡単に調整できることになります。
本来20万円まで値引きが可能な新車の場合、値引き額を15万円という形で新車の見積もりを作成すれば、トータルの金額は同じになります。
つまり、5万円の下取り金額というのは、あくまでも新車の値引き金額の1部ということになるわけです。
そう考えると、最終的にはお客様の懐から出て行くトータルの金額は変わらないことになります。
お客様にしてみれば、そういった事情を知らずに単純に「5万円得した」と思っていた方がある意味幸せかも知れませんね。
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