軽自動車はいま大変な人気となっています。
2014年の新車販売台数に軽自動車が占める割合は、4割を超えています。
つまり、新車の10台に4台が軽自動車ということになります。
いまや軽自動車がいかに人気になっているかが、この数字からもはっきりとわかることでしょう。
新車が売れているということは、当然中古車市場においても軽自動車は大人気です。
人気があるということは、すなわち高く売れるということになります。
高く売れるということは、中古車市場での買取り価格も高くなるということになります。
いま乗っている軽自動車を売る予定のある方は、大いに期待をしていいと思います。
なぜ軽自動車が人気になっているのでしょうか?
新車の販売台数の4割を占めるほど軽自動車が売れている理由は、どこにあるのでしょうか?
売れているからには、何かそれなりの理由があるはずなのでその辺の事情を探ってみましょう。
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軽自動車はけっして安い車ではありません
軽自動車が安いから売れていると思っている人がいたら、大間違いです。
軽自動車はけっして安い車ではないのです。
たとえば、ホンダのN-WGNで最上級グレードのGターボパッケージの場合、メーカー希望小売価格が税込みで1,553,143円となっています。
一方、同じホンダの普通車であるフィットの価格を見てみましょう。
一番ベーシックグレードで排気量が1300ccの13Gで見てみますと、メーカー希望小売価格は1,299,800円です。
N-WGNの最上級グレードと比較すると、普通車であるフィットの方が25万円以上も安いのです。
排気量が軽自動車の2倍もあるのに、値段は25万円も安いという摩訶不思議なことになっています。
ちなみに、フィットの1300ccモデルで最上級グレードである13G・Sパッケージの値段を見てみますと、メーカー希望小売価格が1,659,000円となっています。
この場合でも、N-WGNにくらべて10万円程度高いだけです。
最上級グレード同士でくらべてみても、排気量が2倍もあるフィットとN-WGNではわずか10万円の値段の差しかないのです。
このことからも、軽自動車はけっして安くはない、ということがお分かりかと思います。
参考記事:中古車を買うなら軽自動車よりもコンパクトカーの方が断然お得
自動車税が安いというメリットがある?
軽自動車に乗るメリットとして、自動車税が安いことを理由に挙げる人がいます。
それでは、実際にフィットとN-WGNを5年間乗った場合に、どれくらいの支払額の差になるのでしょうか?
自動車税は、購入時だけではなく毎年5月に収めることになります。
最初は新車登録した月から月割りで計算されるのですが、ここでは話を分かりやすくするために4月1日新車を登録したことにします。
また、グリーン化による軽減税もあえて考慮しないで計算してみます。
N-WGNは軽の自家用車という区分になりますので、10,800円が課税になります。
もともとは7,200円だったのですが、2015年の4月より10,800円が適用されることになりました。
あまりの軽自動車の売れ行きぶりに、政府も売れるところから税金をとろうという発想なのでしょうか。
一方フィットの場合ですと、普通乗用車の自家用で1000cc超から1500cc以下が適用になりますので34,500円となります。
10,800円と34,500円ですから、その差額は23,700円ということになります。
これが毎年かかりますので、5年間のトータルで計算しますとフィットよりもN-WGNの方が118,500円安くなることになります。
2015年4月より税率がアップしたとはいえ、やはり軽自動車と普通車の税金の差は馬鹿にならない金額であることが分かります。
軽は燃費がいいのでガソリン代が浮く?
軽自動車は燃費がいいので、ガソリン代が浮く分トータルの維持費が安くなるといった話もよく聞きますが、本当でしょうか?
ちなみに、フィット13G・Sパッケージ(2WD)のJC08モード燃費は24.2km/Lとなっています。
一方でN-WGNのG・ターボパッケージ(2WD)のJC08モード燃費は26.0km/Lとなっており、フィットとくらべてほとんど燃費の差がありません。
これは、N-WGNのG・ターボパッケージのエンジンがターボであることが影響していると思われます。
これがノンターボであるG・Aパッケージ(2WD)の場合ですと、JC08モード燃費は29.2km/Lとなり、N-WGNに5.0km/Lほどのアドバンテージがあることになります。
しかし、これはカタログデータであり、実際の走行にあたってはそれほど差はないと思われます。
燃費の情報サイトなどでみても、N-WGNのノンターボで15.0km/L~17.0km/L程度というのが実用燃費のようです。
同じく情報サイトでフィットの実用燃費を見てみますと、やはり15.0km/L~17.0km/Lというデータが一番多く、ほとんど差がないようです。
最近のコンパクトカーの燃費が飛躍的に伸びているのに加えて、軽自動車の場合排気量が小さいために、スタートの時などにどうしてもアクセルを開け気味になるので、思ったほど燃費が伸びないのでしょう。
いずれにしましても、軽自動車に乗ることでガソリン代が浮くというメリットはほとんどなさそうです。
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車検の費用を比較してみましょう
自動車税ではコンパクトカーと比較して5年で10万円以上の差がでることが分かった軽自動車ですが、ガソリン代ではほとんど差がないことが分かりました。
それでは、車検の費用はどうでしょうか?
車検のコバックの料金表で比較してみましょう。
車検料に自賠責保険や重量税、印紙代などを含めたトータルの金額で、軽自動車の場合は43,570円となっています。
一方でフィットが対象となる小型乗用車の場合ですと、54,840円となり、その差額は1,1270円ということになります。
車検は基本的に新車登録から3年後と、そのあとは2年ごとに受けなければなりません。
車に5年乗って売却する場合には、たった1回しか受けないということになります。
そうなりますと、この車検代の1,1270円という差額に関しても、軽自動車オーナーにとってはそれほど魅力的なメリットとは感じられないでしょう。
保険代の差額はどれくらい?
車に乗る以上、万が一のことを考えて保険に加入するのは常識ですが、保険代も結構ばかにならない金額になります。
実際に、軽自動車とコンパクトカーで保険代金にどれほどの差がでるものなのでしょうか?
34歳で13等級の人が、車両保険なしで、対人対物無制限及び人身傷害5,000万円というシンプルな条件で、ある保険に入ったと仮定して比較してみましょう。
この条件で見積もりを取るとフィットの場合の年間の保険料が25,810円、同じくN-WGNの保険料が25,680円となりました。
驚いたことに、ほとんど差がありません。
このことから、保険料に関しては軽自動車を乗ることのメリットにはならないということが分かります。
結局トータルではどちらがお得なのでしょうか?
これらの維持費や車両価格を考慮した場合、トータルではどちらがどれだけお得になるのかを考えてみたいと思います。
5年間乗った場合と10年間乗った場合で比較をしてみましょう。
5年間のトータル維持費と車両価格でどれだけの差が出るのか
それでは、個別に計算したそれぞれの維持費をもとに、フィットとN-WGNを新車で購入して5年間乗った場合のトータルコストについて計算してみましょう。
ガソリン代と保険料にはほとんど差がないことが分かりましたので、ある程度差がでた自動車税と車検代のみで比較をしてみましょう。
フィット:自動車税172,500円+54,840円=227,340円
N-WGN:自動車税54,000円+43,570円=97,570円
その差額は227,340円-97,570円=129,700円となります。
フィットの1300ccの最上級グレードである13G・Sパッケージのメーカー希望小売価格が1,659,000円とN-WGNで最上級グレードのGターボパッケージのメーカー希望小売価格1,553,143円の差額が105,857円ですから、維持費との車両価格の差額を考慮するとトータルで235,557円ほどN-WGNの方がお得ということになります。
しかし、5年間のトータルで235,557円程度の差であれば、排気量もボディーも大きくゆとりのあるフィットに乗った方がいいのと考える人がいてもおかしくないでしょう。
月額にするとわずか4,000円弱の違いでしかありませんから。
10年乗った場合の差額は月額に直すとわずか3,000円
ちなみに、10年乗った場合はどうでしょうか。
フィット:自動車税310,500円+219,360円=529,860円
N-WGN:自動車税97,200円+174,280円=271,480円
その差額は、529,860円-271,480円=258,200円となります。
維持費との車両価格の差額を考慮するとトータルで364,057円の差が生じます。
金額的には大きな差のように感じますが、車両本体の差額は5年でも10年でも計算上は同じなので、月額に換算するとわずか3,000円ほどの違いしかありません。
人それぞれ価値観が違いますので一概には言えませんが、月額に換算して3,000円の違いで、軽自動車に乗るか余裕のあるコンパクトカーのどちらを選ぶかということになります。
本来であれば車両価格や維持費だけではなく、リセールバリューなども考慮すべきですが、中古車市場で人気を考えた場合軽自動車に負けず劣らずフィットも人気がありますので、リセールバリューにも大きな差は生じないと考えていいでしょう。
まとめ
10年乗った場合の、月額の差が3,000円程度というのは意外だったのではないでしょうか。
軽自動車は維持費がかからず車両本体も安く、ものすごくお得な車というイメージを持っていた人も多いと思います。
そういったイメージを持っている人が多いことが、いまの軽自動車人気につながっているのだと思います。
しかし、2015年4月に7,200円から10,800円に引き上げられた自動車税や、最近のコンパクトカーの驚くべき低燃費を考えた場合、軽自動車はもはや思ったほどお得な車ではないといっていいかも知れません。
近い将来多くの人がそのことに気が付いた時点で、いまの軽自動車人気に陰りが見えてくる可能性は十分にあるといえるでしょう。
文・山沢 達也
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