日本国内で走っている乗用車のうち、3台に1台が軽自動車だといわれています。
特に交通機関の発達していない地方になると、1世帯あたりで何台もの車を所有することがあたり前になっていますが、セカンドカーとして軽自動車を所有することが多くなっているようです。
これほど軽自動車が売れている背景には、「車両本体価格が安くて維持費もかからない」というイメージがあるからだと思いますが、本当に軽自動車は多くの人が思っているほどお得なのでしょうか?
実際、中古車の販売価格などをみると、軽自動車は人気があるゆえになかなか値段が下がらず、むしろコンパクトカーの方が、圧倒的にお買い得感が高くなっているようです。
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日本では2世帯に1世帯の割合で軽自動車を所有している?
平成27年のデータによると、佐賀県、鳥取県、長野県、山形県、島根県、福井県といった地域では、世帯数の数よりも軽自動車の所有台数の方が多くなっています。
つまり、平均して1世帯あたり1台以上の軽自動車を持っているということになります。
全国的にみても、世帯当たりの軽自動車の所有率は50%を超えています。
つまり、日本全国の2世帯に1世帯以上は軽自動車を所有しているということになるわけです。
軽自動車の所有率は年々高くなっており、昭和50年には100世帯あたりの軽自動車の所有台数はわずか18台でした。
それが平成10年には39台となり、平成27年にはとうとう54台と半数以上の世帯で軽自動車を所有するようになっているのです。
これほど人気になっている軽自動車ですが、コンパクトカーとくらべた場合、室内の広さや走行性能などでは明らかに負けています。
また、中古車市場では価格的にも、軽自動車よりもコンパクトカーの方が安くなっていることが多いようです。
それでも、多くの人が軽自動車を買う理由はどこにあるのでしょうか?
5年落ちの軽自動車とコンパクトカーの販売価格を比較
中古車の販売価格が、コンパクトカーの方が軽自動車にくらべてお得感があるといってもピンとこない人も多いと思いますので、実際にカーセンサーなどで公開されている5年落ちで走行距離が5万kmの中古車で、それぞれの価格の違いを比較してみたいと思います。
・5年落ち5万kmのダイハツムーヴの乗り出し価格
2011年式ダイハツムーヴのカスタムGで、ナビ装着車の販売事例を紹介してみたいと思います。
走行距離は5万3000kmと、年式相応だと思います。ボディカラーはブラックで、もちろん修復歴はありません。
このムーヴの本体価格が79万8000円で、諸経費を含めた乗り出し価格が88万8000円となっています。
人気のムーヴとはいえ、5年落ちで乗り出し価格が88万円というのは結構な値段ですね。
もう一台、2011年式のダイハツムーヴを見てみましょう。
こちらのグレードはカスタムRSとなり、若者に人気のスポーツモデルです。
カラーは人気の高いパールホワイトで走行距離は5万6000kmと年式相応かやや走り込んでいる印象です。
こちらも修復歴はありません。
このダイハツムーヴの本体価格は85万円で、諸経費を含めた取り出し価格は92万円となっています。
こちらも先ほどの事例と同様に、5年落ちの軽自動車として考えた場合は、決してお得感はないと思います。
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・5年落ち5万kmの日産マーチの乗り出し価格
コンパクトカーの事例として、2011年式の日産マーチを取り上げてみたいと思います。
グレードは12SでワンセグTVナビが装着されています。
ボディカラーはナイトベールパープルとなっており、走行距離はちょうど5万kmです。
このマーチの本体価格が58万円で、諸経費を含めた乗り出し価格が69万4000円となっています。
先ほどのムーヴとくらべると、だいぶ割安感を感じることでしょう。
もう一台2011年式マーチの事例です。
こちらのグレードは12Xで、テレビ&ナビ付きとなっています。
ボディカラーはシルバーで、走行距離は5万7000kmです。
このマーチの本体価格が39万8000円となっており、乗り出し価格は車検の取得費込みで59万8000円となっています。
先ほどの、ほぼ同じ条件のダイハツムーヴの乗り出し価格が88万8000円と92万円だったことを考えると、日産マーチの割安感はかなり高いといえるでしょう。
イメージ的には、ムーヴにくらべて20万円~30万円安い感じです。
これだけの価格差があるとなると、維持費が安いという軽自動車のメリットも、それほど感じなくなってしまうかも知れません。
4年乗った場合で維持費はどれだけ差が出るのか?
5年落ちで5万kmのダイハツムーヴと日産マーチの乗り出し価格をくらべた場合、コンパクトカーである日産マーチの方が20万円~30万円安いということが分かりました。
それでは、軽自動車の一番のメリットといわれる、維持費で見た場合はどうでしょうか?
ダイハツムーヴと日産マーチを4年間乗った場合の、実際の維持費を比較してみましょう。
・燃費にはそれほど大きな違いはない
維持費で一番気になるのが、ガソリン代でしょう。
イメージ的には、排気量が1200ccのマーチにくらべて660ccのムーヴの方が燃費的には断然よさそうな感じがしますが、実際にはそうでもないようです。
2011年モデルのマーチの上級グレードが10・15モード燃費で26km/Lとなっているのに対して、ムーヴの2011年モデルの10・15モード燃費は27km/Lとなっており、ほとんど差はありません。
エンジンが小さい分、高回転を利用して走ることの多い軽自動車は、コンパクトカーとくらべて燃費の面でのアドバンテージはそれほどないようです。
・軽自動車とコンパクトカーの税金はどれほど違うのか?
それでは、軽自動車が圧倒的に優遇されているといわれる税金が、コンパクトカーとくらべてどれほどの違いが生じるのかをみていきましょう。
まず、車を所有している人に毎年支払いが義務付けられている自動車税でみてみましょう。
日産マーチの場合は1年あたり34,500円ですから、4年で138,000円ということになります。
一方で軽自動車であるダイハツムーヴは1年あたり10,800円ですから、4年で43,200円ということになります。
次に車検ごとに支払う必要のある重量税ですが、マーチの場合は15,000円となります。
4年間で2回支払うことになりますので、トータルで30,000円になります。
それに対してムーヴの場合は、2年ごとに6,600円となりますので、4年のトータルで13,200円となります。
自賠責保険料は、マーチが2年ごとに車検時に27,840円支払うのに対して、ムーヴは26,370円で、こちらに関してはほとんど差がありません。
これらを総合的にみてみますと、やはり軽自動車に乗ることで大きなメリットを感じるのは自動車税で、ムーヴとマーチの差は4年間で94,800円となります。
一方で、重量税に関しては、それほどのインパクトはなく4年間での差は16,800円となります。
自動車税と重量税を両方合わせた差額は、4年間で111,600円ということになります。
本当に軽自動車はお得なのか?
今回は、単純に軽自動車であるダイハツムーヴとコンパクトカーである日産マーチの5年落ち中古車を単純に比較してみたわけですが、軽自動車を購入するメリットはあまり感じられませんでした。
5年落ちのクルマを購入して4年間乗ると仮定した場合、維持費的には軽自動車の税金が111,600円少なくなるというメリットはありましたが、ガソリン代や自賠責保険料にはほとんど差がないということも分かりました。
5年落ちで5万kmのムーヴとマーチを比較した場合、乗り出し価格に20万円~30万円の違いがありましたので、少なくとも購入後の4年間では、その差はぜんぜん埋められないということになるわけです。
つまり、車の購入費と4年間の維持費をトータル的に考えた場合、ムーヴの方が10万円~20万円ほど割高になるわけです。
エンジンの排気量が2倍近くあり、ボディサイズも大きなコンパクトカーの方が、トータル的に考えて明らかに割安なのです。
それなのに、なぜか軽自動車が人気になっており、ずっと売れ続けているのです。
なんとも不思議な、自動車業界の七不思議のひとつといってもいいかも知れません。
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