クルマを所有していると、毎年5月にあまりうれしくない通知が届きます。
そうです。自動車税の納税通知書です。
地方に行くと、大人ひとりに対してクルマ1台があたり前の地域も少なくありませんので、春先になるとクルマの税金のことで憂鬱になる人もいるに違いありません。
ちなみに、自動車税というのはエンジンの排気量によって納税額が決められています。
つまり、エンジンの大きいクルマは自動車税が高く、エンジンの小さいクルマは少ない納税額で済むことになります。
そこで、ふと疑問になるのがエンジンを持たない電気自動車の納税額です。
電気自動車というのは当然のことながらエンジンがありませんから、排気量で納税額を決めるという一般的なやり方が通用しません。
また、同じ排気量のエンジンであっても、ターボ車などはあきらかに排気量の大きいクルマの同等の動力性能を発揮します。
ターボ車の納税額も、単純にエンジンの排気量できまるのでしょうか?
ここでは、そういった自動車税の納税額の疑問について考えてみたいと思います。
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ランドクルーザーの納税額は8万8千円にもなります
自動車税の納税額というのは、単純に排気量できまります。
乗用自家用車の場合、自動車税の納税額は次のようになっています。
●1リットル以下・・・・・・・・・・・・・・29,500円
●1リットル超~1.5リットル以下・・・・・・34,500円
●1.5リットル超~2リットル以下・・・・・・39,500円
●2リットル超~2.5リットル以下・・・・・・45,000円
●2.5リットル超~3リットル以下・・・・・・51,000円
●3リットル超~3.5リットル以下・・・・・・58,000円
●3.5リットル超~4リットル以下・・・・・・66,500円
●4リットル超~4.5リットル以下・・・・・・76,500円
●4.5リットル超~6リットル以下・・・・・・88,000円
●6リットル超~・・・・・・・・・・・・・111,000円
これをもとに見ていきますと、排気量が996ccのトヨタヴィッツの自動車税が29,500円なのに対して、排気量が4608ccのランドクルーザーの自動車税は88,000円ということになります。
排気量の大きいクルマというのは、燃費も悪いですからガソリンをたくさん消費します。
ガソリンの価格には、石油税やらガソリン税やら消費税といったさまざまな税金が含まれています。
しかもこの税額がハンパではなく、ガソリン価格の半分近くが税金です。
たとえば、ガソリンの価格が1リットルあたり150円だとすると、その中には68円の税金が含まれていることになります。
つまり、排気量の大きなクルマに乗っている人は、自動車税をたくさん納めているだけではなく、ガソリンを経由してたくさんの税金を納めている優良納税者ということになるわけです。
1989年以前の3ナンバーは自動車税がものすごく高かった!
単純に排気量によって自動車税の納税額が決められるようになったのは、1989年以降のことです。
それまでは、3ナンバーの自動車税は驚くほど高額でした。
全長4.7m、全幅1.7m、全高2m、排気量2000ccのいずれか1つの項目でもオーバーすると3ナンバーということになり、5ナンバーとくらべて自動車税の納税額が一気にアップしたのです。
当時の自動車税額は次のように決められていました。
改正前の5ナンバーのクルマの自動車税額
●1リットル以下・・・・・・・・・・・・・・29,500円
●1リットル超~1.5リットル以下・・・・・・34,500円
●1.5リットル超・・・・・・・・・・・・・・39,500円
改正前の3ナンバーのクルマの自動車税額
●3リットル以下・・・・・・・・・・・・・・81,500円
●3リットル超~6リットル以下・・・・・・・88,500円
●6リットル超 ・・・・・・・・・・・・・・148,500円
改正前の税額を適用するとプリウスの自動車税額は81,500円になります
もし1989年に自動車税の改正が行われずにそのままの税制が適用されていると仮定した場合、プリウスの自動車税は81,500円となってしまいます。
なぜなら、プリウスの全幅は1,760mmとなっており、1700mmを超えているからです。
プリウスの排気量は1800ccしかありませんが、車幅が広いために3ナンバーとなっているわけです。
1989年以降は、5ナンバーとか3ナンバーに関係なく、単純に排気量で自動車税額が決められることになりましたので、現在のプリウスの自動車税額は「1.5リットル超~2リットル以下」が適用されて、39,500円となっています。
昭和の世代の人たちの間で「3ナンバーはお金持ちの人が乗るクルマ」というイメージがあったのは、5ナンバーのクルマにくらべて自動車税額がものすごく高かったからです。
そういった意味では、最近は3ナンバーがだいぶ庶民的になったといえそうです。
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エンジンのついていない電気自動車の自動車税額は一番安い29,500円
現在の自動車税の納税額が、単純に排気量で決められているということがお分かりになったかと思いますが、それではエンジンのついていない電気自動車の自動車税額はどうやって決められるのでしょうか?
エンジンがない以上は、排気量を算出することができません。
そのため、現行法上は電気自動車の場合は単純に「0cc」として税額を算出することになります。
つまり、エンジンがないわけですから、排気量はゼロccです。
その結果、「1リットル以下 29,500円」という税額が適用されることになるのです。
ちなみに日産のリーフは、全幅が1,790mmありますので、堂々とした3ナンバーのクルマです。
3ナンバーであるにもかかわらず、電気自動車の場合は乗用車としては最低の税額で済んでしまうということになります。
また、リーフに搭載されているモーターは最高出力が150ps、最大トルクが32.6kgもあります。
単純には比較できませんが、ガソリン車であれば2500ccクラスのクルマに匹敵する性能です。
2500ccクラスのガソリン車だと45,000円の自動車税を納めることになりますから、日産リーフの自動車税が29,500円というのは車格に対してかなり安いということになります。
自動車税の改正が行われた1989年当時は、電気自動車が普及することを想定しなかったために、単純に排気量で納税額を決めてしまったのでしょう。
法律がそうなっている以上は、3ナンバーで2500ccクラスの動力性能をほこる日産リーフの自動車税が29,500円であっても誰も文句は言えないことになります。
今後、電気自動車が普及してくると、法改正が行われる可能性はあります。
ダウンサイジングターボも性能で考えると自動車税は格安です
最近では、排気量を小さくしたうえでターボチャージャーによって十分な出力を得る「ダウンサイジングターボ(小排気量ターボ)」と呼ばれるクルマが増えています。
参考記事:ターボ車なのに低燃費ってどういうこと?~小排気量ターボの魅力
ダウンサイジングターボは、ターボチャージャーによってパワーアップを目的としたものではなく、エンジンの排気量を小さくすることで低燃費化を狙っています。
たとえば、自然吸気で2000ccクラスのクルマに、1500ccのダウンサイジングターボエンジンを搭載するといったことが行われています。
ホンダのステップワゴンも4代目までは自然吸気の2000ccエンジンを搭載していましたが、5代目になって1500ccのダウンサイジングターボを搭載するようになりました。
その結果として、4代目の燃費が10・15モードで14km/Lだったのに対して、5代目のステップワゴンンの燃費はJC08モードで15.4km/Lとなっています。
JC08モードは10・15モードにくらべて1割ほど低い数字になるといわれていますので、ダウンサイジングターボを採用した5代目ステップワゴンは、4代目にくらべて燃費が20%ほどよくなっていると考えられます。
また、排気量が2000ccから1500ccになったからといって非力になったということもありません。
2000ccの4代目ステップワゴンの最高出力が150psだったのに対して、15代目ステップワゴンも1500ccながらターボの力で同じく150psの最高出力を発揮しています。
つまり、ダウンサイジングターボの採用によって、動力性能は変わらずに燃費を20%改善することができているわけです。
そして、排気量が2000ccから1500ccとなったことにより、自動車税も39,500円から34,500円と5000円安くなることになります。
排気量によって納税額が決まるいまの自動車税のルールが変わらない限り、ダウンサイジングターボの納税額は車格に対して相対的に安くなるということがいえます。
文・山沢 達也
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