最近話題になっている車の自動ブレーキですが、あまり過信をするのは禁物だといわれています。
自動ブレーキには、誤動作の問題が常につきまとうからです。
最近も、某新車ディーラーで試乗中に起きた事故が話題になりました。
自動ブレーキ付きのクルマを試乗中に、隣に乗っている営業マンの指示でブレーキを踏むタイミングを遅らせたところ、肝心の自動ブレーキが作動せずに前方に停車していたクルマに衝突してしまったというものです。
この事故で、ディーラーの営業マンと運転手が書類送検されることになりました。
夜間でなおかつ雨が降っているという悪条件であったために、うまく自動ブレーキのシステムが作動しなかったようです。
このように、車の自動ブレーキというのは、あくまでもヒューマンエラーに対する補助手段であり、誤動作を起こす可能性のあることを前提にして運転をしなければなりません。
参考記事:自動ブレーキが搭載されたクルマは本当に安全だといえるのか?
そんな誤動作を起こす可能性のある自動ブレーキですが、実はローダウン(シャコタン)のクルマは特に誤動作を起こしやすいという噂があるようです。
クルマをローダウン仕様にすると、本当に自動ブレーキは誤動作を起こすのでしょうか?
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自動ブレーキ搭載車がやっていはいけないこと
どこのメーカーも、自動ブレーキつきのクルマを運転するにあたって、さまざまな条件を設定しています。
そして、それらの条件を満たしていないと、自動ブレーキが正常に働かない可能性があるとしています。
たとえば、自動ブレーキのなかでも評価の高いスバルのアイサイトですが、取り扱い説明書にはやってはいけないことが本当に事細かに書かれています。
いくつか抜粋して書いてみましょう。
・アイサイト搭載したクルマがやってはいけないこと
●タイヤのインチアップやインチダウン(車高が変わるから?)
●サスペンションの変更・交換(これも車高が変わるから?)
●ルームミラーやサンバイザーを純正意外に変えること(カメラを遮蔽してしまうから?)
●ワイパーブレードの変更や交換(フロントガラスの視界が悪くなる?)
●フロントガラスのステッカーやアクセサリーの貼り付け(カメラの視界に影響?)
●ホイールバランスやアライメントが崩れるようなアルミホイールへの交換
これらの条件を見る限りにおいては、アイサイト搭載車をカスタマイズするというのは、基本的にできないようなイメージです。
・システムをOFFにしなければならないとき
また、アイサイトやプリクラッシュシステムをOFFにする必要がある場合として、こちらもさまざまな条件が提示されています。
●タイヤチェーンを装着したとき(車高が変わるから?)
●タイヤが摩耗しているときや空気圧が正常でないとき(車高が変わるから?)
●重い荷物や多人数乗車などによって車体が傾いているとき
●指定サイズ以外のタイヤを装着しているとき(車高が変わるから?)
●サスペンションを改造したとき(車高が変わるから?)
●定員を超えて乗車しているとき(車高が変わるから?)
●ライト類を改造しているとき(対象物が認識できなくなる?)
これらの他にもまだまだたくさん書かれていますが、これらの条件から分かることは、カメラの視界を遮るような状態であったり、車高が変化をするような状態のときには、自動ブレーキは正常に働かない可能性があるということになります。
カメラの視界を遮ってしまったのでは、対象物を認識できなくなってしまいますから、これは当然のことといえます。
しかし、タイヤが摩耗したり空気圧が正常でない程度の車高の変化で自動ブレーキが働かない可能性があるというのは、条件としてはかなり厳しいのではないでしょうか?
もちろん、メーカーにしてみれば、万が一のことを考えて厳しめの条件にしているのでしょうが、これらの条件を見る限りにおいては、ローダウン(シャコタン)のクルマは絶対にアウトということになりそうです。
いずれにしましても、ローダウンのクルマは自動ブレーキが効かなくなるという噂の根拠は、このようにしっかりとメーカーによって示されていたことになります。
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本当にローダウンのクルマだと誤作動を起こすのか?
システムの誤動作によって大きな事故などにつながったのでは大変ですから、メーカーとしては自動ブレーキ搭載車のカスタマイズは極力やってほしくないというのが本音だと思います。
そして、そういったことを多少大げさなくらいに取扱い説明書に明記することによって、カスタマイズをする人などに対して注意を促しているのでしょう。
取扱い説明書にこのように事細かな条件が書かれている以上、それを無視してカスタマイズをした場合、装置がなんらかの誤動作をした場合であってもすべて自己責任ということになります。
しかし、そうはいってもクルマ好きにとっては、タイヤやホイールを変えたり、ローダウンをしたりすることはカスタマイズの基本ともいえるものです。
自己責任といわれても、やる人はやるに違いありません。
それでは、実際にローダウンをしたクルマが、本当に自動ブレーキの作動に影響があるのかどうかについて考えてみましょう。
実験の結果はほぼ問題なく作動する?
ベストカーという雑誌が実際に行った実験があります。
実験に使った車両はトヨタのヴォクシーです。
スバルのアイサイトとはシステムの方式が異なりますが、メーカーが主張する正常に動作することのできる条件はほぼ同じといっていいでしょう。
実験の方法は、発泡スチロールで作ったダミーの前走車に対して30km/hの速度で近づくというものです。
この方法で、さまざまに車高を変えてみて、実際にヴォクシーの自動ブレーキが働くかどうかをテストしました。
その結果、車検が通るギリギリとなる75mmのローダウン状態であっても、自動ブレーキは正常に動作しました。
この結果から、少なくとも違法にならない範囲でのローダウンであれば、自動ブレーキは問題なく動作することが確認できたことになります。
また、極端な前下がりの姿勢にするために、前輪のサスペンションだけを104mmダウンさせた状態や、逆に前を最大限にアップさせて後ろを90mmダウンさせるという尻下がりの状態であっても、30km/hのスピードから問題なく自動で停車できています。
唯一ダメだったのが、前を最大限にアップさせて、後ろを90mm下げた尻下がり状態で、なおかつ荷台に130kgのウェイトを積んだときでした。
おそらく、フロントが上がりすぎたために、センサーが対象物をキャッチできなくなったのでしょう。
しかし、そんな尻下がりなみっともないカスタムをする人はいないはずですし(そもそも車検に通りません)、その状態で荷台に130kgもの荷物を積んで走るなどということは、まず起こりえないことです。
どうしてもローダウンしたい人はあくまでも自己責任で
このベストカーの実験結果から、少なくとも車検に通る範囲のローダウンであれば、自動ブレーキは問題なく動作しそうだということが分かりました。
しかし、だからといって自動ブレーキつきの車をローダウンしても絶対に大丈夫だということではなく、少なくともベストカー編集部が行った実験の範囲では問題がなかったということになります。
メーカーによって自動ブレーキのシステムは異なりますし、車種の違いによっても結果は変わってくるかもしれません。
もし、自動ブレーキつきの車をローダウンしたい場合には、あくまで自己責任で行うということを忘れないようにしましょう。
文・山沢 達也
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