中古車というのは、以前の持ち主がどんな人でどんな乗り方をしていたのかということが分かりません。
もしかしたら、人を轢いて死亡させてしまったクルマや、車内で排ガス自殺をしたクルマが中古車店の展示場にならんでいる可能性もあるのです。
アパートやマンションなどであれば、事件や自殺などがあった物件は「事故物件」として表示をする義務がありますので、間違って入居をしてしまうということはありません。
しかし、中古車にはそのような表示義務はないのです。
あなたがこれから購入しようとしている中古車が、過去に人を死亡させてしまたったり、車内で排ガス自殺をしたりしたクルマである可能性も十分にあるのです。
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死亡事故を起こしたクルマが「修復歴あり」とは限らない
中古車店の展示場を見ていると、ときどき「修復歴あり」という表示を目にすることがあると思います。
この「修復歴あり」というのは、一般に言われている「事故車」のことであり、過去に事故などを起こしてフレームなどに重大な損傷を受けて修復したことのあるクルマということになります。
そういったクルマは、自動車公正競争規約11条,12条及び施行規則14条により、販売時に修復歴があることを表示する義務があります。
参考:自動車公正競争規約集~一般社団法人自動車公正取引協議会
ただし、過去に事故を起こしたことがあるクルマといっても、軽くボンネットやドアがへこんだくらいでは事故車扱いにはなりません。
参考記事:クルマを売るときに「修復歴あり」で事故車扱いになるのはどの程度のダメージを受けたとき?
そのため、過去に死亡事故を起こしたクルマであっても、そのときのクルマのダメージが少なかったために「修復歴あり」の表示がされずに、普通の中古車としてお店の店頭にならぶ可能性があるのです。
死亡事故というと、クルマが大破するイメージがあるかも知れません。
しかし、横断中の人をはねてしまったような場合には、せいぜいバンパー周りややボンネットが軽くへこんだり、フロントガラスが割れたりする程度で、クルマのフレームが大きなダメージを受けることはまれです。
そのため、きれいに修理をしてしまえば、「修復歴あり」のクルマに該当しませんので、普通の中古車とまったく同じように販売することができてしまうのです。
ましてや、車内で排ガス自殺などがあったクルマの場合には、外観的な損傷はまったくないのが普通ですので、見た目では「いわくつきのクルマ」であることがまったく分からないということになります。
市場に出回ってしまうと一般の中古車とまったく見分けがつきません
クルマ同士の衝突や自爆による衝突で死亡事故につながったようなときには、クルマも大破してしまっているのが普通です。
多くの場合は、そのまま修理をせずに廃車にしてしまうために、そういったクルマが中古車市場に流れてくるケースは少ないと思います。
ところが、横断中の人をはねてしまったクルマや排ガス自殺に使われたクルマなどは、そのまま売却されて中古車店の店頭にならんでしまう可能性は十分にあります。
人を死亡させてしまったクルマをそのまま乗り続ける人は少ないはずでから、修理をして買取り店などに持ち込むことになるでしょう。
また、排ガス自殺に使われたクルマを、遺族が手元に置いておくというのも考えにくいですので、同様に売却されることになります。
業者に買い取られたクルマは、そのまま普通の中古車としてオークションに出品する形で市場に流通することになります。
中古車販売店は、そういったクルマをオークションで落札して店頭にならべることになりますが、そのクルマがそういった「いわくつき」であるということには気がつかないと思います。
つまり、販売しているお店の人も「いわくつきのクルマ」であることを知らずに売ってしまっているわけですから、中古車を購入する一般のユーザーがそれを見抜くというのはほぼ不可能であるといえます。
アパートやマンションであれば、周辺の人に話を聞けば事件や自殺があった部屋であることを知ることができますが、市場に流れてしまったクルマの場合は調べる方法がないのです。
格安で売られている中古車はあやしいと考えるべきか?
「修復歴あり」の表示あるクルマの場合、同程度の一般の中古車にくらべて2割~3割安く販売されています。
ところが、「修復歴あり」という表示がないのにもかかわらず、一般的な相場にくらべてかなり安く販売されている中古車を見かけることがあります。
「そういったクルマこそ死亡事故を起こした車ではないのか?」などと考える人もいるかも知れません。
しかし、相場よりも安く売られているからといって、それが死亡事故を起こしたクルマであると決めつけるのは間違いです。
なぜなら、先ほども書きましたように、中古車販売店が「いわくつきのクルマ」であることを知らずに売っていることが多いからです。
つまり、知らなければ普通の中古車と同様に、一般的な相場で店頭にならべてしまうはずです。
相場より安く売られている中古車は、長期在庫処分など何かほかの理由があると考えた方が自然です。
ただし、オークションを経由せずに、自社で仕入れたクルマをそのまま直販しているようなお店の場合は、事情を知りつつ販売している可能性もあります。
しかし、仮にそういった事情を知っているケースであっても、相場よりも安く売ることはないはずです。
なぜなら、「いわくつきのクルマではないのか?」などと勘ぐられてしまっては、ヤブヘビになってしまうからです。
単純にクルマの値段だけで、「いわくつきのクルマ」かどうかを判断することはできないと考えた方がいいでしょう。
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死亡事故や自殺に使われた中古車を購入しないためには?
ここまで読んでこられてお分かりのように、死亡事故や自殺に使われた中古車を100%見分ける方法というのはありません。
そういったクルマを100%の確率で避ける唯一の方法は、新車を購入することです。
しかし、「いわくつきのクルマに乗るのは絶対にいやだけど中古車を買いたい」という人もいると思いますので、車内で人が亡くなった可能性のあるクルマの判別方法を2つほど紹介してみたいと思います。
ここで紹介するのは、あくまでも車内で人が亡くなった可能性のあるクルマの判別方法で、歩行者をはねて死なせてしまったようなクルマを見分けることはできません。
車内に変なニオイが残っていないかを確認する
排ガス自殺にしても練炭自殺にしても、車内で人が亡くなった場合には、何らかのニオイが残っているものです。
とくに、亡くなってから発見されるまでに日数がたってしまっているときには、いわゆる「死臭」が車内に強烈に残ってしまっている可能性があります。
こういったニオイはそう簡単にはとれません。
プロの業者がどれほど丁寧に車内クリーニングをしたとしても、完全にニオイを取りのぞくというのは難しいはずです。
クルマのドアを開けたときに、明らかに通常ではないニオイを感じたときには、要注意です。
そのクルマがどんなに魅力的に感じても、購入はやめておいた方がいいでしょう。
フロアマットや車内のカーペットが真新しいクルマはあやしい
中古車というのは、外観と同様に内装に関しても年式相応に劣化していくものです。
もし、車内のカーペットやフロアマットだけが真新しいものに変えられていたとしたら、誰もが違和感をおぼえるに違いありません。
なぜ、車内のカーペットやフロアマットだけを新しいものに変えているのか?
クルマ同士の衝突や自爆事故の場合、車内にいる人が大量に出血をしてしまうことがあります。
また、車内で亡くなった人が、失禁をしてしまったりすることもあるでしょう。
そういったケースの場合、カーペットやフロアマットに染みついたシミやニオイといったものはそう簡単にはとれないものです。
そこで、すべてを真新しいものに交換してしまって、購入者に「いわくつきのクルマ」であることに気がつかれないようにするわけです。
不動産の事故物件で、壁紙や畳などをすべて新しいものに交換するのと同じ考えです。
中古車なのに、すべてのカーペットやフロアマットが新品に交換されていたら、要注意と考えていいでしょう。
文:山沢 達也
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