タクシーには大きく分けて2つの種類があることはお分かりだと思います。
組織としてやっているタクシーと個人タクシーの2種類です。
確かにタクシーというのは、お客さんを目的地まで届けるのが仕事ですので、クルマさえあれば組織に属さなくても個人で簡単にできます。
しかし、国土交通省の許可を得ないものがお金をもらってお客様を目的地まで届ける行為は禁止されています。
許可を得ないでそうした「白タク」行為を行うと、3年以下の懲役もしくは3百万円以下の罰金が科せられることになります。
個人がタクシーの業務をするためには、個人タクシーとしての許可を受ける必要があるのですが、これが思った以上にハードルが高いのです。
会社に所属するタクシードライバーの取り分は料金の半分
タクシー会社に勤務している人の場合、完全歩合制の会社だと運転手さんの取り分は50%程度のところが多いと思います。
つまり、お客さんを目的地まで運んで料金が2000円だったとしたら、運転手さんの取り分が1000円、会社の取り分が1000円ということになります。
タクシーを運転している本人に半分しか渡らないなんてひどいと思う人もいるかも知れません。
しかし、会社としても車両の減価償却費やガソリン代、メンテナンス代、保険代、事務所の維持経費などがかかっていますので、ある意味では仕方のないことです。
他の歩合給の営業職などとくらべてみても、50%のフィーというのはむしろいい方であるといえます。
ただ、会社が負担する固定費というのはある程度決まっていますから、運転手さんにしてみれば自分がどんなに頑張っても売り上げの半分を会社に持って行かれることに対して不満のある人もいることでしょう。
それに対して個人タクシーであれば、固定費として最低限かかる経費以上に売り上げた分はぜんぶ自分の収入となりますので、ドライバーのやる気はぜんぜん違ってくるでしょう。
それなら、個人タクシーを自分で始めればいいと思うかも知れませんが、そう簡単にはいかないのです。
個人タクシーを始めるために必要な条件とは
タクシーの運転手になるには2種免許が必要だということは誰もがご存知の通りです。
しかし、2種免許さえ持っていれば誰でも個人タクシーを開業できるかというと、そんな甘いものではありません。
個人タクシーを開業するための条件は、年齢ごとに厳しい基準があります。
・35歳未満の人は10年間無事故無違反の条件を満たす必要があります
35歳未満の人の場合には、タクシー会社に10年以上勤務をして、なおかつ10年間無事故無違反であることが条件になります。
10年間の勤務に関してはなんとかクリアーできそうですが、タクシードライバーとして10年間無事故無違反を続けるというのは、運不運も関係してきますので、かなりハードルは高いといえそうです。
・35歳~40歳未満の人は職業ドライバーとしての10年以上の経験が必要
35歳~40歳未満の人が個人タクシードライバーになるための条件は、申請する営業エリアで職業ドライバーとしての経験が10年以上必要になります。
職業ドライバーというのは、クルマの運転をして給料をもらっている人のことです。
タクシー運転手、バスの運転手、貨物トラックの運転手などが職業ドライバーに該当します。
ただし、貨物トラック運転手などのように、旅客運送以外のドライバーの場合には、経験年数は半分でカウントします。
つまり、貨物トラックの運転だけをやっていた人の場合、20年以上の経験が必要になることになります。
しかも、貨物トラックの運転手を20年やっただけでは個人タクシーのドライバーにはなれません。
タクシーやハイヤーを運転する仕事に5年以上従事した経験があり、なおかつ継続して3年以上働いていることが条件になります。
・40歳~65歳未満の人は過去25年間に10年以上の経験が必要
40歳~65歳未満の人が個人タクシーのドライバーになるためには、過去25年間に職業ドライバーとしての経験が10年以上なければいけません。
35歳~40歳未満のときには、職業ドライバーとしての経験が10年あればよかったのですが、40歳~65歳未満の場合には「過去25年間」という条件が加わっています。
また、35歳~40歳未満のときには申請する営業エリアで10年間の経験が必要でしたが、40歳~65歳未満場合にはその条件は外されています。
そういった条件に加えて、申請する営業区域内で、過去3年以内に2年以上のタクシーやハイヤーの運転手としての経験が必要になるのです。
個人タクシーを始めるのに必要とされる設備資金や運転資金
個人タクシーのドライバーになるためには、かなり厳しいプロのドライバーとしての経験が条件になることがお分かりになったかと思います。
しかし、単純に職業ドライバーとしての経験を満たしてればそれだけで個人タクシーを営業できるのかというと、そうではありません。
経験にプラスして、資金的な面も含めて判断されることになります。
まず、設備資金として80万円以上あることが条件となります。
ただし、80万円以下で必要な設備が整うことが明らかな場合にはこの限りではないとされています。
さらに、設備資金以外に運転資金として80万円以上あることも条件となります。
その他、自動車車庫に必要な資金、保険料といった資金を加味した場合、個人タクシーを開業するためには、200万円程度の資金が必要になるのが一般的です。
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個人タクシーを営業するためのその他の条件
個人タクシーの営業を開始するための条件は、職業ドライバーとしての経験年数や資金計画だけではありません。
たとえば、過去に運転免許証の取り消し処分などの履歴などがあった場合にも、条件を満たすことができません。
また、過去に自動車運転代行業などを営んでいて、営業停止や営業廃止などの命令をうけたものも個人タクシーを開業することはできません。
道路交通法違反に関しても、35歳未満の場合には過去10年間で無事故無違反であることが条件になるというのは、先に述べたとおりです。
それ以外の年齢の人の場合も、申請日以前3年間及び申請日以降に反則金の納付を命ぜられた場合には条件を満たすことができなくなってしまいます。
基本的には交通ルールをしっかりと守って安全運転ができない人は、個人タクシーのドライバーになれないということですね。
個人タクシーの許可を受けるために必要な試験
個人タクシーを開業するためには、さまざまな条件を満たせばそれだけで開業許可がおりるわけではありません。
個人タクシーを開業するための試験に合格をしなければならないのです。
試験は法令と地理の2つがありますが、その両方に合格しなければなりません。
法令試験といっても、すでに第2種免許を持っている人が受験をするわけですから、過去に勉強したことを復習する程度で十分かと思います。
また、地理試験に関しても、自分が申請する営業区域内であれば普段から走り慣れていて詳しいはずですから、それほど難しいと感じることはないでしょう。
最近ではタクシーにカーナビを設置するのは常識ですから、地理の試験はそれほど重要ではないような気がしますが、昔から同じ流れで試験が行われているようです。
ちなみに、個人タクシー試験の合格率は、その年によっても変わりますが、75%~100%程度となっているようです。
そういった意味では、試験に関してはそれほどハードルが高いわけではありません。
むしろハードルが高いのは、職業ドライバーとしての実務経験や無事故無違反を継続するといった条件の方になります。
文・山沢 達也
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