ときどき天皇陛下が皇居のなかを車で走られている様子がテレビで放映されたりします。
天皇陛下がご自身でクルマを運転されるということに驚かれる人も多いと思いますが、1キロほど離れたテニスコートに向かったり、散歩をするために東御苑に出かけたりする際に、皇后さまを乗せてよく運転されるようです。
1992年にペルーのフジモリ大統領が来日した際には、天皇陛下がみずから運転をされて、赤坂御用地内を案内されたこともあるようです。
また、天皇陛下が運転されているクルマの車種が気になる人もいるかと思います。
実は、天皇陛下が運転されているのは、ホンダのインテグラというクルマになります。
現在、ホンダではインテグラという名前のクルマは販売されていません。
インテグラは2006年に販売が終了になっています。
具体的には、どういった車なのでしょうか?
天皇陛下が愛用されているのは1991年製の2代目インテグラ
現在、ホンダのインテグラというと、大型のスクーターのことになります。
しかし、2006年9月まではインテグラという名前のクルマがホンダから販売されていたのです。
天皇陛下がご愛用されているクルマが、まさにそのインテグラということになります。
インテグラというクルマは、1985年に初代のモデルが販売されました。
もともとは「クイント」という車種名だった車がフルモデルチェンジされて「クイントインテグラ」という名称でデビューすることになりました。
そして、4代目が2001年に発売されましたが、2006年9月には販売が終了となり、それ以降はインテグラという名前のクルマは市販されていません。
天皇陛下がご愛用されているインテグラは、1991年製とのことですので、2代目のインテグラということになります。
2代目からは「クイント」が省略されて、ただの「インテグラ」となりました。
当時としてはスタイリッシュで独特なデザインのため「カッコインテグラ」とか、ホンダ独特の吹け上がりのいいエンジンから「調子インテグラ」「気持ちインテグラ」などと呼ばれました。
デザイン的には、横に細長いフロントライトが特徴的です。
日本のクルマが廃車にされるまでの期間は平均13年程度といわれています。
それを考えると天皇陛下が26年間も同じ車に乗り続けられているというのは驚きで、ものを大切にするという陛下のお人柄が感じられます。
天皇陛下が乗られているインテグラはマニュアル車
天皇陛下がご愛用されているインテグラは4ドアの5速MTで、当時の価格が120万円ほどであったそうです。
おそらくグレードはベーシックなRXではないかと思われます。
現在ではAT車があたり前になっていますので、天皇陛下がマニュアル車に乗られているということに驚く人もいることでしょう。
1991年当時に販売される新車のAT車の比率は71%ほどでしたが、まだまだマニュアル車を好む人が3割ほどいたことも事実です。
しかし、当時すでに少数派となっていたMT車を天皇陛下があえて選ばれたということに、クルマに対するこだわりを感じます。
また、80歳をすぎてもなお、操作の複雑なマニュアル車を運転されているということに、陛下の運転技術の確かさを感じさせられます。
最近のクルマではみかけることのないハードトップです
天皇陛下の乗られているインテグラは、排気量が1590ccで、全長4480mm・全幅1695mm・全高1340mmのミドル級のセダンです。
セダンというよりも、厳密にはセンターピラーがなくドアにも窓枠がないハードトップというタイプになります。
ハードトップは、窓を全開にしたときに解放感があるのと、デザイン的にもスタイリッシュになるというメリットがあります。
当時はハードトップの人気が非常に高く、インテグラも当時のホンダのドル箱といってもいいほどよく売れた人気車種でした。
しかし、センターピラーがないことによるボディ剛性などの面から、現在の日本では残念ながらハードトップは姿を消してしまっています。
また、最近のクルマは重量級になっていることが多いですが、この当時のクルマはまだまだスリムでした。
インテグラのベーシックグレードであるRXの車両重量は、わずか1030kgしかありません。
現在ホンダから販売されているグレイスという1500ccのハイブリッド車は、車両重量が1200kgもあります。
82歳の天皇陛下が運転免許証を更新された理由
天皇陛下は基本的に皇居のなかでしかクルマを運転をされません。
公道を走らないわけですから、本来であれば運転免許証は必要ありません。
しかし、2016年1月に82歳の天皇陛下が、運転免許証の更新をされたということで、話題になりました。
高齢者講習にも無事にパスされたとのことです。
皇居のなかでしか運転をしないにもかかわらず、あえて運転免許証を更新されたということは、ある意味では自分自身の運転技術を確認するための挑戦でもあったのでしょう。
また、皇居のなかを走るだけであれば、運転免許証を所持する必要はないのですが、天皇陛下は愛車のインテグラに乗られるときには、必ず運転免許証を携帯されるそうです。
実際に乗車してから運転免許証を忘れたことに気がついて、御所まで引き返したこともあったそうです。
そのような性格の天皇陛下ですから、たとえ皇居のなかであっても運転免許証の更新をせずに車に乗るというのはしたくなかったのでしょう。
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天皇陛下はどこで高齢者講習を受講されたのでしょうか?
一般のドライバーの場合は、高齢者講習というのは指定の自動車教習所で行われることになります。
しかし、天皇陛下が一般の人に交じって教習所に出向いて講習を受けるというわけにはいきません。
そのため、御所内で視力検査などの適性検査を受けられたあと、警視庁の担当者の指導のもとに、愛車のインテグラを使って実技検査に挑まれたようです。
東御所に信号機が持ち込まれ、ウインカーを出して右左折したりバックしたりという基本操作のほか、三角コーンの間をジグザグ走行するなどされたりして、約15分間にわたって実技検査を受けられたようです。
その後、みずからインテグラを運転して御所まで帰られたそうです。
ちなみに、天皇陛下の運転免許の更新は、今回が最後になるとのことです。
運転免許証が失効してしまえば、たとえ公道以外の場所であっても天皇陛下は運転をされないと思いますので、インテグラのお役目が終わる日も近いのかも知れません。
運転免許証を持たれている皇族は意外に多いようです
車を運転する皇族は天皇陛下だけではありません。
意外に皇族の方で運転免許証を所有されている方は多いようです。
秋篠宮さまが若い頃に、黄色いフォルクスワーゲンのビートルに乗られていたことをご存知の方も多いことでしょう。
また、秋篠宮さまの次女である佳子さまも、お住まいの近くの道路を護衛車に囲まれながら運転されていたこともあるようです。
雅子さまも皇室に嫁いだあとになっても、療養先でカローラⅡを運転されていたようです。
天皇陛下の長女である黒田清子さんは、現在は民間の方と結婚されて皇族ではなくなっていますが、結婚をきっかけに運転免許証を取得されたようです。
ときどきマイカーを使って皇居に里帰りされることもあるとのことです。
文・山沢 達也
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