ハイブリッドカーのパイオニアであり代名詞的存在になっているのが、トヨタのプリウスです。
文字通りモーターとエンジンのハイブリッド化によって、驚異的な燃費を実現しています。
そんなプリウスですが、2017年2月にプリウスPHVが発売されることになりました。
PHVというのは、プラグインハイブリッドのことを指します。
普通のプリウスは、エンジンを回すことによって充電をしたり、ブレーキングの際にエネルギーを回収したりして充電をしています。
ところがPHVの場合は、電気自動車のように外部電源を使って充電することが可能になっています。
しかし、プリウスPHVは、ただ単に外部電源から充電できるハイブリッドカーというだけではありません。
普通のハイブリッドカーであるプリウスとは、まったく別のクルマといっていいほどの違いがあるのです。
具体的にどこが違うのかを解説してみたいと思います。
PHVが今後のエコカーの本命だといわれている理由
PHVは、今後の日本においてエコカーの本命になっていく可能性が高いといわれています。
電気自動車のように、充電スタンドや家庭用のコンセントから充電をすることができれば、もともとエコなハイブリッドカーなのに、ますますエコに拍車がかかることになります。
プリウスPHVを一般家庭のコンセントで充電をした場合、1km走るのにかかる電気代は約3円といわれています。
ガソリン車の場合、1リットルあたり20km/h走る低燃費車であっても、ガソリンの単価を130円とすると、1km走るのにかかるコストは6.5円ということになります。
つまり、車をPHV化することによって、これまでのハイブリッドにくらべてますますランニングコストがかからなくなるわけです。
また、欧州では2040年以降にエンジン付きのクルマが販売できなくなる可能性があるといわれています。
参考記事:2040年にすべてのクルマが電気自動車に?~欧州の脱エンジンは本当に実現するかの?
しかし、EV化が時代の流れとはいえ、充電スタンドの普及の問題や既存のガソリンスタンドの営業などの問題もあり、ガソリン車からEVに一気に切り替えるというのは難しいといえます。
ところがPHVであれば、充電スタンドと既存のガソリンスタンドの両方を活用できるため、うまく橋渡しができる可能性があるわけです。
そういった意味においても、今後はPHVがエコカーの本命となっていく可能性は高いといえます。
どんどん電気自動車化しつつあるプリウスPHV
プリウスPHVは、電気自動車のように充電スタンドや一般の家庭電源から充電できるのが大きな特徴ですが、それだけではありません。
プリウスPHVは、ガソリンエンジンを搭載してはいますが、半分電気自動車といってもいいほどEV化しています。
ガソリンをまったく使わないEV走行でも、JC08モードで68.2kmも走行できてしまうのです。
つまり、近所の買い物や通勤などであれば、毎日自宅のコンセントで充電をすることで、ほとんどガソリンを使うことなく電気自動車として利用することもできてしまうわけです。
ガソリンを使うのは、ときどき遠出をするときだけといったような使い方ができるわけです。
ガソリンを使うといっても、プリウスはもともとハイブリッドカーですから、燃費は非常によくJC08モードで37.2km/Lを実現しています。
また、普通の電気自動車の場合、出かけた先でバッテリーが空になってしまうと、走行不可となってしまいますが、プリウスPHVにはエンジンがついていますから、そういった心配はまったく必要ありません。
まさに、電気自動車とガソリン車のいいとこ取りをしてしまったクルマが、プリウスPHVということがいえます。
電気自動車の静かでトルクフルな走りには魅力を感じるけれども、長距離走行が不安で購入に踏み切れないと感じている人にとっては、プリウスPHVは魅力的なクルマということがいえるでしょう。
ソーラーパネルを使って充電することが可能になります
プリウスPHVには、Sグレードのオプションとして、世界初のソーラー充電システムが用意されています。
つまり、車の屋根の上にソーラーパネルを取り付け、駐車中に太陽光を利用して駆動用のバッテリーを充電することができるわけです。
平均すると、1日当たり3kmほど(最大で6.1km)走行可能になる充電量をまかなえるとのことです。
クルマの屋根の上に設置するソーラーパネルですから、それほど大きな発電量があるわけではありませんが、それでも1ヵ月間で100km近く走行できるだけの充電量をまかなえるわけです。
しかし、ソーラー充電システムをオプションで取り付けるには、280,800円(税込み)かかりますから、太陽光による充電のみでこの分のもとを取るというは無理です。
あくまでも環境にやさしいというエコの部分をアピールしたい人が設置するオプションといえそうです。
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普通のプリウスとは走りもまったく違います
普通のPHVではないプリウスは、モーターのみで走行する場面というのは限られています。
お店の駐車場などをゆっくりと走行するときや、信号待ちから発信するときのほんの一瞬だけモーターのみの走行になります。
しかし、プリウスPHVの場合は、信号待ちからかなりの勢いでスタートしてもそのままモーターのみで走行することができます。
つまり、感覚的にはほとんど電気自動車のスタート時と同じと考えていいと思います。
なぜそのようなことが可能になったかといいますと、プリウスPHVには「デュアルモータードライブ」というシステムが採用されているからです。
どういうシステムかといいますと、加速時に電気を発電するためのジェネレーターをモーターとして活用するというもので、モーター2個分のパワーを得ることができるわけです。
そのため、スタート時にはまさに電気自動車のような静かでトルクフルな加速感を味わうことができるわけです。
ですから、プリウスPHVをただの外部電源から充電可能なハイブリッド車だと思っていると、発進直後にすぐにエンジンが始動してしまう普通のプリウスとの走りの違いに驚かされるに違いありません。
ちなみに、このプリウスPHVはモーターの力だけで135km/hまでのスピードを出すことができるそうです。
そのため、制限速度が100km/hである日本の高速道路は、余裕でモーターだけで走行することができるわけです。
災害時にもたのもしいプリウスPHVの給電能力
現代人の生活は、電気なしでは成り立たなくなっています。
そのため、災害などで停電してしまったときなどは、かなり不便な思いをすることになります。
しかし、プリウスPHVの場合には、外部電源から充電をすることができるだけではなく、外部に電源を供給することも可能になっているのです。
燃料タンクを満タンにしておけば、1500Wの電力を2日間にわたってずっと供給し続けることができるのです。
イメージしにくいかも知れませんが、これはかなりの電力量ということになるのです。
たとえば、3合炊きのIH炊飯器の電力が600W~700W程度ですから、その炊飯器でずっとご飯を炊き続けたとしても(ありえない話ですが)、3日や4日はまったく問題ないということになります。
つまり、プリウスPHVのタンクを満タンにしておけば、サバイバル時にはよほど電気の無駄遣いをしない限りは、1週間程度は問題なくすごすことができてしまうでしょう。
このように魅力がいっぱいのプリウスPHVですが、唯一の欠点は普通のプリウスにくらべて80万円ほど値段が高いということです。
これからPHV車がどんどん普及してくれば徐々に値段は下がって行くと思われますが、いまのところ購入にあたって値段がかなりのハードルになっていることは事実といえます。
文・山沢 達也
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