最近は、右折の矢印がついた信号機が多くなっています。
交通量の多い道路の場合、どうしても右折が困難になってしまいますので、この矢印信号はとても親切であるといえます。
矢印信号が出ている間は、対向車は停車しますし、歩行者用の信号も赤なので横断歩道を渡る人もいません。
青信号の状態で右折するよりも、ずっと安全に右折をすることができるわけです。
ところで、つい5年ほど前まで右折の矢印信号でUターンをすると、信号無視になったことをご存知でしょうか?
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2012年3月以前は右折矢印信号でUターン禁止でした
矢印の信号が出ている状態で、Uターンが認められたのは、実は最近のことで、2012年4月1日以降です。
それ以前は、右折の矢印信号でUターンをすると、信号無視で検挙されたのです。
これは、道路交通法施行令第二条の「青色灯火の矢印」の項目のところに次のような記述があるためにです。
「車両は、黄色の灯火又は赤色の灯火の信号にかかわらず、矢印の方向に進行することができる」
つまり、右折の矢印が出ているときは、矢印は右の方向を指しているために、そちらに進行することはできるけれども、Uターン(転回)は矢印の方向ではないのでダメだという解釈です。
これはあきらかに法令を忠実に解釈した屁理屈であり、なぜUターンをしてはいけないのかという理由がまったく分かりません。
むしろ、普通の青信号の状態でUターンするよりも、右折の矢印が状態のほうがはるかに安全にUターンをすることができます。
対向車が停車しているわけですから、Uターンをしたあとに後続車両を気にする必要がまったくないわけです。
安全にUターンできる状態にもかかわらず、法令の条文を拡大解釈して禁止をするというのはあきらかにおかしいということに、やっと気がついたのでしょう。
条文通りに解釈をするのであれば青信号のUターンもNGなはず
右折の矢印信号が出ている状態でUターンをすることは、2012年4月1日以降認められることになったわけですが、普通の青信号の場合はどうなのでしょうか?
道路交通法施行令第二条によると、青色の灯火の場合「直進し、左折し、又は右折することができる」となっています。
これを条文通り厳密に解釈すると、直進と左折と右折以外はダメということになります。
つまり、Uターンは直進でも左折でも右折でもないので、青信号の状態で行うと違反ということになってしまうのです。
しかし、Uターン禁止の標識がない区間の青信号で、Uターンをして検挙されたという話は聞きません。
これを禁止してしまうと、信号機のある交差点でのUターンが一切できなくなってしまうからです。
普通の青信号でUターンをしてもお咎めなしなのに、より安全な状態である右折矢印のときにUターンを禁止するというのは、どう考えても理屈に合わなかったわけですね。
そのことにやっと気がついたのが、2012年4月ということになります。
交通に関する法律というのは、普段は自分で車の運転をしないようなお偉いさん(?)が考えているために、現場ではあきらかに辻褄の合わないようなことが起こったりするわけですね。
どういう場所であればUターン(転回)ができるのでしょうか?
それでは、実際にUターンができる場所というのは、どのような場所なのでしょうか?
道路交通法の第二十五条の二には次のような条文がります。
「車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない」
「車両は、道路標識等により横断、転回又は後退が禁止されている道路の部分においては、当該禁止された行為をしてはならない」
法律の文章というのは、わざと分かりにくく書いているのではないかと疑いたくなるくらいひどい文章なので、法曹関係者など一部の人以外にはなかなか理解ができないのですが、要するに次のようなことが書いてあるわけです。
「歩行者や他の車両の正常な交通を妨害するおそれがない場合であれば、右折や左折、横断や後退をしてもいいですよ」
「横断禁止やUターン禁止、あるいは後退禁止の道路標識などがある場所では、そういった行為を行ってはいけません」
要するに、標識で禁止されていない場所であれば、十分に安全確認をしたうでUターン(回転)をすることは可能だということです。
ぜんぜん難しく考える必要はないわけですね。
ちなみに、この条文にはあきらかに不自然なところがあります。
「道路標識等により横断、転回又は後退が禁止されている道路の部分」とありますが、横断禁止や回転禁止(Uターン禁止)の道路標識はありますが、後退禁止の道路標識というのは存在しません。
そのへんの曖昧な部分を「道路標識等により」という記述をして、「等」という言葉で微妙にかわしているのかも知れません。
スイッチターンというのはUターンになるのか?
Uターン禁止の標識がある場所以外であれば、青信号であれ右折の矢印信号であれUターンができるということがお分かりいただけたかと思います。
それでは、Uターン禁止の標識がある場所でスイッチターンをした場合は違反になるのでしょうか?
スイッチターンというのは、左側の路地などにバックで車を入れて、その状態から右折をして方向転換をはかる方法です。
結果的にこれまで進んできた進行方向とは逆の方向に進むことになるために、Uターンに近いようなイメージがあります。
もちろん、Uターン禁止の標識がない場所であれば何の問題もないことは当然ですが、気になるのはUターン禁止の場所でスイッチターンを行った場合ですね。
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・最高裁判所によるUターンに関する判例
実はUターンに関しては昭和45年に最高裁によって出された以下のような判例があるのです。
「道路交通法二後条の二第一項にいう「転回」とは、同一路上において車両の進行方向を逆に転ずる目的でおこなう運転操作の開始から終了までの一連の行為を支指称し、かかる目的で運転行為を開始すれば、方向転換が完了するにいたらなくても、同条項にいう「転回」に該当する。」
つまり、この判例を見る限りにおいては、たとえスイッチターンであっても、Uターン禁止の標識がある場所で行えば違反になる可能性があるということになります。
ただ、ポイントになるのは「同一路上において車両の進行方向を逆に転ずる目的でおこなう運転操作の開始から終了までの一連の行為」という記述の部分です。
つまり、バックで路地にクルマを入れるときに、完全にその車を路地側に移動してしまえば、「同一路上」ではなくなるわけです。
・警察官が使う「執務資料道路交通法解説」の解釈
実際、警察官が職務の執行にあたって参考にするといわれる「執務資料道路交通法解説」によれば、スイッチターンが回転にあたるのは以下のときとされています。
「その目的が回転にあたること」
「同一の道路上で方向転換を完了すること」
同一の道路上というのは、車両の半分以上が元の道路に出てしまっている状態と解釈されるようです。
つまり、バックで入って行く路地に完全にクルマが入った状態から、右折をして方向転換をすれば回転にはあたらないことになります。
たかがUターン禁止ですが、法的な解釈は本当に難しいものですね。
実際に、警察官のなかにも知識不足の人がいて、一度コンビニの駐車場に車を入れたあと反対方向に進んだらUターン禁止違反だといわれた人がいるそうです。
コンビニの駐車場が同一の道路上でないことは小学生でも分かります。
こういった勉強不足の警察官に濡れ衣を着せられないためにも、しっかりとした交通ルールの知識を身に着けて自己防衛をしたいものですね。
そして、可能であればドライブレコーダーなどで、しっかりと証拠を残しておくといいかも知れません。
文・山沢 達也
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