ほとんどの人にとって、人生で最初に運転するクルマが教習車だと思います。
ガチガチに緊張した状態でハンドルを握りしめ、教官のアドバイスに従ってこわごわと車をスタートさせた記憶をお持ちの方も多いことでしょう。
教習車といえども、基本的には私たちが普段運転しているクルマと同じ仕様になっているのですが、微妙に異なる部分もあります。
教習車というのは、いったいどのようなクルマなのでしょうか?
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教習車にあって一般のクルマにない装備とは?
教習車には一般のクルマと異なる点がいくつかあります。
クルマに取り付けられている安全装備というのは、基本的にドライバーが使用したり確認をしたりするためにあるものです。
しかし、教習車の場合にはそれだけでは不十分で、助手席に座って運転を教える指導員も同様のことができる必要があるわけです。
教習車に装備されている独自の装備には、どのようなものがあるのでしょうか?
・万が一のときに助手席から停車をさせるための補助ブレーキ
教習車にあって、一般のクルマにない装備といってすぐに思い浮かべることができるのが、助手席側に設けられた補助ブレーキではないでしょうか。
教習指導員というのは、基本的に免許証を持たない人が運転するクルマの助手席に座っているわけですから、ある意味では命がけの職業ともいえるわけです。
初めてクルマに乗る人が、緊張のあまりアクセルとブレーキを踏み間違えてクルマを暴走させてしまうなどと言うことも、絶対に起こらないとは言えません。
教習車が想定外の動きをした場合に、指導員の判断で車を安全に減速することができるように、補助ブレーキがついているわけです。
免許取り立ての人の助手席に乗ったことがある人は、「ぜひ助手席にもブレーキが欲しい」と思ったことでしょう。
教習所の指導員というのは、さらに運転の未熟な人の隣に座っているわけですから、補助ブレーキはなくてはならない装備といえるでしょう。
・指導員が後方を確認するための補助のバックミラー
クルマの運転を始めたばかりの人というのは、前方にばかり意識を集中していますので、どうしても後方確認がおろそかになります。
また、運転に慣れない教習生がバックミラーの死角に入った車などを見逃してしまうことがあるかも知れません。
そういった車の運転に慣れない人の後方確認不足からくる危険を回避するために、教習車では助手席から確認をすることができる補助のルームミラーとサイドミラーが取り付けられています。
ルームミラーもサイドミラーも、縦に重ねて取り付けられているのが一般的です。
見た目的には決してかっこうがいいとは言えませんが、教習生と教官の命を守るための装備ですから仕方がありません。
・仮免許練習中と書かれたブラケット
前方を慎重に走っているクルマがいるので、ふと目をやるとナンバープレートの近くに「仮免許練習中」と書かれたブラケットが取り付けられていたりします。
教習所で仮免許試験に合格した人が、路上を走るときにはこの「仮免許練習中」と書かれたプレートを取り付けることが義務付けられています。
公道を走る他のクルマに対して、不自然な動きをする可能性があることを、知らせる意味があるわけです。
そのため、「仮免許練習中」と書かれたプレートの上部に黄色で目立つように「急ブレーキ注意」などと書かれていたりします。
実は、一般のクルマであっても「仮免許練習中」のプレートを取り付ければ、仮免許所有者が路上を運転することができるのです。
もちろん、助手席には運転免許証を持っている人が同乗しなければなりませんが、教習所の卒検前に自主的に練習をしたいという人は、こういった方法で練習ができるわけです。
ただし、一般のクルマには教習車のように補助ブレーキや補助ミラーがついていませんから、助手席に座っている人は心臓が止まる思いをするかも知れません。
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一般のクルマにあって教習車で省かれている装備とは?
教習車には、安全のために一般のクルマには取り付けられていない補助ブレーキや補助ミラーが取り付けられているということが分かりました。
実は、それとは逆に一般のクルマにはついているけれども、教習車では省かれている装備もあるのです。
たとえば、省エネに貢献する装備であるアイドリングストップ機能などは、ベース車両となる一般のクルマには設置されていても、教習車では省かれているようです。
また、最近では坂道発進が苦手な人のために「坂道発進アシスト」といったものが装備されているクルマも多くなっていますが、これも教習車では取り除かれています。
「坂道発進アシスト」がついた車で練習したのでは、坂道発進の技術が身につかないからです。
また、最近では前方不注意などによる衝突を回避するために、レーダーやカメラからの情報をもとにクルマを減速させる「被害低減ブレーキ」が装備されているクルマも増えていますが、教習車ではこれも除外されています。
教習所で運転技術をマスターする過程においては、そういった装置に頼ることなく、確実に自分のブレーキング操作によって停車させることができなくてはならないからです。
市販されているすべてのクルマに「坂道発進アシスト」や「被害低減ブレーキ」が装備されるようになれば別ですが、そういった装備のないクルマがまだまだたくさん売られている以上は、それらがないことを前提として運転技術をマスターする必要があるわけです。
なぜ軽自動車を採用する教習所がないのでしょうか?
教習車として採用されているクルマは、わりと大きめのサイズのクルマが多くなっています。
たとえば、全国の教習車のほぼ50%を占めるといわれているマツダのアクセラのサイズを見てみますと、全長が4610mm、全幅が1795mm、全高が1465mmとなっています。
全幅が1.7mを超えていますから、いわゆる3ナンバーサイズということになります。
教習車というのは、基本的にクルマを初めて運転する人が使うものですから、もう少し小さな車で練習したほうがいいのではないか、と思う人も少なくないでしょう。
たとえば、教習車が軽自動車であれば、教習生はだいぶ運転しやすいに違いありません。
しかし、教習車として使用するクルマは、道路交通法により全長が4400mm以上、全幅が1690mm以上と決められているのです。
そのため、コンパクトな軽自動車を教習車として使用することはできないのです。
運転免許証を取得した後に乗る車というのは、必ずしもコンパクトな車とは限りませんので、あえて大きなクルマを使って練習をさせるのでしょう。
コンパクトなクルマで練習をしていた人が、いきなり大きなクルマに乗るのは大変ですが、大きな車で練習をしていた人がコンパクトなクルマを運転するのは容易だからです。
しかし、一部の教習所で、あえて軽自動車を採用しているところがあります。
これは、すでに免許を取得しているペーパードライバーが練習をするときや、高齢者講習のときに限定して使用されているようです。
すでに免許証を所有している人の練習用には、道路交通法で決められた教習車に関するサイズが適用されないからです。
普段軽自動車しか乗っていない高齢者が、いきなり3ナンバーサイズのクルマを運転するというのは抵抗があるようで、あえて軽自動車を指定して講習を受ける人が多いのだそうです。
文・山沢 達也
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