現在販売されている国産車のほとんどは、直列4気筒あるいはV型6気筒といったタイプのエンジンを積んでいます。
ところが、唯一スバルだけは頑なに「水平対向エンジン」にこだわり続けてきました。
ちょっとクルマ好きの人であれば、その「しゅぼぼぼ...」という独特の排気音を聞いただけで、水平対向エンジンを積んだスバルのクルマであると気がつきます。
なぜスバルは水平対向エンジンにこだわり続けてきたのでしょうか?
また、水平対向エンジンのメリットはどこにあるのでしょうか?
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水平対向エンジンとはどのようなエンジンなのか?
現在、国産車に採用されているエンジンの形式で一番多いのが、直列4気筒タイプです。
これは、4つのシリンダーが横に4列並んだ構造になっています。
V型6気筒の場合ですと、3つのシリンダーが横1列に並んだ形のものを、左右に1対ずつ角度をつけて配置したタイプのエンジンになります。
もちろん、スバル以外のすべての国産車のエンジンがこの2つのタイプに収まるということではありません。
軽自動車の場合には、直列3気筒タイプが主流ですし、レクサスLSなどの高級車はV型8気筒エンジンを採用していたりします。
それでは、スバルが採用している水平対向エンジンというのは、どういったタイプのエンジンなのでしょうか?
現在のスバルにおいて主流になっている、水平対向4気筒エンジンで説明をしてみましょう。
先ほど説明しましたように、同じ4気筒エンジンでも直列4気筒の場合には、4つのシリンダーが横に4つ並んでいます。
それに対して、水平対向4気筒エンジンの場合には、2つのシリンダーずつを左右に振り分け、それぞれが180度開いた状態になっています。
まさに、左右のシリンダーが水平で向かいあっているために、「水平対向エンジン」と呼ばれるわけです。
左右のピストンやクランクシャフトがお互いに殴り合っているボクサーのように見えることから、ボクサーエンジンなどとも呼ばれたりします。
この水平対向エンジンを採用しているのは、国産車ではスバルだけですが、海外だとポルシェが有名です。
また、水平対向エンジンには4気筒だけではなく、6気筒タイプのものも存在します。
この場合は、左右にそれぞれ3つのシリンダーずつ振り分けられることになります。
水平対向エンジンのメリットとは?
直列4気筒やV型6気筒が主流になっている現在において、スバルが水平対向エンジンを採用し続けている背景には、他の形式のエンジンにはないメリットがあるからだと思われます。
実際、水平対向エンジンにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
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・滑らかでスムーズなフィーリング
初めて水平対向エンジンのクルマに乗った人は、振動が少なく滑らかに回るそのエンジンフィーリングに驚くことでしょう。
実は、水平対向エンジンというのはその構造上、他の形式のエンジンにくらべて振動が発生しにくくなっているのです。
たとえば、直列4気筒エンジンの場合、横に並んだ4つのシリンダー内をピストンが上下に運動を繰り返すことになります。
ピストンが上下に動くわけですから、当然ながらエンジンには振動が発生することになります。
それに対して、水平対向4気筒エンジンの場合には、2気筒ずつ左右に振り分けられたシリンダーが向かい合わせになっていることで、ピストンが動くことによって発生する振動をお互いに打ち消しあう構造になっているのです。
右側のシリンダーが爆発すると同時に左側のシリンダーも爆発することで、左右に振り分けられているピストンが同時に反対方向に動くことで、振動そのものが発生しにくくなるわけです。
「しゅぼぼぼ...」という、とてもスムーズには聞こえない排気音や「ボクサーエンジン」というネーミングからは想像しにくいかも知れませんが、実際にはかなりスムーズで気持ちよく回るエンジンなのです。
・コーナーリング性能の向上が期待できる
水平対向エンジンを採用することで、実はコーナーリング性能の向上も期待できるのです。
エンジンとコーナーリング性能は、直接的には関係ないような気がするかも知れません。
しかし、エンジンというのはクルマのパーツのなかでも一番重量があり、その位置や形式によってコーナーリング性能に大きな影響を与えることになるのです。
スーパーカーと呼ばれるクルマが、車体のほぼ中央にあたる座席のすぐ後ろにエンジンを積んだりする(これをミッドシップといいます)のも、コーナーリング性能的に有利になるからです。
直列4気筒のエンジンが垂直に立った状態のエンジンであるのに対して、水平対向エンジンはシリンダーが左右に分かれて寝ている状態になります。
つまり、分かりやすくいえば平べったい形のエンジンということになります。
平べったい形をした水平対向エンジンというのは、他の直立したエンジンにくらべて重心が下がることになります。
クルマの重心が低くなれば、当然ながらコーナーリング性能の向上が期待できることになるわけです。
・水平対向エンジンは衝突時の安全性能が高い
平べったい形をした水平対向エンジンは、衝突安全性能にも強みを発揮します。
ほどんどのクルマは運転席の前方にエンジンがあることになりますので、正面衝突などの前方からの衝突時には、その衝撃でエンジンが後ろに下がって来ることになります。
特に、最近のクルマはキャビンを広くするためにボンネットがコンパクトになっており、それだけ運転者とエンジンの位置が近いことになります。
そのため、ボンネットが潰れるほどの強い衝突のときには、後退してきたエンジンによってドライバーが圧迫される可能性もあるわけです。
しかし、平べったい形をした水平対向エンジンであれば、そういった状況のときでもエンジンがフロアーの下に潜り込みますので、キャビン内に進入してくる可能性は非常に低くなります。
このように水平対向エンジンというのは、振動が少なく重心が低くなるといったメリットだけではなく、衝突安全性能が高いという意外なメリットもあるのです。
水平対向エンジンのデメリットとは?
さまざまなメリットがあるということが分かった水平対向エンジンですが、もちろんデメリットがまったくないわけではありません。
まず、直列4気筒エンジンなどにくらべると構造が複雑になる分、パーツの数も多く、生産コストが割高になりやすいという点があげられます。
左右別々の2つのシリンダーを合体させて1つのエンジンとしているわけですから、それは仕方のないところといえるでしょう。
V型6気筒エンジンなどにも同様のことは言えますが、V6の場合には高級車に搭載されることが多いので、エンジンのコストの面に関してはクルマの販売価格に反映させれば済むことです。
ところが、スバルの水平対向エンジンは決して高級車向けのエンジンということではありませんので、メーカーとしては生産コストと販売価格のバランスを常に考えながらクルマの開発をしなければならなくなるわけです。
また、水平対向エンジンは、平べったく横長の形になってしまうため、ピストンが往復する距離(ストローク長)がどうしても短くなってしまいます。
いわゆるショートストロークタイプのエンジンということになり、高回転はスムーズに回りやすいのですが、低速トルクは出にくいといったエンジン特性になります。
もちろん、これは単純にデメリットといえるかどうかは微妙なところで、むしろスポーツタイプのクルマであれば高回転まで回りやすいショーとストロークのエンジンはメリットにもなり得るわけです。
新世代の水平対向エンジンではロングストローク化に成功しており、より低回転から扱いやすいエンジンに進化をとげているようです。
もう1点、水平対向エンジンのデメリットをあげますと、ディーラー以外の整備工場でのメンテナンスが難しい点があげられます。
多くの車種に採用されている直列4気筒やV型6気筒と違い、スバルだけが採用している水平対向エンジンのメンテナンスは、一般の整備工場にとってはどうしても扱い慣れていないだけに、苦手意識が芽生えてしまうことになります。
スバル水平対向エンジンの公式サイト
https://www.subaru.jp/boxer50/
文・山沢 達也
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