自動車教習所がどんどん潰れているようです。
実際に過去20年間で、150校以上の教習所が廃業に追い込まれているようです。
教習所の経営が苦しくなった背景には、少子化の問題や若者が車に興味を失ってしまって、運転免許を取らなくなってしまったというようなことが原因としてあるようです。
一部の自動車教習所では、生き残りをかけて驚くようなサービスを提供しているところもあります。
20年間で150校以上が潰れてしまった指定自動車教習所
卒業すると、技能試験が免除になる指定自動車教習所は、20年前には全国で1,500校を超えていました。
その数は年々減り続け、20年間の間に150校以上が廃業をしています。
生徒の減少に歯止めがかからない状態が続いているため、教習所の経営はどんどん厳しくなっているようです。
卒業生も1993年には全国で250万人を超えていましたが、最近では150万人程度まで落ち込んでしまっています。
1993年当時は、第2次ベビーブームに生まれた人たちが、ちょうど運転免許を取得する年齢に達したために、卒業生の数が大きくのびたものと思われます。
第2次ベビーブームのピークのときには、出生数は200万人を超えていました。
ところが、いま運転教習所に通っている世代の若者が生まれた頃の出生数は、120万人程度です。
単純に、教習所に通う年齢の若者が、20数年の間に80万人も減ってしまったことになります。
これだけ人数が減ってしまったにもかかわらず、過去20年間で廃業をした教習所の数が150校程度というのは、むしろ少ないといえるでしょう。
少子化はその後も年々進み、現在の出生数が100万人程度にまで落ちてしまっていることを考えますと、今後も教習所の廃業は増え続けて行くことが予想されます。
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若者が車に興味を失っているという深刻な問題
自動車教習所が次々と廃業に追い込まれている主な原因が、少子化にあることは間違いありません。
しかし、単純にそれだけが理由ではないようです。
実は、若者たちが車に対する興味を失いつつあるのです。
かつての若者たちは、車を所有することに憧れ、運転免許が取得できる年齢になるのを待ち焦がれていたものです。
しかし、交通機関が発達した都市部に住む若者たちにとっては、車というのは興味の対象外になってしまっているようです。
車がなくても、電車やバスでどこにでも行けるし、下手に車を所有すると月極駐車場代などの維持費が大変です。
車を買うくらいなら、パソコンやスマホ、ゲーム機などにお金を使った方がいいと考える若者が増えているのでしょう。
車に興味のない若者が増えれば、免許を取得しようと考える人の割合は当然ながら減ることになります。
今後は、車がなければ通勤や買い物に不便を感じる地方に住む若者だけが、仕方なく運転免許を取得するという時代になっていくのかも知れません。
実際に、20歳~24歳の若者の運転免許所有率は、2001年には約85%ありましたが、2014年には約77%にまで下がってしまっています。
このように自動車教習所は、少子化によって運転免許取得対象の人口が減っていくことと、若者のクルマ離れというダブルパンチによって年々経営が厳しくなっているわけです。
生き残りをかけた教習所の驚きの過剰サービス
今後も、運転免許を取得しようとする若者の数が減り続ければ、各教習所は生き残りのために限られたパイを奪い合うことになります。
そのため、これまでの教習所のイメージからは想像もできないような、驚きの過剰サービスを提供するところもあらわれてきました。
いったい、どんなサービスを提供しているのでしょうか?
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・教習車にメルセデス・ベンツやBMWを使う
これまで、多くの教習所に使われてきた車は、地味なセダンでした。
タクシーなどに使われることが多い、クラウンコンフォートなどが定番でした。
ちょっと気の利いた教習所になると、生徒の注目を集めるためにプリウスなどを使うこともあります。
しかし、最近では高級外車の代名詞ともいうべき、メルセデス・ベンツやBMWを教習車として使う教習所があらわれるようになりました。
確かにインパクト的にはあると思いますし話のタネにはなりますが、そのことが直接的に集客につながるかどうかは疑問です。
なぜなら、最近の若者は車そのものにあまり興味がなくなってきているからです。
かつてのように、女性にモテたいために無理してカッコいい車を買うといった、明確な意思を持った若者は少なくなっています。
最近の草食化した男子たちは、車はとりあえず安くて動けばいいといった理由から、あえて軽自動車を選択する人も多くなっています。
ましてや、メルセデス・ベンツやBMWのような経済力が伴わないと購入できないような車に、最近の若者が魅力を感じることはないと思われます。
・ひたすら褒めまくって指導する?
かつての教習所の教官は、本当におっかない人が多かったものです。
鬼教官からどんな理不尽な怒られ方をしても、ハンコを押してもらうために卒業までひたすら耐え忍んだという人も少なくなかったと思います。
確かに、運転技術が未熟な状態で公道を走らせるわけには行きませんから、ある程度は厳しく指導しなければならないのは理解できますが、少なくともお金を払っているお客様に対して「そこまで言うか!」的な指導が多かったのも事実です。
しかし、昭和の時代の、親や学校の先生から厳しくしつけられた世代ならいざ知らず、親や学校の先生から怒られるということが滅多になくなってしまった現代の若者たちが、昭和式のスパルタ教習所の指導方法に耐えられる道理はありません。
そんな状況の中で登場したのが、ひたすら褒めまくる教習所です。
確かに「豚もおだてりゃ木に登る」ということわざがあるくらいですから、褒めて実力を伸ばすという教育方法は有効ではあります。
しかし、下手くそな教習生が脱輪をしてもポールをぶっ倒しても「惜しかったですね~♪」とか「ちょっとだけハンドルを切りすぎましたね~♪」などと、ニコニコしながら指導を続ける教官たちのストレスはどれほどのものなのか、考えるだけでちょっと気の毒になってしまいます。
・ほとんどレジャー施設化している教習所
かつての殺風景で事務的な教習所を知っている世代には信じられないかも知れませんが、まるでレジャー施設のようなサービスを提供している教習所もあります。
女性の教習生を取り込むために、ネイルやマッサージがたった100円で受けられるなどといった教習所があります。
ネイルにしろマッサージにしろ、人件費を考えたら100円で提供できるサービスではありませんから、自分のところの利益を減らしてでもそういったサービスを提供しているに違いありません。
また、最近では合宿形式で教習をするところも増えてきていますが、合宿所に温泉があったり、専任のシェフによる豪華な食事やケーキバイキングが提供されたりするところもあるようです。
どうやら、ここまでやらないと最近の若者は運転免許を取る気にならないようです。
・ターゲットを高齢者に変えるところも
運転免許を取得する若者の数が減っていくことに危機感をおぼえた教習所の中には、生き残りのためにターゲットを高齢者に向けはじめたところもあるようです。
平成29年3月より、70歳以上のドライバーは教習所で「高齢者講習」を受けないと運転免許の更新が出来ないようになりました。
この高齢者講習には、3時間で5,600円の講習料が発生します。
教習所にしてみれば、新規に運転免許を取得する人を指導するのにくらべれば大した利益にはならないかも知れません。
しかし、運転免許の取得をするのは基本的に一生に一度ですが、免許の更新時期は数年おきに必ずやってきます。
これから高齢化社会となる日本において、たとえ5,600円とはいえ、数年おきに必ずやってきてくれる高齢ドライバーは、ある意味では貴重なお客様ということがいえるのかも知れません。
文・山沢 達也
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