ドライバーにとって、任意保険に加入するのはいまや常識といえます。
保険に未加入の車で人身事故を起こすと、数億円の賠償額が発生することもあります。
実際にある死亡事故の事例では、賠償額が5億円を超えています。
もちろん、一般庶民がそんな大金を自腹で支払えるわけはありませんから、任意保険に未加入の状態でそういった事故を起こしてしまった場合には、人生がほぼ終わってしまうことになります。
最近では、任意保険の対人補償額は無制限に設定するのが一般的ですが、驚くほどの高額賠償の事例が多くなっていることがその背景にあります。
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いまや対人補償は無制限で契約するのが常識
自動車保険には、車を所有している人が強制的に加入させられている「自賠責保険」と、それとは別に個人的に保険会社と契約をする「任意保険」があります。
なぜ、自賠責保険に強制的に加入させられているのに、あえて任意保険に入らなければならないのかといいますと、自賠責保険だけでは十分に賠償額をまかなうことができない可能性があるからなのです。
自賠責保険で支払われる対人の賠償額は、死亡の場合で最高3,000万円です。
これから紹介する事例をみていただければ、対人の賠償額が3,000万円ではまったく足りないということが理解できるかと思います。
任意保険の場合も、かつては5,000万円とか1億円での契約が主流だった時代もありますが、いまでは無制限に加入するのが常識となっています。
なぜなら、保険会社から1億円の保険金を受け取っても賠償しきれない事例がいくつも出てくるようになったからです。
実際に対人賠償額が高額になった事例をみてみましょう
ここでは、過去に人身事故により、高額な賠償金額が発生した事例をいくつか紹介してみたいと思います。
これらの事例をみていただければ、なぜ任意保険の対人補償額が無制限でなければならないのかが理解できると思います。
・眼科医の死亡事故で5億843万円の支払い命令
平成23年に横浜市で起こった、41歳の眼科医がタクシーにひかれて死亡した事故では、裁判所より5億843万円の支払い命令が出ています。
眼科医の年収が5,000万円を超えていたために、このような金額になってしまったようです。
この事故は、被害者である眼科医が酒を飲んで酩酊状態で道路を横断中に、道路の中央付近で立ち止まっていたところをひかれてしまったもので、被害者側に60%の過失があると判断されています。
それにもかかわらずこれだけの金額になってしまうわけですから、ドライバーの方に一方的な過失があるような場合だと、10億円を超える可能性もあるわけです。
人身事故の賠償額というのは、その人が事故に合わなかったとしたら生涯に稼げていたと想定できる金額をもとに算出されることになりますので、収入の高い人や若い人が被害者となった場合には、驚くような賠償金額になることがあるわけです。
・大学生が後遺症障害を受けて3億7,829万円
高額賠償となるのは、死亡事故ばかりとは限りません。
交通事故による後遺症が原因となって、数億円単位の賠償額が発生することもあります。
名古屋で21歳の大学生が、友人の車のボンネットの上にうつぶせに乗っていた状態から転落をして頭部を強打した結果、遷延性意識障害の後遺症を受けたという事例があります。
この事例では、運転をしていた友人の加害者に3億7,829円という高額な賠償額の支払い命令が出ました。
もちろん大学生ですからその時点での収入はありませんでしたが、もし事故に合わなければその人が生涯にわたり稼いだと思われる賃金をもとに、賠償額を算出したわけです。
この事例では、被害者もボンネットに乗るという危険な行為をしていたために、20%の過失があると判断されています。
対物でも高額な賠償金が発生する可能性があります
人身事故を起こすと、場合によっては想像を超える高額な賠償額が発生する可能性があるということは十分にお分かりいただけたかと思います。
それなら、対人補償だけ無制限に加入していれば安心かというと、必ずしもそうとばかりは言い切れません。
なぜなら物損事故においても、想像以上の高額な賠償金が発生する可能性があるからです。
対物補償というと、車同士の事故を起こしてしまったときの、相手の車の修理代金というイメージを持たれている方も多いと思います。
フェラーリやポルシェと交通事故を起こす確率は限りなく低いから、補償額はせいぜい1,000万円もあれば十分だろうと思うかもしれません。
しかし、対物補償の対象となるのは車だけではないのです。
あなたの車が事故を起こした時に、壊したものがすべてのものが対象となるわけです。
信号機を倒してしまうかも知れませんし、居眠り運転で沿道の民家や店舗に車を突っ込んでしまうかもしれません。
当然のことながら、あなたの不注意によって起こした事故で壊したものであれば、たとえそれが信号機であっても家であってもすべて賠償しなければならないわけです。
また、車の所有者に義務づけられている自賠責保険では、対物に関してはまったく適用になりませんので、任意保険にすべてを頼らざるを得ません。
それでは、対物補償はどの程度の金額に設定しておけば、安心して車を運転することができるのでしょうか?
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対物の賠償金額が実際に億の単位になった事例
対人の補償額に関しては、無制限でないと安心して車を運転することができないというのは、多くのドライバーの共通認識といえます。
しかし、対物でも億の単位の賠償額が発生する可能性があるという事実を知ってしまうと、認識を新たにしなくてはならないと感じるかも知れません。
実際に億を超えた対物賠償額の事例を紹介してみたいと思います。
・トラックの荷主に対する賠償額が2億6,135万円
この事例はかなり特殊なもので、一般のドライバーには基本的には起こり得ないような事例となりますが、賠償額が2億6,135万円と驚くような金額なために、あえて紹介させていただきました。
大型トラックが、高速道路上で横転炎上してしまったという事故で、そのトラックの荷台に積まれていた呉服や洋服、毛皮などが焼失してしまったことに対して、荷主が運送会社に対して損害賠償を求めたものです。
裁判所が出した金額は2億6,135万円と、物損による補償額としては過去最高額となっています。
・踏切で電車を脱線させてしまった結果の賠償額
先ほどの事例は、一般のドライバーには起こりえないシチュエーションのものでしたが、こちらの事例に関しては誰にでも起こり得るものとなります。
福岡県にある西鉄線の遮断機も警報機もない踏切にカローラバンが進入し、軌道敷地内で脱輪をさせてしまったことによって起こった事故です。
脱輪して動けなくなってしまったカローラバンに6両編成の特急列車が衝突し、そのまましばらく引きずられたあと、車は線路わきの家屋に飛び込んでしまいました。
この事故で、特急列車は2両目から6両目まで脱線することとなり、電車の損害や復旧工事の代金、家屋の損害額などを合わせて1億2,036円の損害賠償をしなければならなくなりました。
一般のドライバーであったとしても、このような高額な賠償額を発生させてしまう可能性があるということを、しっかりと認識しておいた方がいいでしょう。
・ペットショップに突っ込んでしまった車の賠償額
こちらは、先にあげた2つの事例にくらべると、賠償額は一気に低くなりますが、ドライバーであれば誰でもごく日常的に起こり得るような事例といえます。
平成23年に、東京都内を走行していた乗用車が、運転を誤ってペットショップ店に突っ込んでしまったという事例です。
店舗の修理費や什器設備修理費、商品損害、休業損害、集客回復費用などについて裁判で争った結果、加害者であるドライバーに2,177万円の支払いが命じられることになりました。
こういった事故は、いつあなたに起こってもおかしくないといえます。
対物補償の金額はいくらにすべきか?
あなたが加入している任意保険の、補償金額を確認してみて下さい。
対人補償に関しては無制限となっている人が多いと思いますが、対物に関してはどうでしょうか?
おそらく、1,000万円程度になっている人が多いと思います。
しかし、いくつかの事例で見てみましたように、一般のドライバーであったとしても、数千万円~1億円を超えるような物損による高額賠償額が発生する可能性は十分にあります。
万が一のときを考えた場合には、5,000万円とか無制限の対物補償をつけておいた方が無難といえるかも知れません。
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