運転代行のドライバーがあなたの車で事故を起こしたらどうなる?

衝突してしまった2台の車地方では、運転代行業者はなくてはならない存在になっています。

交通機関の発達した都会のように、飲んだあとに電車で帰れるような地域であれば代行業者のニーズはそれほどないはずですが、地方に住んでいる人にとっての唯一の交通手段は車です。

車に乗って飲みに行って、帰りは運転代行を使うというのがお決まりのパターンです。

しかし、地方では当たり前のように利用されている運転代行ですが、一つだけ大きな疑問がわきます。

運転代行というのは、赤の他人であるドライバーさんが、あなたのクルマを運転することになるわけですが、万が一事故を起こした場合に、保険の扱いはどうなるのでしょうか?

あなたが加入している自動車保険は、本人限定であったり家族限定であったりすることが多いので、普通に考えれば、他人に保険は適用されないはずですが...

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運転代行業者の数が増えている理由

飲酒運転の厳罰化に伴って、運転代行業者の数はどんどん増えてきました。

平成14年には全国で4,148業者だったのが、平成27年には8,866業者にまで増えています。

また、運転代行業者の数が増えてきた背景には、飲酒運転に対する厳罰化だけではなく、その利便性からくるニーズの高まりもあります。

電車などの交通機関がないのであれば、タクシーを使って飲みにいけばいいのではないかと思いがちですが、実は運転代行業者にはタクシーにはないさまざまなメリットがあるのです。

タクシーを使って飲みに行くと、行きの分と帰りの分を合わせて往復で利用することになります。

しかし、運転代行の場合には、帰るときだけ利用すればいいわけです。

しかも、地方の場合、驚くほど格安で営業している運転代行業者が多いのです。

茨城県の某市にある運転代行業者のホームページを見てみますと、4kmまで1,200円となっています。

さらに、7kmで2,000円、10kmで2,750円と格安な料金設定になっています。

ちなみに、この地域で深夜にタクシーを利用した場合、10kmで4,000円近くの料金がかかりますので、運転代行の方がタクシーの片道料金よりも圧倒的に安いということがいえます。

タクシーのドライバーは1名ですが、代行業者は随伴車両のドライバーも含めて2人ペアで動いていますので、その分だけ余分に人件費もかかっています。

運転代行のイラストそれにもかかわらず、これだけ安い金額でサービスを提供していて、赤字にならないのか心配になってしまうほどです。

タクシーで往復することを考えたら、運転代行を利用したほうが料金的には2倍~3倍もお得ということが言えるわけです。

また、タクシーを利用する場合には、一度自宅まで帰宅する必要がありますが、運転代行を利用する場合は、仕事の帰りに気軽にお店に寄れるというメリットもあります。

こういったさまざまなメリットがあるために、地方では運転代行のニーズがどんどん高まって、それに伴って業者の数もどんどん増えていったわけです。

「不便で高いタクシー」よりも「便利で安い運転代行」を選択する飲兵衛消費者の感覚は、間違いなく正しいといえるでしょう。

人身事故の賠償や車が破損したときの車両保険は?

タクシーを利用する場合には、タクシー会社の所有する車に乗っているわけですから、仮に交通事故などが起こった場合でも、賠償金や車の修理代金について利用者であるあなたが心配することは何もありません。

しかし、運転代行の場合には、赤の他人である代行業者のドライバーさんが、あなたのクルマを運転することになります。

「そういえば、俺の車40歳以上限定で、家族にしか保険は適用されないはずだけど大丈夫か?」

などと、少し不安になったあなたの感覚は正常だと思います。

しかし、現実はそれ以上に厳しく、どのような条件で任意保険に加入していたとしても、運転代行業者による事故に対して、あなたの任意保険が適用されることはありません。

年齢制限もなく家族以外のすべての人が対象になっている任意保険に加入していたとしても、残念ながら適用にならないのです。

修理業者や運転代行業者といった自動車取扱い業者が、業務としてあなたの車を運転したときに起こした事故に対しては、保険は使えないというのはどこの保険会社も共通のはずです。

では、もし人身事故を起こしてしまったら、その賠償金は誰が払うのか?

また、買ったばかりの新車が、運転代行のドライバーの事故によって廃車になってしまった場合、車を弁償してもらうことは可能なのでしょうか?

そういったことを考えれば考えるほど、運転代行を利用するのが不安になってくる人もいると思います。

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考えてみると恐ろしい利用者の責任

万が一運転代行のドライバーがあなたの車で事故を起こしてしまったとしても、運転していたのはあくまでも代行業者のドライバーなので、自分は関係ないと考える人も少なくないでしょう。

しかし、民法の715条に「使用者等の責任」というものがあるのです。

この法律にもとづくと、運転代行のドライバーが事故を起こしてしまった場合、その業者を使った使用者であるあなたにも損害賠償の責任が生じることになるのです。

被害者は、加害者である運転代行業者とその使用者であるあなたの、どちらに損害賠償を請求してもいいことになっているのです。

もちろん、先ほど説明しましたようにあなたが加入している任意保険は使えませんから、もし運転代行業者に支払い能力がなければ、あなたがすべて支払うことになります。

赤の他人である代行業者のドライバーが起こした人身事故で、数千万円~1億円を超える損害賠償をあなたが払わされる可能性があるということです。

「冗談じゃない!」と思うかも知れませんが、あくまでも法律ではそういうことになっているのです。

とはいえ、ここまで散々脅かしておいて恐縮ですが、実際にはそれほど心配する必要はなさそうなのです。

運転代行業者は賠償責任保険に加入をしている

ぶつかった2台のミニカーと文言不特定多数の人の車を運転することになる代行業者は、「自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律」にもとづいて、賠償責任保険に加入しています。

加入が義務付けられている保険の内容は、対人8,000万円以上、対物・車両が200万以上となっています。

しかし、この義務付けられている金額では、少し物足りない印象があります。

対人の場合には1億円を超える賠償金が発生することもありますし、対物と車両が200万円というのもかなり心配な金額です。

たとえば、事故によって信号機を倒してしまったりしたら、500万円以上の損害賠償金が発生するといわれていますので、200万円の補償額ではぜんぜん足りません。

車両保険も、年式の新しい高級車などを大破させてしまったら、200万円の補償額では対処できないでしょう。

とはいえ、この対人8,000万円以上、対物・車両200万円以上という金額は、あくまでも法律で定められた最低限の金額です。

ほどんどの代行業者は、「全国運転代行共済協同組合」によって運営されている共済に加入していますが、その場合の基本的なプランの賠償額は、対人無制限、対物7,000万円、車両保険1,000万円となっています。

ここまでの金額を補償してくれるのであれば、あなたが現在加入している任意保険と同等かそれ以上のスペックということができるでしょう。

対物も7,000万円ということであれば、信号機を倒すどころか、ベンツにおかまを掘ってしまっても、店舗に車を突っ込んでしまっても、とりあえずなんとかなりそうです。

車両保険も1,000万円あれば、あなたの車がフェラーリやポルシェでもない限りは、まず大丈夫だといえるでしょう。

このような理由から、運転代行のドライバーが交通事故を起こしたとしても、あなたに損害賠償の支払いを求められるということは、まずないと考えていいでしょう。

これまで通り、安心して運転代行業者を利用していただければと思います

文・山沢 達也

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