車の売買契約したあとに、気が変わってキャンセルをしたくなることがあるかも知れません。
夫が妻に内緒で車の購入を決めてしまったとか、契約後にたまたま他の店でもっと魅力的な車を見つけてしまったなど、理由はさまざまだと思います。
ひどい例としては、車が車庫に入らなかったからキャンセルしたいなどと主張してくる人もいるようです。
しかし、いかなる理由があろうとも、車の売買契約を済ませてしまったら容易にはキャンセルできないというのが実情のようです。
また、車の場合には訪問販売や電話営業のような形でセールストークを受けて購入するものではなく、自らが進んで店舗に行って契約をするのが一般的なため、クーリングオフも適用になりません。
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車というのはオーダーメイドで作られます
車というのは、色やグレードだけではなく、さまざまなオプションなどを組み合わせた状態で販売されます。
つまりお客様一人ひとりの好みに合わせた、オーダーメイドのような形で販売されるわけです。
バイザーやストライプなどのディーラーオプションであれば後付けが出来ますが、サイドエアバックやサンルーフといったメーカーオプションは工場の生産ラインでしか取り付けができません。
そのため、発注後にキャンセルをしようと思っても、そのキャンセルされた車が好みの違う別の人にすぐに売れるという保証がないために、基本的にはキャンセルはできないことになります。
注文住宅を建設途中でキャンセルできないのと、理屈は同じです。
注文して工場の生産ラインに乗ってしまった車を、途中でキャンセルするなどというのは常識的に考えても無理があるわけです。
ましてや、納車されてしまったあとに「車庫に入らない」とか「イメージと違う」などの理由でのキャンセルなどというのは言語道断ということになります。
契約成立後にキャンセルが可能な条件とは?
自動車公正取引協議会によりますと、車のキャンセルが可能な条件は以下の3つの日のうち、いちばん早い日ということになります。
1.自動車登録をした日
2.修理・改造・架装等に(特別な部品を装着する事など)に着手した日
3.自動車の引き渡しが行われた日
1の「自動車登録をした日」というのは、要するにナンバープレートを取得した日ということになります。
自動車登録をしてナンバープレートを取得してしまうと、その時点で新車ではなく中古車となってしまいますので、キャンセルが出来ないのは当然のことです。
2の「架装(特別な部品を装着する事など)に着手した日」というのは、工場の生産ラインに乗ってしまって、メーカーオプションなどの取り付けなどに着手してしまった日という解釈になると思います。
3の「自動車の引き渡しが行われた日」というのは、その言葉通り納車の日ということになります。
このなかのいずれか早い日を持って契約が成立するとなっていますが、新車購入の場合は2番が一番早い日ということになります。
そのあと、1の自動車登録をして3の納車になるわけです。
この自動車公正取引協議会のルールに基づくと、車の売買契約というのは、契約書にハンコを押した時ではないということになります。
そういうことであれば、車がまだ工場の生産ラインに乗る前であれば、自由にキャンセルできるということになるのでしょうか?
この場合は基本的に可能だと考えていいと思います。
ディーラーやメーカーに実損が生じていない段階であれば、素直にキャンセルを認めてくれるお店も多いはずです。
しかし、自動車公正取引協議会では、3つの条件のうちのいずれか早い日を契約成立としていますが、民法上では契約書に署名をして捺印した時点で契約が成立することになりますので、解釈的には難しい部分もあります。
そのため、ノルマに追われている営業マンなどが、契約直後であっても法律をたてにキャンセルを認めてくれない可能性も十分にあるわけです。
いずれにしましても、車というのは高額商品ですので、安易な気持ちで契約書に署名捺印することのないように、十分に気をつけたいものです。
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どうしても車を購入するわけには行かない場合
基本的に車を注文したあとにキャンセルはできないと考えるべきですが、どうしても車を購入することができない事態が発生した場合にはどうすればいいのでしょうか?
たとえば、通勤に使う目的で車を購入したけれども、急きょ海外への転勤が決まって車が必要なくなってしまった場合などです。
そういった場合には、メーカーやディーラーに発生する実損分を支払うことで、キャンセルを認めてもらう方向で話をするしかないでしょう。
要するに、契約を破棄するためのキャンセル料を支払うということです。
それでは、実際にどの程度のキャンセル料を支払えば契約を解除できるのでしょうか?
これは、キャンセルを申し出るタイミングや、注文した車の仕様などにもよりますので一概にはいえません。
たとえば、すでに新車登録をしてしまったり納車になってしまった車であれば、その車を中古車として市場に流通させた場合の相場と契約時の金額との差額が、キャンセル料として支払うべき金額ということになります。
すでに工場の生産ライン上に乗ってしまっているけれども、まだ登録をする前の時点であれば、新車として売ることができますので、それほど大きなキャンセル料にはならないと思われます。
そういった車は、いわゆる在庫車として扱われることになりますが、オーダーの時点であまりにも一般的でないような仕様だった場合には、すぐに売れない可能性がありますので、キャンセル料も高めになる可能性があります。
いずれにしましても、メーカーやディーラーに発生する実損以上のキャンセル料を支払う必要はありませんので、請求されたキャンセル料に関しては、しっかりとその根拠を示してもらうことが大切です。
ただし、キャンセルに応じるかどうかはあくまでも販売店しだいなので、あまり感情的にならずに冷静に交渉をしたほうが得策といえるでしょう。
堂々とキャンセルが出来る場合もあります
これまで、新車を発注してしまったあとのキャンセルは基本的にできないというお話をさせていただきましたが、それはあくまでも購入者側の自分勝手な都合によりキャンセルをする場合です。
これが、ディーラーやメーカーのミスによって発生した理由によりキャンセルを申し出る場合には、無償で応じてもらえる可能性が高いといえます。
たとえば、納車された車の色が注文書に書かれた色と違っていたとか、オプション指定したサンルーフが取り付けられていなかった場合などです。
注文書に書かれた通りのクルマが納車されないということになれば、民法上の債務の不履行にあたりますから、堂々と契約解除ができるわけです。
こういった場合であればディーラーがキャンセルに応じてくれるのは当然のことですが、場合によっては別の提案をしてくることもあります。
キャンセルせずにこのまま車を納車させてもらうかわりに、追加の値引きをしたりディーラーオプションを無償でつけさせてもらうといった提案です。
購入した本人がその条件で納得できるのであれば、あえてキャンセルをせずにその条件で納車を受け入れてもいいと思います。
新たに注文をしなおすとなると、納車までさらに数カ月間も待たされる可能性もあるため、条件によってはそのまま提案を受け入れた方が得策かもしれません。
ただし、ボディカラーが違っていたり、どうしてもつけたかったメーカーオプションがついていなかったりといった、どうしても譲歩できない理由があるのであればキャンセルもやむなしといえるでしょう。
文・山沢 達也
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