車にはハイオク仕様とレギュラー仕様があるのは、ご存知の通りです。
ハイオクガソリンはレギュラーガソリンにくらべて10円程度高いことが多く、満タンにすると300円~500円程度の料金差が発生します。
ハイオク仕様のクルマに乗っている人は、給油のたびに次のような疑問が頭に浮かぶと思います。
「これ、レギュラーでもいけるんじゃね?」
はたして、本当にハイオク仕様のクルマにレギュラーガソリンを入れても問題ないのでしょうか?
そもそもなぜガソリンにはハイオクとレギュラーの2種類のがあるのか?
そもそもガソリンの種類が2種類あるために、ハイオク仕様に乗っている人は損をした気分になってしまうわけです。
なぜ、すべてのガソリンを1種類に統一できないのでしょうか?
実はガソリンが2種類ある理由は、エンジンの高性能化にあるのです。
ガソリンエンジンというのは、ピストンで圧縮した空気とガソリンの混合気にプラグで着火をして、爆発させています。
このとき、混合気の圧縮比を高くすればするほど、パワーが出やすくなります。
それならば、どんどん圧縮比をあげていけば高出力のエンジンが簡単に作れると思うでしょうが、そう単純にはいかないのです。
なぜなら、圧縮比をどんどんあげていくと、ノッキングという現象が発生してしまうからです。
ノッキングというのは混合気の自然発火によって起こる現象で、圧縮された混合気がプラグで着火をする前に勝手に爆発をしてしまうことによって起こります。
ディーゼルエンジンの「カラカラカラ」という音を聞いたことがあると思いますが、あの「カラカラカラ」という音がまさにノッキングを起こしている音なのです。
ディーゼルエンジンにはプラグがなく、高圧縮比によって自然着火させる仕組みになっているので、ノッキング音がするのは当然のことです。
エンジンの圧縮比をあげることで高出力を得やすくなるのですが、その結果としてノッキングが発生しやすくなるという問題が生じるわけです。
ノッキングを起こしてしまうとパワーが出にくくなるばかりか、エンジンに悪い影響をおよぼす可能性があります。
圧縮比を高くしたエンジンがノッキングを起こさないように、オクタン価を高めて製造されたガソリンがハイオクということになります。
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ノッキングによってエンジンが壊れることがあります
エンジンがノッキングを起こしてしまうと、どのような問題があるのでしょうか?
ノッキングというのは、エンジン内部の異常燃焼になります。
異常燃焼を起こすと燃焼室内が高温になりますので、最悪の場合はシリンダー内に油膜切れを起こしてシリンダーやピストンを溶かしてしまうことがあります。
また、ピストンが完全に上がりきる前に爆発が起こることによって、逆回転方向に力が加わることになりますので、コンロッドを痛めてしまう可能性もあります。
つまり、ノッキングが起きている状態のクルマをそのまま乗り続けていると、エンジンがブローしてしまう可能性があるということになるのです。
ディーゼルエンジンではないのに、ボンネット付近から「カラカラ」とか「キンキン」といった音が聞こえてくるクルマは、ノッキングを起こしている可能性があるので、要注意ということになります。
たとえエンジンがすぐには壊れなかったとしても、悪影響は間違いなくありますし、パワーダウンにもつながります。
ノッキングが起きていると分かったら、エンジンに高負荷をかけないようにして、すみやかに修理工場に持ち込んだ方がいいでしょう。
ちなみに、ディーゼルエンジンの場合は、そもそもノッキングが起きることを前提に作られていますので、どんなにカラカラ音がしてもまったく心配する必要はありません。
ハイオク仕様の車にレギュラーガソリンを入れたら?
それでは、本来であればハイオク(プレミアム)ガソリンが必要な圧縮比の高いエンジンに、レギュラーガソリンを入れたらどうなるのでしょうか?
これまでの説明でお分かりの通り、圧縮比の高いエンジンにレギュラーガソリンを入れるとノッキングが発生しやすくなります。
先ほども書きましたように、ノッキングが発生することでパワーが出にくくなりますし、最悪の場合はエンジンを壊してしまいます。
「ということは、ハイオク仕様のクルマにレギュラーガソリンは絶対に入れてはいけないのか!」
そんなふうに考える人もいるかも知れませんが、話はそう単純ではありません。
なぜなら、最近のエンジンはかなり優秀で、ノッキングセンサーなどによって簡単にはノッキングが起こらないような仕組みになっているからです。
そのため、多少のパワーダウンを気にしなければ、ハイオク仕様のクルマにレギュラーガソリンを入れて走っても、それほど問題はないと主張する人も少なからずいます。
実際に、ハイオク仕様の車にレギュラーガソリンを入れて何年間も問題なく走っている人はたくさんいますし、そのことでエンジンが壊れたという話も聞きません。
ですから、多少パワーがダウンする点さえ気にしなければ、レギュラーガソリンを日常的に使ってもそれほど問題はないといえるのかも知れません。
しかし、せっかく高性能のエンジンが搭載されているにもかかわらず、給油1回あたり300円~500円のガソリン代を浮かせるために、わざわざレギュラーガソリンを入れるのは本末転倒な気がします。
また、ハイオク仕様の車にレギュラーガソリンを使っていると、エンジンの故障が起こったときにメーカー保証が受けられなくなる可能性もありますので、その点だけは注意が必要です。
メーカーがハイオクガソリンを指定しているのには、やはりそれなりの理由があるわけです。
メーカーも公式ページではっきりと次のように書いています。
レギュラー指定のクルマにハイオクを入れることは特に問題がありませんが、ハイオク指定のクルマにレギュラーを入れた場合、本来の性能が発揮できない場合やトラブルの原因になる場合があるので、注意が必要です。
Q: プレミアムガソリン仕様車にレギュラーガソリンを使用しても問題ありませんか?
A:エンジン性能を十分発揮できなかったり、始動性が悪くなる場合があるので緊急以外の使用は避けてください。使用を続け万一エンジン不調などの不良を生じた場合は保証の対象外となるケースがあります。
引用:よくある質問~スバル
どうしてもハイオク仕様のクルマにレギュラーガソリンを入れて走りたいという方は、あくまでも自己責任で行う必要があります。
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そもそもハイオク(プレミアム)とレギュラーはどこが違うのか?
ガソリンにハイオクとレギュラーの2種類があることは分かっていても、そもそもこの2つの違いは何なのかについて、具体的に分かっている人はそれほど多くはないでしょう。
この2つのガソリンの大きな違いは、オクタン価にあります。
ハイオクガソリンは、文字通りオクタン価が高いハイオクタン価のガソリンということになります。
JISの規格では、レギュラーガソリンのオクタン価が89.0以上とされているのに対して、ハイオクガソリンのオクタン価は96以上となっています。
市販のガソリンのオクタン価は、レギュラーが90~91で、ハイオクは98~100となっています。
ちなみに、オクタン価というのは、ガソリンの成分のなかでも特にノッキングを起こしにくい「イソオクタン」を100とし、最もノッキングを起こしやすい「n-ヘプタン」を0として、ガソリンのなかにそれらが含まれる割合を示したものです。
つまり、オクタン価が高いガソリンというのは、イソオクタンがたくさん含まれているためにノッキングが起こりにくくなっているわけです。
ヨーロッパからの輸入車はなぜハイオク仕様なのか?
BMWやメルセデスベンツなどのオーナーになったことのある人はご存知だと思いますが、こうしたヨーロッパから輸入したクルマのほとんどはハイオクガソリン仕様になっています。
日本国内では、高性能エンジンを搭載しているクルマがハイオク仕様となるのが普通ですが、ヨーロッパからの輸入車の場合は、ごく普通のファミリーユースのクルマであってもハイオク仕様になっています。
「ヨーロッパ車のエンジンは国産のエンジンにくらべてノッキングを起こしやすいのか?」
そんなふうに勘違いする人もいるかも知れませんが、そうではありません。
これは、日本とヨーロッパにおけるガソリンのオクタン価の区分が違うことが原因です。
日本のガソリンは、レギュラーとハイオクの2種類しかありませんが、ヨーロッパでは「レギュラー」「レギュラー(ミッドグレード)」「プレミアム」の3種のガソリンがあります。
そして、それぞれのオクタン価はレギュラーが91、レギュラー(ミッドグレード)95、プレミアム98となっています。
ヨーロッパ車はオクタン価が95のレギュラー(ミッドグレード)を使用することを前提にエンジンが設計されていますので、日本国内のレギュラーガソリン(90~91)ではオクタン価が低すぎるのです。
そのため、ヨーロッパのクルマを日本国内で走らせるためには、オクタン価が98~100のハイオクガソリンを使用する必要があるのです。
つまり、日本国内ではミッドグレードのガソリンというものがなく、ガソリンの種類が2種類しかないことから、ヨーロッパからの輸入車はすべてハイオク仕様となってしまうのです。
レギュラーガソリン仕様にハイオクを入れたらパワーアップするか?
ハイオクガソリンは、レギュラーにくらべて1リットルあたり10円ほど高いので、レギュラー仕様の車にハイオクを入れたらなんだかパワーが出そうなイメージを持っている人もいるかも知れません。
もし、レギュラー仕様のクルマに、奮発してハイオクガソリンを入れた場合はどうなるのでしょうか?
結論からいってしまうと、普通にレギュラーガソリンを入れて走った場合と、何ら変わりはないということになります。
エンジンが故障するということもない代わりに、パワーがアップするということもありません。
先ほども書きましたように、ハイオクとレギュラーの違いはオクタン価にあります。
レギュラーガソリンのオクタン価が90~91程度なのに対して、ハイオクのオクタン価は98~100となります。
オクタン価が高いことによって得られる効果というのは、あくまでも引火点が高くなることで自然着火しにくくなるということです。
つまり、燃えにくくなるわけですから、ハイオクは値段高いガソリンだからといってパワーが出やすくなるということはありません。
クルマのエンジンというのは、入れるガソリンの種類によってパワーが上がるほど単純なものではないのです。
ハイオク仕様にレギュラーを入れるとパワーダウンしますが、レギュラー仕様にハイオクを入れてもパワーアップはしない、ということになります。
ただ、ハイオクを使うとわずかながら燃焼カロリーが多くなるといわれており、その結果として燃費が多少はよくなる可能性もありますが、1リットル当たり10円の価格差をカバーできるだけの燃費向上が期待できるかどうかは疑問です。
また、ハイオクガソリンには、エンジンのカーボンなどを除去する効果のある添加剤などが含まれています。
エンジンのクリーンナップ効果を期待するというのであれば、レギュラー仕様の車にハイオクガソリンをときどき使用してみるのもいいかも知れません。
ただし、コスト的にはカー用品店などで別途添加剤を購入して入れた方が安上がりな気もします。
文・山沢 達也
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