中古車のメーター改ざんは昔から悪徳業者の常套手段でした。
メーターを巻き戻して、実際の走行距離よりも少なく見せかけて車の価値をあげるという方法です。
アナログのメーターが主流だった時代には、メーターのアクリルパネルを外して人力で巻き戻しをしていましたが、デジタル表示が主流になった現在では、コンピューターを使って数字を書き換えるやり方に変わっています。
メーター改ざんによる不正販売(詐欺)を防ぐために、国土交通省は2004年(軽自動車は2009年)から、車検証に過去二回の車検時の走行距離を記載することを義務付けしました。
しかし、そうした対策にもかかわらず、2重車検という手法によって過去の実際の走行距離を車検証に記載しない方法で詐欺を働く業者があらわれるようになったのです。
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2004年以前はメーター改ざんの不正がやり放題だった!?
中古車の相場において、走行距離や年式が大きなウェイトを占めるというのは広く知られているところです。
年式が新しく、走行距離が少なければ中古車市場での評価が高くなるわけです。
しかし、車検証には初度登録年月が記載されていますから、これをごまかすことは出来ません。
それに対して、走行距離に関しては2004年(軽自動車は2009年)以前には、車検を受けた時点の記録しか残されませんでした。
そのため、メーターを改ざんされた車が車検を受けると、その巻き戻された数字だけが車検証に記載されたのです。
そのため、整備手帳などの記録が残っていないクルマに関しては、証拠がないためにいくらでも不正ができたわけです。
メーターを改ざんして本来の価値以上に見せかけた車を販売することは、法的には明らかに詐欺にあたるのですが、証拠をつかむことが困難なために摘発をされる業者というのは多くありませんでした。
車検証に旧走行距離表示を義務付けましたが
メーター改ざんによって詐欺行為を繰り返す悪質中古車販売業者への対応策として、国土交通省は2004年(軽自動車は2009年)から車検証に「最新の車検時の走行距離の記録」と「前回の車検時の走行距離の記録」の2つを記載することにしました。
しかし、世の中には悪知恵の働く人間がいるもので、2重車検という方法を使って過去の走行距離を分からなくする「ワザ」を編み出したのです。
本来であれば車検証に記載される走行距離は以下のようになるはずです。
[走行距離表示値]78,530km(平成28年11月7日)
[旧走行距離表示値]57,860km(平成26年11月12日)
このような表示であれば、前回の車検からくらべて走行距離が2万kmほど伸びていますので、不自然なところはありません。
ところが、以下のように記載されていると明らかに不自然です。
[走行距離表示値]26,530km(平成28年11月7日)
[旧走行距離表示値]57,860km(平成26年11月12日)
前回の車検のときにくらべて、走行距離が3万km以上少なくなっていますので、メーター改ざんを疑われても仕方のないところです。
そこで、彼らは同じ日に車検を2回取得するという「ワザ」を編み出したわけです。
その結果、車検証には以下のような記述が残ります。
[走行距離表示値]26,530km(平成28年11月7日)
[旧走行距離表示値]26,530km(平成28年11月7日)
その結果、平成26年11月12日時点での57,860kmという走行距離が記録上から抹殺されてしまうわけです。
これが、いわゆる2重車検によるメーター改ざん詐欺の手口になります。
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車検は何度受けても法律的には問題ありません
しかし、ここで素朴な疑問がわくと思います。
1日に2回も車検を取得して法的には問題ないのだろうか、という疑問です。
実は、こういった2重車検を罰する法律が日本にはないというのが実情なのです。
そもそも車検を受ける回数に法令の定めがなく、手数料や自動車重量税さえ支払えば何度でも車検を受けることが出来てしまうのです。
また、明らかに前回の車検のときに記録された数字よりも少ない走行距離のクルマが車検場に持ち込まれても「メーターが故障したので1度交換しています」と説明されれば、検査員はそれ以上追及できずにそのまま車検を通すしかないのだそうです。
しかし、そのような悪質業者の違法行為をいつまでも放置するわけにはいきません。
2015年の6月~7月にかけて、こうした2重車検によるメーター改ざん詐欺を繰り返していた悪質な2つの中古車販売グループが岐阜県警によって摘発されました。
彼らは主に軽自動車を中心にメーター改ざんした車の販売を繰り返し、約170台を売りさばいたといわれています。
彼らの手口はあまりにも悪質で、走行距離が21万kmの車を3万8000kmに改ざんしていたケースもあるようです。
平成29年1月から車検証に最大値を記載
車検証に「最新の車検時の走行距離の記録」と「前回の車検時の走行距離の記録」の2つを記載させるようにしたにもかかわらず、2重車検という手口によってメーター改ざんによる詐欺行為が繰り返されているという事実を受けて、平成29年1月より車検証に過去の走行距離の最大値を記載するよう義務付けられます。
現状の車検証の記録だと、2重車検によって過去の記録を抹消することができましたが、過去の最大値を残すことが義務づけられれば、2重車検の手口は非常にやりにくくなります。
たとえ、メーター改ざんをして2重車検を行ったとしても、平成29年1月以降の車検証には以下のように記載されることになります。
[走行距離表示値]26,530km(平成29年1月27日)
[旧走行距離表示値]26,530km(平成29年1月27日)
[最大値]57,860km(平成27年1月30日)
このような記載になっていれば、誰でもメーター改ざんを見抜くことができそうです。
しかし、これで2重車検による詐欺の手口を完全に防ぐことができるわけではありません。
極端な例ですが、平成27年1月30日の時点で走行距離が57,860kmだった車が、その後2年間で10万kmを走行して157,460kmになったとします。
この車のメーターを改ざんして57,860kmとした場合はどうでしょうか?
157,460kmを走っている車にもかかわらず、2重車検をした結果、車検証の記載は以下のようになってしまいます。
[走行距離表示値]57,860km(平成29年1月27日)
[旧走行距離表示値]57,860km(平成29年1月27日)
[最大値]57,860km(平成27年1月30日)
本当の走行距離である157,460kmは記録上から消えてしまいました。
このように国がさまざまな対策を講じても、悪知恵の働く詐欺師たちは、次々と新しい抜け道を見つけてきます。
われわれ消費者がそうした詐欺被害から身を守るためには、本当に信頼のおける中古車販売店からクルマを購入する以外になさそうです。
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