新車ディーラーが車を販売するにあたり、下取り車の処理方法として「溶かし」という技をつかうことがあるのをご存知でしょうか?
「溶かし」というのは、文字通り下取りをしたはずの車が溶けてなくなってしまったように感じることからそう呼ばれているようです。
そもそもこの「溶かし」という下取り方法は、具体的にどうやるのでしょうか?
また、売る側買う側にそれぞれどういったメリットがあるのでしょうか?
中古車が店頭に並ぶまでに3つの業者を経由します
新車ディーラーが下取りとして車を買い取った場合には、その車をカーオークション出品して市場ルートに乗せることになります。
そして、そのカーオークションで落札をした中古車販売業者が利益を乗せて、その車を販売することになります。
元のオーナーの手を離れた車が次のオーナーの手に渡るまでの間に、ディーラー、カーオークション、中古車販売業者と3つの業者を経由することになります。
当然ながら、流通の過程において各業者がそれぞれ利益を乗せることになりますので、元のオーナーが売った値段と次のオーナーが買った値段には大きな開きが出てくるわけです。
そこで、新車ディーラーが新たに車を買いに来た人をよそのお店に取られることを防ぐために、通常のルート以外のやり方で少しでも高く下取りをするために使う技が「溶かし」という方法なのです。
「溶かし」などというと違法行為のように感じるかも知れませんが、法的にはまったく問題のない方法です。
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ディーラーの営業マンvs新車を買いに来たお客
ディーラーに新車を買いに来たお客が、これまで乗ってきた車の下取り価格に不満を持つことは少なくありません。
「●●という買取り店ではもう少し高く買い取ってくれるといってましたよ」
新車ディーラーの営業マンは、お客から日常的にこのようなことをいわれているに違いありません。
お客の本音は、出来ればそのまま下取りに出したいことが多いものです。
なぜなら、新車を買う予定のディーラーに下取りに出せば、車を売ることと買うことの手続きが1か所で済んでしまうからです。
もし、買取り店と同じ金額であったならば、間違いなくそのままディーラーに下取りに出すことでしょう。
問題になるのは、ディーラーでの下取り額よりも買取り店での査定額が明らかに高い場合です。
こういった場合に、新車を買いに来たお客はディーラーの営業マンに対して先ほどのようなセリフを吐くわけです。
「せめて買取り店と同じ金額で下取りしてくれたら、そのままお宅で車を買いますよ」
ということを暗にほのめかしているわけです。
ディーラーにはディーラーの査定基準があり、必要以上に下取り車を高く査定してしまってその車がさばけなくなってしまうのが一番困るわけです。
そこで、登場するのが「溶かし」ということになります。
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カーオークションを飛ばして中古販売店と直接取引
自社で高い査定額を提示することができずに困ったディーラーの担当者は、日頃から付き合いのある中古車販売店に打診をすることになります。
つまり、カーオークションを経由せずに、中古車販売店に直接下取り予定の車を流してしまうわけです。
こうすることで、カーオークションに出品する場合にくらべて、大幅に経費を節約できるわけです。
何しろ、本来のルートであれば、ディーラー、カーオークション、中古車販売店という3つの業者を経由するはずの車が、直接中古車販売店のところ行くわけですから。
もちろん、中古車販売店にしても、ディーラー経由の状態の良い車を、オークションを通さずに安く手に入れることができるわけですから、メリットは大きいといえます。
ディーラーにしても、下取り車で利益を上げることはできなくても、新車を買う予定のお客をよその店に取られなくて済むというメリットがあります。
さらに車を売るお客も、当初ディーラーから提示された下取り額よりも高く車を引き取ってもらえるので満足ということになります。
このように、ディーラー、中古車完売店、車を下取りに出す人の3者ともメリットを享受できるのが「溶かし」という方法なのです。
結果として、新車ディーラーでは自分のお店では実際に下取りをしていないにもかかわらず、お客の下取り予定車をうまくさばいて「溶かしてしまう」わけですね。
一般の人には知られることのない「溶かし」という裏技
新車ディーラーが行う「溶かし」は、いわゆる正式な下取り行為ではありませんので、ディーラーの帳簿上では下取り車は存在しなかったことになります。
本来であれば自社で下取りをして、それをカーオークションに持ち込めば利益を出すことが可能だったわけですが、そこの部分は目をつむってもとりあえず新車が売れればよしとする考え方なのですね。
もちろん新車ディーラーの営業マンも、懇意にしている本当に信頼のおける中古車販売店としか「溶かし」を行うことはないようなので、一般の人がそういった車の下取り方法があるなどということには気がつかないのだと思います。
新車を買う予定の人がみんな「溶かし」を希望するようになってしまったら、新車ディーラーは下取り車で利益を出すことができなくなってしまいますからね。
「溶かし」は、どうしても下取り価格にこだわる一部のお客のための裏技的な方法ということになります。
ただし、「溶かし」といっても一般的な買取相場よりも安くては意味がありません。
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