子どもを車内に放置して熱中症で死亡させてしまうという痛ましいニュースを、夏場になると毎年のように耳にします。
炎天下に置かれた車内の温度が、耐えられないほどの高温になるということは、ドライバーなら誰もが知っているはずなのに、なぜ毎年のようにこのような悲劇が繰り返されるのでしょうか?
人の命にかかわることですので、ただの「無知」では済まされない問題です。
「ちょっとの間なら大丈夫だろう」などといった安易な気持ちは絶対に持たないことです。
私たちが想像する以上に、炎天下に置かれたクルマの車内温度は急激に上昇するということを、頭に叩き込んでおくようにしなければなりません。
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炎天下でエンジンを切ると15分で車内温度はかなり危険なレベルになります
炎天下に駐車した車内に子どもを放置してしまう親というのは、「ちょっとくらいの時間なら大丈夫だろう」と安易に考えてしまうのだと思います。
しかし、JAFがミニバンを使って行った実験によると、車内温度が25度のクルマのエンジンを炎天下で停止させてそのまま放置しておいたところ、わずか15分後には車内温度は40度ほどになったそうです。
引用:JAFホームページ
熱中症指数は危険レベルにまで達し、とても人間が車内にいられる状況ではありません。
さらにそのまま放置すると、エンジン停止から30分で車内温度は約45度にまで上昇してしまいます。
エンジンを切った瞬間はエアコンのおかげで快適な温度になっていた車内も、ほんのわずかな時間で危険レベルまで温度が上昇してしまうということがこの実験からお分かりになると思います。
わずか短時間であっても、子どもを炎天下の車内に放置することが、いかに危険性であるかということを知ってほしいと思います。
ちょっとの時間の買い物だから大丈夫という考えは絶対NGです
親が子どもを車内に放置してしまう状況というのは、どういった状況のときなのでしょうか?
多くの場合は、「ちょっと買い物をしてくる」という状況だと思います。
買い物をする際に、子どもが気持ちよさそうに寝ているので、起こすのはかわいそうだと思ってそのままにしてしまうというケースが多いに違いありません。
しかし、子どもを起こさずにそのまま放置することの方が、はるかに子どもにとってかわいそうだということを認識しなければなりません。
買い物といっても、コンビニであればすぐに車内に戻ってくるのが一般的でしょう。
ある調査によると、コンビニに来る客の平均的な滞在時間は2分~3分程度だそうです。
2分~3分程度であれば、炎天下であっても車内の温度が危険レベルにはならないだろうと考えがちです。
しかし、たまたま入った店内で気になる雑誌か何かを見つけてしまって、つい立ち読みなどをしてしまうと5分や10分の時間はすぐに過ぎてしまうことになります。
以下のJAFの実験結果をみても分かる通り、たった10分でも熱中症の厳重警戒レベルに達してしまいます。
引用:JAFホームページ
スーパーなどで買い物をするときの平均滞在時間は20分を超すといわれていますので、完全にアウトということになります。
なかには、子どもを車内に放置したままパチンコに熱中してしまって、我が子を死なせてしまうような親もいるようですが、そういった人は論外です。
炎天下に駐車をするときは、たとえ短時間のつもりであっても、必ず子どもを一緒につれていくということを徹底する必要があります。
サンシェードでフロントガラスを覆ってもほとんど効果は期待できません
炎天下における車内の温度上昇対策として、サンシェードでフロントガラスを覆ったりしている人もいるようですが、ほとんど効果は期待できません。
JAFの実験でも、フロントガラスをサンシェードで覆った状態のクルマの室内温度は、30分ほどで25度から約40度にまで上昇しています。
さらに2時間半後には、50度近くまで車内温度は上昇しています。
サンシェードをしない場合の2時間半後の車内温度は56度ほどになっていますので、多少は効果があったといえるかも知れませんが、ほとんど焼け石に水といっていいでしょう。
50度でも56度でも、人間が耐えられる温度ではないという意味では同じです。
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真夏でなくても車内放置をすると熱中症で死亡することがあります
真夏の炎天下に駐車をすると、車内温度は驚くほどの短時間で上昇してしまうということがお分かりになったと思いますが、だからといって真夏以外であれば大丈夫ということではありません。
実際に、2018年4月に茨城県那珂市にある商業施設で、生後3か月の乳児が車内に4時間も放置されて熱中症で亡くなってしまったという痛ましい事故がありました。
29歳の母親は、まだ4月なのでそれほど車内の温度はあがらないだろうとタカをくくっていたのでしょうか、窓を3cmほど開けてそのまま赤ちゃんを車内に放置してしまったようです。
しかし、たとえ4月であっても、車内に4時間も生後3か月の赤ちゃんを放置してしまうなどという行為は、親としてまさに言語道断といえます。
当日の最高気温は21度ほどだったようですが、それでも車内に4時間も子どもを放置状態にしておくと死亡してしまうこともあるということを、私たちは肝に銘じておく必要があります。
また、JAFのアンケートによれば、子どもを車内においたままクルマを離れたことがあると回答した人は28.3%もいたそうです。
毎年のようにこういった悲劇が繰り返されているにもかかわらず、なかなか小さな子どもを持つドライバーの意識は変わらないようです。
子どもを車内に放置する行為は立派な法律違反となります
小さな子どもを車内に置いたままその場を離れた経験のあるドライバーが28.3%もいるとうのは驚きですが、多くの人は自分のやっていることの重大性に気がついていないのでしょう。
小さな子どもを車内に放置するということは、立派な犯罪になる可能性があるのです。
刑法の218条では「保護責任者遺棄等」に関して以下のような条文があります。
「老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。」
つまり、小さな子どもを車内に放置したままクルマを離れてしまう親は、たとえ子どもが熱中症にならなかったとしても、保護責任者遺棄罪によって3ヵ月以上5年以下の懲役刑に科せられる可能性があるということです。
車内に放置されている子どもをみつけたらどうすべきか?
たまたま買い物に立ち寄ったお店の駐車場で、子どもが車内に放置されているのを見かけたときにはどうすればいいのでしょうか?
クルマに小さな子どもを放置した状態にしている時点で保護責任者遺棄罪になる可能性があるわけですから、110番をするのも一つの選択肢です。
しかし、先ほども書きましたように、夏場であればわずか15分ほどで車内温度は危険レベルにまで達してしまいます。
パトカーが到着する前に、子どもの命が危険な状態になってしまう可能性があります。
子どもがぐったりとしているなどして急を要するような状態のときには、110番したときに警察官に確認をしたうえで、クルマの窓ガラスを割るなどして子どもを助け出すことを考えなければいけません。
勝手に他人のクルマの窓ガラスを割ると、器物損壊の罪に問われる可能性があるので、必ず警察官の指示に従う必要があります。
また、お店の人に連絡をして、店内放送などで親に呼びかけをしてもらうというのも1つの手段です。
最近では、車内に放置された子どもの対策マニュアルを準備している商業者施設も多いので、そういったところであればお店の人にその後の対応を任せてもいいと思います。
文・山沢 達也
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