お酒を飲んでクルマを運転してはいけないことは誰もが知っています。
そして、ドライバーであれば、酒気帯び運転の罰則が非常の厳しいということも、よくご存じだと思います。
アルコールの濃度が0.15~0.25mg/Lまでの酒気帯び運転で違反点数13点の一発免停。
さらに、アルコールン濃度0.25 mg/L以上になると、違反点数25点で一発取り消しになります。
それにプラスして、50万円以下の罰金または3年以下の懲役という厳しい現実が待ち構えていますので、まともな思考回路をお持ちの人であれば、絶対に飲酒運転などしないはずです。
飲酒運転で検挙されることのリスクを考えたら、運転代行に払うお金などたかが知れているからです。
こんな厳罰が待ち構えているにもかかわらず、酒気帯び運転で検挙されるような人というのは、よほどのノーテンキかただのバカだと誰もが思うことでしょう。
しかし!!
お酒を1滴も飲んでいないにもかかわらず、酒気帯び運転で検挙される可能性があるのです。
「そんなバカな!」
とあなたは思うかも知れませんが、これは事実なのです。
実際に、お酒ではなく入れ歯安定剤が原因で酒気帯び運転で検挙されてしまった人がいるのです。
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酒気帯び運転で免許取り消し後に二審で逆転無罪となった男性
2015年の3月と5月に40代の男性が静岡県警により酒気帯び運転で検挙されました。
1回目の検挙のときはアルコール濃度が0.15mg/L以上あったことから免停になり、2回目の検挙のときにはアルコール濃度が0.3mg/Lあったことで免許取り消しになりました。
男性は、入れ歯安定剤の影響を主張しましたが、静岡地裁は前夜に飲酒をしていたことなどを理由に、有罪の判決を言い渡したのです。
しかし、一審の判決に納得のいかなかった男性は控訴をして、入れ歯安定剤に含まれるアルコール成分が原因であると強く主張しました。
その結果、二審の静岡高裁では男性の主張が認められて、2018年6月に逆転無罪が言い渡されたのです。
静岡高裁では、男性が入れ歯を装着してから20分~30分後にクルマを運転したことに着目しています。
実際に、静岡高裁が2018年3月に行った実験によると、男性が入れ歯を装着してから27分後の呼気検査で0.15mg/Lのアルコール濃度を検知しています。
その結果、男性が検挙されたときには、違反に問えるだけのアルコール分が体内にはなかった可能性があると静岡地裁は判断したわけです。
結果的にこの男性は無罪ということになりましたが、2015年5月に免許を取り消しにされてから、しばらくの間はクルマに乗ることができずに不便な生活を余儀なくされたわけです。
なんとも不運な男性だと他人事のように思っている人もいるかも知れませんが、明日は我が身の可能性も十分にあるのです。
なぜなら、入れ歯安定剤を使用したときだけではなく、口内洗浄剤によって口をゆすいだ直後の呼気も、十分に酒気帯び運転で検挙されるだけのアルコール濃度になってしまうからです。
入れ歯安定剤を使用して1時間後に0.35mg/L のアルコール濃度
静岡県警による酒気帯び運転での検挙で話題になった入れ歯安定剤ですが、実際にどれくらいのアルコール濃度になるのでしょうか?
ラジオライフという雑誌で実際に実験をしてみたところ、入れ歯安定剤の使用直後は、呼気のアルコール濃度が0.98mg/Lという非常の高い数字になっていることが分かりした。
30分後に測定をしても、商品によって濃度にバラつきはありますが、0.34mg/L~0.56mg/Lというかなり高い数字をキープしています。
0.25mg/L以上ということになりますから、違反点数25点で一発取り消しになってもおかしくない数字です。
60分経過したときのアルコール濃度も依然として高いままで、0.18mg/L~0.35mg/Lのアルコールを検出しています。
商品によっては、使用から1時間たったにもかかわらず免許一発取り消しレベルの濃度を維持しています。
一番検出量が少なかった商品でも0.18mg/Lとなっていますから、違反点数13点で一発免停の可能性がある濃度ということになります。
入れ歯安定剤を使用してから1時間程度までは、酒気帯び運転の濡れ衣を着せられかねない非常に危険な時間帯であるということがいえます。
入れ歯を装着するのは、通常は朝起きたときだと思いますが、そのままクルマを運転して通勤したりすると、無実であるにもかかわらず検挙される可能性があるわけです。
口内洗浄液を使用直後も酒気帯び運転になる可能性あり?
使用することによって、アルコール検知器に反応してしまうのは入れ歯安定剤だけではありません。
私たちが日常的に使用することの多い口内洗浄液でも、高濃度のアルコールを検出してしまうのです。
入れ歯安定剤を使用している人というのは総入れ歯の人なので、日常的に使用している人というのはそれほど多くはないでしょう。
しかし、口内洗浄液は普通に毎日使用しているという人も多いに違いありません。
LISTERINEやマウスウォッシュ、モンダミン、NONIO、ピュオーラといった商品が有名です。
ラジオライフ誌の実験データによりますと、これらの口内洗浄液を使用したあと9分後に呼気をチェックしたところ、0.13mg/L~0.29mg/Lのアルコールが検出されています。
5つの商品のうち、3つが0.15mg/Lを超えていますので、数字的には酒気帯び運転に該当することになります。
なかでもLISTERINEは0.29mg/Lとなっていますので、一発免許停止レベルのアルコール濃度ということになります。
ただし、口内洗浄剤の場合は、使用後15分経過すると0.05mg/L~0.08mg/Lと非常に低い数字にまで低下します。
そのため、使用したあと15分程度経過してからクルマの運転をするようにすれば、酒気帯び運転の濡れ衣を着せられることはまずないといえます。
この点が、1時間経過したあとも0.18mg/L~0.35mg/Lという高い濃度を維持している入れ歯洗浄剤との大きな違いといえます。
口内洗浄剤で気をつけなければいけないのは、コンビニなどに立ち寄ってトイレにいったあと、口内洗浄液でリフレッシュしてクルマに乗り込むといったようなケースです。
コンビニを出てすぐとのところで運悪く検問をしていたりすると、酒気帯び運転の疑いをかけられる可能性は十分にあります。
もし運悪くそういった状況になってしまった場合には、口内洗浄液を使用したことを説明して、15分後にもう一度測定をしてもらうようにするといいでしょう。
本当にお酒を飲んでいたら15分後にアルコール濃度が一気に下がるということはありませんので、2回目の測定で疑いは晴れるはずです。
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入れ歯安定剤による冤罪への対策はむずかしい
口内洗浄液の場合には、かりに検問にひっかかったとしても、15分後に再測定してもらえば疑いは晴れるはずです。
それでは、1時間以上たっても高いアルコール濃度を維持している入れ歯安定剤の場合はどうすればいいのでしょうか?
警察官に、入れ歯安定剤を使用していることを説明すればいいのでしょうか?
しかし、それだけで警察官が飲酒をしていないと認めてくれることはないと思います。
なぜなら、それを認めてしまうと、入れ歯安定剤を悪用する人が出てくるからです。
つまり、飲酒運転をしていても入れ歯安定剤を使っていれば検挙されることはない、などと考える悪知恵の働く人がかならずでてくるのです。
ですから、入れ歯安定剤を使っているという理由だけでは、警察としてもお酒を飲んでいないと公に認めるわけにはいかないのです。
そうなると、入れ歯安定剤を使用する本人がアルコール検知器に引っかかる可能性があるということをつねに意識する以外に、効果的な冤罪対策はいまのところないといえます。
入れ歯安定剤を使っている人は、市販のアルコールチェッカーを使って、クルマを運転する前にまめにアルコール濃度を測定するなどの自己防衛をする必要がありそうです。
入れ歯安定剤のメーカーも、2015年に男性が逮捕されたことを踏まえて、パッケージに「微量のアルコール分が含まれていますので検知器で検出される可能性があります」といった記述をして、注意をうながしています。
入れ歯安定剤使用時に運悪く酒気帯び運転の疑いをかけられたら?
もし、入れ歯安定剤を使用している人が、お酒を飲んだ記憶がまったくないにもかかわらず、運悪く酒気帯び運転の疑いをかけられた場合に、なんとか冤罪を回避する方法はないものでしょうか?
唯一可能性のある方法としては、警察官の目の前で入れ歯を外して口の中をよくあらったあと、数十分後に再測定をしてもらうという方法があります。
入れ歯安定剤を使用した状態のままだと、時間がたってもなかなかアルコール濃度が下がらないというのは、さきほどラジオライフ誌の実験データで紹介した通りです。
しかし、入れ歯を外したあとに口の中をきれいに洗浄して、入れ歯安定剤が口のなかにまったく残っていない状態にすれば、短時間でアルコール濃度は下がるはずです。
本当にお酒を飲んでいたならば数十分後に呼気のアルコール濃度が劇的に下がるなどということはありませんので、短時間で数字が下がれば飲酒をしていないことを主張できます。
人前で入れ歯を外すなどという行為は屈辱的ではありますが、無実であるにもかかわらず酒気帯び運転で検挙されるよりはましです。
あきらめずに、なんとか無実であることを認めてもらう努力はすべです。
ただし、自分は飲酒をしたつもりはまったくなくても、前の晩に飲んだお酒が翌朝まで残っていてアルコール検知器に反応することはよくあります。
このような場合は、入れ歯を外して口の中をきれいにしたとしても、短時間でアルコール濃度が下がることはありませんので、潔くあきらめるしかありません。
参考:前の晩に飲み過ぎると翌朝に酒気帯び運転で捕まる可能性があります
文:山沢 達也
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