高速道路を逆走するクルマのニュースを頻繁に目にするようになっています。
ニュースで紹介されるのは逆走車のほんの一部で、ここ数年は毎年250件ほど高速道路での逆走が起きています。
そのうちの5分の1にあたる50件ほどが事故につながっており、さらにそのうちの5~8件ほどが死亡事故につながっています。
いったいなぜ、高速道路の逆走は起きてしまうのでしょうか?
高速道路の逆走が死亡事故につながる確率は通常の43倍
国土交通省の資料によりますと、高速事故全体における死亡事故というのは、わずか0.3%にすぎません。
危険なイメージのある高速道路ですが、事故を起こしたとしても死亡事故にまでいたる割合は思ったほど高くないといえます。
しかし、逆走が原因で起こした事故の場合は事情がことなります。
逆走が原因の場合、死亡事故につながる割合は一気に13%にまで増えてしまうのです。
高速道路全体の事故に対する死亡事故の割合にくらべて、43倍も多いことになります。
死亡事故だけではなく死傷事故まで含めると、逆走事故全体の46%にもなります。
つまり、逆走事故を起こすと、2件に1件近くが死亡するか怪我をしているということになります。
高速道路を走るクルマは100km前後のスピードが出ていますので、そこに逆走車が侵入して来て正面衝突をするわけですから、死亡事故や死傷事故につながる可能性が高くなるのは当然です。
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逆走車のドライバーの45%は75歳以上の高齢者
高速道路を逆走した人の年齢の割合をみてみますと、75歳以上が45%と圧倒的に高くなっています。
65歳以上で75歳未満の人の割合が22%ですので、両方を合わせると67%にもなります。
つまり、高速道路の逆走をした人の3人に1人は65歳以上の高齢者ということになります。
ちなみに、免許所有者の年齢の割合をみてみますと、75歳以上の人は所有者全体の6%にすぎません。
このわずか6%の人たちが、逆走発生の45%を占めているのです。
いかに75歳以上の高齢者が高速道路の逆走にかかわっているかということがお分かりになるかと思います。
高速道路で逆走を起こした運転者の26%は逆走の認識がない
逆走が起こったときのドライバーの認識に関する調査結果では、過失が43%、認識なしが26%、故意が22%となっています。
過失と認識なしを合わせると69%となりますので、3人に2人以上は何らかの勘違いで高速道路を逆走してしまったことになります。
認識なしの人が26%いますので、そもそも自分が高速道路を逆走してしまったということすら理解できない人が4人に1人いるということになります。
つまり、その26%の人にとっては、自分は正しく走行していて他のクルマがみんな逆走をしていると感じているわけです。
そこまで認知機能が低下してしまっている人が、はたして公道上でクルマを走らせていいものかどうかを真剣に考えなくてはいけないと思います。
実際に、逆走をして警察官に検挙されたおじいさんが、「俺は何も違反はしていない」と逆ギレするケースもあるのだそうです。
そこまでひどい状況だと、そのおじいさんが悪いというよりは、免許証の更新を許可してしまった公安委員会に問題がありそうです。
75歳以上の人が運転免許証を更新する際には、認知機能検査が義務付けられるようになりましたが、それが本当に機能しているのがどうか疑問になります。
地方によっては、クルマ以外に交通手段がないために、認知機能に多少の問題があっても、更新を認めてしまっているようなところもあるといわれています。
高齢者の日常の足を奪ってしまうのは忍びないと感じてしまうのかも知れません。
クルマがないと生活できない地域に住んでいる高齢者たちの交通手段をどうするかということを、行政は真剣に考えなければならないときにきているのではないでしょうか。
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過失で逆走をしてしまう人の58%は自分でも原因が分からない
高速道路を逆走している認識がない人というのは、そもそも運転免許証を所持していてはいけない人なので、クルマの運転をすることそのものが問題です。
それでは、逆走してしまった人の43%を占める「過失」というのは、どういった状況で起こるのでしょうか?
過失というのは、うっかりと間違って逆走をしてしまったけれども、自分が逆走をしてしまったことはしっかりと認識しているということです。
実は、この過失で高速道路を逆走してしまった人の半数以上にあたる58%は、警察官の聴取に対して「要因が不明」と回答をしているのです。
つまり、なぜ逆走をしてしまったのか、自分でもよく分からいということです。
たとえば、一般道を走行しているうちに、何らかの勘違いがあって、インターチェンジの出口から侵入をしてしまったようなケースです。
自分では逆走をしているということに最初はまったく気がつかず、対向車にクラクションを鳴らされたりパッシングをされたりして、事の重大さに初めて気がつくわけです。
こうしたケースの場合は、侵入禁止の看板を見逃したりなどのあきらかに重大なミスがあるはずなのに、本人にはその自覚がまったくなわけですから、まさに狐につままれたような心境になるでしょう。
過失で逆走をしてしまう人の7割は、高速道路の利用頻度の低い人とのデータがあります。
一般道のような感覚で何も考えずに左折をしてしまって、高速道路の出口から侵入してしまうというケースも少なくないのでしょう。
最近は、カーナビの指示を間違えて反対車線側に入ってしまうというケースも増えているようです。
確かにカーナビは便利ですが、あまり過信をし過ぎて実際の看板を見逃してしまったのでは本末転倒となってしまいますので注意が必要です。
また、逆走を起こしてしまう人の33%は65歳未満の、いわゆる高齢者ではない人です。
そういった特に認知機能に問題がないような人であっても「うっかり」によって逆走を起こしてしまう可能性があるわけですから、過失による逆走に関しては認知機能と切り離して考える必要がありそうです。
故意に逆走をする悪質なケースも22%の割合であります
高速道路を逆走してしまった理由として、「過失」や「認識なし」が7割近くを占めますが、故意に逆走をするという悪質なケースも22%の割合であります。
故意に高速道路を逆走する人の理由で最も多いのが「道を間違えて戻ろうとした」というもので、故意で逆走をする人の53%を占めます。
高速道路の場合、道を間違えたと気がついても一般道のように簡単にUターンをするということはできません。
次のインターチェンジまでそのまま走って、いったん高速を降りてから引き返す以外に方法はありません。
しかし、次のインターチェンジまでの距離が10kmを超えることも少なくないため、往復だとかなりの距離を走ることになってしまいます。
また、高速料金もその分よけいに支払わなければなりません。
高速道路で道を間違えるということは、時間的にも料金的にも大きなロスになることは間違いありません。
だからといって、高速道路を逆走するなどというのは言語道断といえます。
たかが数十分の時間的なロスや数百円の高速料金のために、命がけで高速道路を逆走するなどという行為は、常識のある人には理解不能です。
自分の命が危険にさらされるのは自業自得ですが、まったく関係のない他人の命まで巻き添えにしかねない行為は、絶対に許されるべきことではありません。
逆走をしたときの罰則~悪質な場合は人生を棒に振ります
非常に危険を伴う高速道路の逆走ですが、実は事故を起こさなければ思った以上に罪は軽いのです。
違反の名目としては通行区分違反にあたり、違反点数2点と9千円の反則金が科せられるのみです。
しかし、これが逆走で事故を起こした場合には事情が大きくことなります。
逆走したあげくに人を死傷させた場合は、たとえ過失であっても業務上過失致死傷罪となり、7年以下の懲役もしくは禁固又は100万円以下の罰金が科せられることになります。
これが故意に逆走をして死傷事故を起こした場合には、さらに重罪の危険運転致死傷罪が適用される可能性が高くなります。
危険運転致死傷罪が適用されると、死亡させた場合は1年以上20年以下の懲役刑,負傷させた場合は15年以下の懲役刑となります。
つまり、故意に高速道路を逆走して人を死傷させた場合は、人生を棒に振ってしまう可能性が高くなるということです。
たとえどんな事情があっても、高速道路を走行中に逆走して引き返そうなどとは、間違っても考えてはいけません。
文:山沢達也
参考資料:逆走事案のデータ分析結果~国土交通省
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