最近は、自然災害が発生することが非常に多くなっているようです。
「備えあれば憂いなし」というのはよく使われることわざですが、人間というのは「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という生き物でもあります。
実際に自然災害の被害を受けたり、被害にあわれた方の様子をニュースで見たりすると、日頃からの備えが大切であることを誰もが痛感することになります。
こうした自然災害が起こった直後は、防災グッズが飛ぶように売れるのだそうです。
しかし、しばらくするとそうした危機意識は薄れてしまい、いざというときにあわてることになるのが人間という生き物です。
そんな、防災対策は常日頃からやらなければならないと認識しつつも、なかなか実行できないという人におすすめなクルマが、ハイブリッド車です。
なぜなら、ハイブリッド車に搭載されている100Vコンセントによって、停電中であってもガソリンさえあればずっと電気製品を使うことが可能になるからです。
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ハイブリッド車というのはある意味では小さな発電所です
ハイブリッド車には、100Vコンセントが搭載されている車種がけっこうあります。
ハイブリッド車は大きなバッテリーを備えていますので、そのバッテリーからの直流電力をインバーターによって一般家庭と同様の100Vの交流電力に変換して出力することができます。
ハイブリッド車に搭載されているコンセントの定格出力は1500Wとなっていますので、一般家庭で使っている家電品であればほぼ問題なく使用することができます。
ただ、ハイブリッド車がいくら大きなバッテリーを搭載しているといっても、その容量には限りがあります。
冷蔵庫や炊飯器などの使用電力の大きな家電品を頻繁に使うと、バッテリーに蓄えた電力だけではすぐに底をついてしまいます。
しかし、ハイブリッド車にはエンジンというものがついています。
ここが、いわゆる電気自動車とは違うところです。
バッテリーに蓄えた電力がどんどん減ってしまっても、ハイブリッド車の場合はガソリンさえあればあらたな電気をどんどん発電できるのです。
つまり、ハイブリッド車は、災害時には小さな発電所として活躍することができるのです。
ハイブリッド車がガソリン満タン時に使用することができる電力量
ハイブリッド車は、ガソリンさえあればずっと電気を供給し続けることができるわけですが、実際に満タン状態からどれくらいの量の電気を使用することができるのでしょうか?
実際に、災害時に使用できたら便利だと思われる必要最低限の家電品を、ハイブリッド車の電力でまかなった場合を想定して考えてみたいと思います。
災害時に必要最低限の家電品を使った場合の消費電力
電力の使用量は、使用する電気機器や使用する時間によっても異なりますので、例として次のようなケースを想定して考えてみます。
●ご飯を1日に2度炊く。
●40インチクラスの液晶テレビを1日2時間ほど見る
●洗濯機を1日1回使う
●550Lの冷蔵庫をつけっぱなしにする
●夜間に4時間だけ居間の照明を点ける
災害時にこれだけでも電気が使えれば、十分に助かるに違いありません。
具体的に見ていきましょう。
5合炊きの炊飯器の場合、1回あたりの消費電力は150Wh程度となりますので、1日に2回ご飯を炊くと300Wh程度の電力を消費します。※保温機能は使わないものと想定しています。
40インチクラスのテレビの消費電力は120Wほどとなりますので、2時間見たとすると240Whの電力を消費することになります。
全自動の洗濯機を1日1回使うと(乾燥機は使用しない)、150Whになります。
550Lの冷蔵庫を1日中使ったときの消費電力は800Whほどになります。※最新の冷蔵庫であればもう少し少ない。
居間の蛍光灯器具を4時間点灯させたときの消費電力は、300Whほどになります。
これをトータルしてみますと、1日に使う電力量は1790Whということになります。
ちなみに、スマホなどの充電もすると思いますが、スマホの充電における消費電力量は7Whほどですので、計算にあたっては考慮しなくてもいいほどの微々たるものです。
これらの1日あたりに使う消費電力量に対して、プリウスPHVのガソリンタンクを満タンにした状態で使うことのできる電力量は40kWhとなっています。
これを単純に計算すると、20日以上は電気を使うことができることになります。
もちろん、クルマを走らせてしまったらガソリンを消費してしまいますので、使える電気の量は減ってしまいます。
あくまでも、プリウスPHVを、発電機として使った場合の日数になります。
災害時に20日間以上も停電が続くというのは非常に稀だと思いますので、プリウスPHVが家にあれば必要最低限の家電は問題なく使えるということになります。
常にハイブリッド車のガソリンタンクが満タンとは限りません
停電してしまっても、必要最低限の電気を20日間以上も使えるというとであれば、大いに安心できると誰もが考えがちですが、ちょっと待ってください。
この20日間以上というのは、あくまでもガソリンタンクが満タンの状態を想定してのものです。
当然のことながら、タンク内に残っているガソリンの量が少なければ、電気を使うことのできる日数は少なくなります。
つまり、ガソリンが半分しか残っていなければ、10日ほどしか使えないということになります。
もちろん、10日間でも十分といえますが、たまたま災害時に運悪くガソリンタンクが空に近い状態になってしまっていることもあり得ます。
その場合は、どれくらいの電気を使うことができるのでしょうか?
プリウスPHVのバッテリー容量は4.4kWとなっていますので、バッテリーがフル充電状態になっていれば2日程度は使えそうです。
しかし、こちらもガソリンの場合と同様にフル充電になっているとは限りませんので、充電のチャージ状況に応じて使える電気の量は少なくなります。
こういったことを総合的に考えてみますと、ガソリンタンクがほぼ空で、なおかつバッテリーも半分程度しかチャージされていない場合だと、さすがのプリウスPHVといえども1日程度しか電気を使用することができないといえそうです。
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災害時に100Vコンセントが使えるプリウスPHV以外の車種
災害時に、プリウスPHVの100Vコンセントで必要最低限の電気機器を使用した場合について説明させていただきましたが、プリウスPHV以外に同様の使い方ができる車種はあるのでしょうか?
100V電源が装備されているハイブリッド車
ハイブリッド車で、1500Wの100V電源を供給できる車種は、オプションでの装備が可能な車種も含めるとたくさんあります。
トヨタの場合ですと、普通のプリウスやプリウスα、ヴェルファイアハイブリッド、アルファードハイブリッド、エステマハイブリッド、SAIハイブリッド、ハリアーハイブリッドなどになります。
同じトヨタのハイブリッド車であっても、アクアやノア・ヴォクシーなどには残念ながら100Vコンセントは装備されていません。
トヨタ以外のメーカーですと、ホンダのステップワゴンハイブリッドの上位グレードやオデッセイハイブリッドなどが100Vコンセントによる電源供給が可能となっています。
電気自動車も100Vの電源供給が可能か?
ハイブリッド車以上の大きなバッテリーを搭載しているのが電気自動車です。
電気自動車の場合、ハイブリッド車のようにエンジンを使って充電することができませんから、必然的にバッテリーの容量は大きくなります。
日本国内で販売されている電気自動車というと、日産のリーフを思い浮かべる人がほとんどだと思います。
しかし、残念ながら日産リーフには、100V電源は装備されていません。
日産リーフのバッテリー容量は40kWもありますので、もし100Vコンセントを備えていたら、プリウスPHVと同じくらいの電力をまかなうことが可能です。
ただし、リーフには100Vコンセントは装着されていない代わりに、「LEAF to HOME」というシステムが用意されています。
これは、専用のパワーステーションを設置することによって、バッテリーの電気を一般家庭で利用することができるというものです。
ちなみに、日産といえば、ノートやセレナに搭載されているe-POWERが話題となっていますが、こちらも残念ながら100Vコンセントは使えない仕様になっています。
燃料電池車のトヨタMIRAIはプリウスPHVの1.5倍の電力供給が可能
トヨタには、「MIRAI」という燃料電池車があります。
燃料電池車というのは、水素を燃料として発電をし、モーターを駆動させる仕組みの電気自動車です。
水素を供給できるスタンドの数が非常に少ないために、燃料電池車はまだまだ普及はしていません。
参考記事:燃料電池車が主流になる時代は本当に来るのだろうか?
そんな燃料電池車であるトヨタの「MIRAI」ですが、水素を満タンにした状態だと60kWhもの電力を供給することが可能です。
これは、先ほどの事例で紹介したプリウスPHVの1.5倍です。
事例のように災害時に必要最小限の電気機器を使用した場合、なんと30日間にわたって電気が使えることになります。
文・山沢 達也
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