生活保護を受けている人は、一般の人にくらべて生活が制限されるのが普通です。
特に、贅沢品と呼ばれるものを所有することは認められていません。
基本的にクルマも贅沢品であるという考えから、どこの自治体も生活保護受給者の所有をみとめていないはずです。
しかし、ある条件をみたす生活保護受給者に限り、例外的にクルマを所有することを認めてもらえることがあるようです。
その条件というのは、どういった条件なのでしょうか?
生活保護受給者がクルマの所有を認められない理由
生活保護受給者がクルマの所有を認めてもらえないのには、それなりの理由があります。
まず、クルマというのは思った以上に維持費がかかるものです。
ガソリン代やメンテナンス費用、保険料、車検代など、私たちの生活費の中でクルマを維持するための費用はかなりのウエイトを占めています。
最低限の生活費しか支給されていないはずの生活保護受給者が、そういったクルマの維持費用を負担するのは基本的に不可能だろうという考え方があるわけです。
また、万が一生活保護受給者が交通事故を起こしてしまったときの、賠償能力の問題もあります。
自賠責保険だけでは補いきれないほどの賠償金額が発生してしまった場合、被害者が泣き寝入りをしなければならない状況はさけなければなりません。
かといって、ギリギリの生活をしているはずの生活保護受給者が任意保険に加入するというのは、相当にハードルが高いはずです。
もうひとつ、生活保護受給者がクルマを所有できない理由として、生活保護を受給していない低所得世帯とのバランスの問題があります。
生活保護を受給していないすべての人が、十分な所得があるわけではありません。
かなり困窮した状態であっても、生活保護を受けずにがんばっている人もたくさんいます。
そういった人たちのことを考えた場合、贅沢品であるクルマを生活保護受給者が所有することに対して世間の目が厳しくなることは当然でのことです。
こうしたさまざまな理由により、生活保護受給者は基本的にクルマの所有を認められていないのです。
生活保護受給者であってもクルマの所有を許可される条件とは?
生活保護受給者は、基本的にクルマを所有することを認められていないのですが、ある条件を満たすことにより認められることがあるようです。
いくつかの条件があるのですが、1つずつ具体的に説明していくことにしましょう。
・クルマがないと通勤できない人の場合
電車やバスなどの公共の交通機関が発達している地域であれば、特にクルマを所有していなくても生活に不便を感じることはないでしょう。
ところが、地方にいくと状況は一変します。
地方では、クルマはまさに日常の足ともいえるもので、一家に一台どころか大人一人に一台のクルマ所有が常識になっています。
しかし、そんな地方においても、ただ不便だからという理由だけで生活保護受給者のクルマの所有が認められるわけではありません。
バス停まで歩いて1時間以上かかるとか、バスが1日数本しか走っていないなどのかなり厳しい条件でないと、なかなか所有は認めてもらえないというのが現実です。
ところが、クルマがないと通勤ができないという状況の人であれば、所有を認めてもらえることがあります。
もちろん、自宅からバスなどで通勤することが明らかに不可能であると認められた場合です。
バス停までの距離が遠くて毎日の利用は困難であるとか、仕事が終わる時間にバスの最終が間に合わないといったような場合です。
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・クルマがないと病院に通うことができない場合
何らかの持病を抱えていて、定期的に病院に通院しなくてはならないのに、公共の交通機関による通院が困難な場合も、クルマの所有を認めてもらえることがあります。
身内に、病院までの送迎をしてくれる人が誰もいないということと、なおかつクルマの維持費を身内が援助してくれるということが条件になります。
もし、生活保護費のなかから普通にクルマの維持費を捻出できてしまうということになれば、そもそも生活保護費を払い過ぎているということになってしまい、示しがつかなくなってしまうからです。
通院のためのガソリン代は、申請すれば生活保護費に上乗せして支給してくれるようです。
もともと、生活保護を受給している人であれば、病院に通うための電車代やバス代は支給してもらえますので、ガソリン代の支給もそれと同じ考えなのでしょう。
・障害者の場合も例外的にクルマの所有が認められることがあります
障害者の方が、通勤や通学、通院などにクルマが必要ということであれば、所有を認めてもらえることが多いようです。
この場合の障害というのは、身体的な障害だけに限りません。
精神的な疾患により人混みが苦手で、電車やバスの利用は難しいというケースでも、クルマの所有が認められることがあるようです。
このケースの場合も、身内の誰かがクルマの維持費を負担してくれることが条件になります。
また、通院にクルマを使う場合には、ガソリン代も支給されることになります。
生活保護受給者がクルマの所有を認められても利用は制限されます
生活保護受給者だからといって、絶対にクルマを所有できないということではないということがお分かりになったかと思います。
ある条件さえ満たせば、クルマを所有することは可能になるわけです。
しかし、だからといって一般の人と同じように好き放題にクルマを使っていいということではありません。
生活保護受給者は、利用を認めてもらった目的以外のことに、クルマを使うことはできません。
たとえば、通勤に使うという条件でクルマの所有を認めてもらった人が、レジャーや買い物などにクルマを利用することはできないということです。
ただし、実際にはクルマの所有を認められてしまうと、本来の目的だけに使用している人はまれで、一般の人と同じような使い方をしている人がほとんどだと思います。
役所のケースワーカーも、そこまでは追跡して調査はできないようです。
本来の目的以外に利用していることがばれるのは、近所の人などからのタレこみによることがほとんどだといわれています。
しかし、通勤目的のクルマで買い物をしていると指摘されても、たまたま仕事帰りにスーパーに立ち寄っただけと主張されてしまえばそれまでです。
役所の人もよほど悪質な場合を除いて、1人ひとりの生活保護受給者に対して、わざわざ尾行調査までして裏付けをとることはしないようです。
条件を満たさない人がクルマの処分を免れるためには?
生活保護の申請をすると、基本的にはクルマを処分することを求められます。
これまで紹介した「ある条件」を満たす人であれば、生活保護を受けつつクルマを所有することができますが、それ以外の人はすぐにクルマを手放さなければなりません。
しかし、これまで日常の足として使っていたクルマを、突然手放すというのは不便に感じるに違いありません。
そんなときには、ダメもとで次のようなセリフを面接官に言ってみるといいでしょう。
「半年以内に仕事を探して生活保護の受給をやめますから、クルマの処分はそれまで待ってください」
どう考えてもその場しのぎの言いわけにしか聞こえませんが、意外なことにそれを認めてくれる面接官も少なくないようです。
もし、半年以内に生活保護の受給をやめられなかったら?
そこまでは責任持てませんので、自分で考えてみてください。
文・山沢 達也
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