いまや高速道路を利用する人の9割以上がETCを使っているといわれています。
以前は、料金所のところで渋滞が起こるのが普通でしたが、最近ではそういった光景をまったく見かけなくなりました。
料金所の手前にならんだクルマの最後尾に追突するなどという事故も、かつては頻繁に起こっていたものです。
また、利用する人にとっても、料金所手前であわてて財布を探す必要もなくなり、本当に便利になったと感じる人が多いと思います。
しかし、そんな多くの人に恩恵を与えているETCですが、料金の未払い件数が年間31万件もあるのだそうです。
参考:ETC不払いなお31万件 未挿入や期限切れ大半~神戸新聞
いったい、なぜそれほど多くの料金未払いが発生してしまっているのでしょうか?
ETC料金未払いの件数は2006年の96万件がピーク
ETCは2001年から本格的に運用が開始されましたが、利用者の増加にともなって料金未払い件数もどんどん増えていき、2006年のピーク時にはなんと96万件も発生しています。
現在では、ETCの普及率は9割を超えていますが、2006年当時の普及率はまだ6割程度でした。
いかに2006年当時は料金の未払いが多かったかが想像できます。
その後どんどんETCは普及していくことになりますが、逆に料金の未払いは徐々に減ってきており、2016年の時点では31万件となっています。
不正対策用カメラの設置や警察への協力依頼、周知ポスターによる広報活動などの結果が徐々に表れてきているのだと思います。
利用者が5割増しになっているのに、未払い件数は3分の1に減っているわけですから、そういった対策が非常に有効だったのだと思われます。
しかし、それでもなお、31万件の料金未払いが発生しているという事実があるわけです。
料金未払いの原因の多くは不正ではなくうっかりミス
ETC料金の未払いというと、どうしても踏み倒しというイメージがあると思います。
もちろん、不正によって踏み倒しをする悪質なドライバーもいますが、多くの場合はカードの挿入忘れや期限切れ、車載器の不具合など、うっかりミスや機械の故障が原因となっているようです。
カードをずっと挿入したままにしている人は、期限切れをうっかりしてしまうことが多いと思います。
期限切れになる少し前に、カード会社から新しいカードが届くのが普通ですから、その時点で忘れずにカードを入れ替えておくことが大切です。
なかには、自分が料金未払いで料金所を通過してしまったことに気がつかずに、高速道路会社から未課金であるという連絡を受けて、初めて気がつくという人も少なくないようです。
通常はカードが未挿入であったり期限が切れていたりすると、ETCレーンのゲートが開かないのですぐに気がつきますので、そういった人はおそらくクレジットカードの支払いが滞っていたり限度額いっぱいまで使っていたりしているのだと思います。
ETCのゲートは、カードが未挿入であったり期限切れだったりした場合には開きませんが、クレジットカードの支払いが滞っていたりする場合には、普通に開いてしまいます。
頻繁に高速道路利用する人よりも、めったに利用しない人の方が、こうしたうっかりミスをしてしまうことが多いようです。
最近では、カードの挿入忘れや期限切れを音声で知らせてくれる車載器を搭載したクルマも増えてきているようですが、ときどきは自分自身で確認してみるようにした方がいいでしょう。
ETCカード未挿入や期限切れカードで高速道路に侵入してしまったとき
注意をしているつもりでも、人間である以上うっかりしてしまうことはあるかも知れません。
もし、走行中にそういったうっかりミスに気がついた場合はどうすればいいのでしょうか?
各高速道路会社によって対応は異なるようですが、高速を出るときにETCレーンに入るのではなく、有人のレーンに入って係員に相談をしてみましょう。
その場で事情をお話しして、現金で支払えば問題ないことが多いようです。
もし手持ちの現金がないような場合であっても、ETCカードを提示して、後日支払うことも可能なようです。
参考:不注意で料金所を通過してしまった。後から料金を支払うにはどうしたらよいですか?
意図的にETCレーンを不正通行すると2倍の料金を請求されます
ETCは年間31万件の料金未払いがあるわけですが、その8割~9割はカードの未挿入や期限切れといったうっかりミスだといわれています。
しかし、悪意を持って不正をする人がまったくいないわけではありません。
もし不正通行をしてしまった場合には、どういったことが起こるのでしょうか?
高速道路を不正通行した場合には、本来支払うべき料金の2倍を支払うというのが基本になります。
これは、道路整備特別措置法の第26条に記載されています。
ETCによる不正利用だけではなく、高速道路の不正利用すべてが対象になります。
また、不正利用による2倍の料金の督促に対して、期限までに支払わなかった場合には、年10.75%の割合で遅延金が発生することになります。
年利10.75%というのは、かなりの高金利ですので、そのまま滞納を続けると支払金額がどんどん増えていってしまうことになります。
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不正利用した場合には、さらに罰金も科されることになります
高速道路の料金を不正に踏み倒そうとすると、本来の料金の2倍の支払い義務が生じるだけではなく、支払が遅れれば高利の延滞金まで発生してしまいます。
それだけでも大きな出費となりますが、それだけでは済みません。
悪質な場合には、特措法の第59条にもとづいて刑事罰も合わせて受けることになります。
刑事罰ですから、当然ながら警察のお世話になることになります。
高速道路の不正利用の場合には、30万円以下の罰金ということになっていますので、高速道路の不正利用が割に合わないものであるということがお分かりになるかと思います。
悪意のある不正行為と判断されるのはどういったケースか?
ここまで読んでいただいて、高速道路の不正利用は割に合わない行為だということが理解できたかと思います。
もちろん、カードの未挿入や期限切れなどのうっかりミスなどでは、不正利用と判断されることはありません。
不正利用と判断されるのはどういったケースなのでしょうか?
まずは、ゲートが閉まっている状態にもかかわらず、強行突破した場合です。
強行突破することでバーが破損したりした場合は、さらにその修理代金も請求されます。
また、有人レーンを、係員の承諾を得ないまま通行料金を支払わずに通行した場合も、同様に不正行為とみなされます。
普通車など通行料金の安い車両でセットアップされたETC車載器を、通行料金が高いトラックなどの車両に載せ替ることによって本来の通行料金を免れようとする人もいますが、当然ながらこれも悪質な不正行為とみなされます。
これらのすべての行為は、意図的に料金の支払いを免れようとしているわけですから、厳しく処罰されるのは当然のことといえます。
悪質性が非常に高い場合には詐欺罪が適用されることもあります
高速道路の利用料金を不正に免れようとする者に対しては、罰金刑が科されることもあるということを書きましたが、悪質性が高い場合にはより刑罰の重い詐欺罪が適用されることもあります。
高速入り口の情報が記録されていないETCカードを出口係員に提示して、実際の入り口とは異なるところから乗ったと主張して通行区間を偽って本来支払うべき料金を免れていた人が、平成26年1月に兵庫県警によって詐欺容疑で逮捕されています。
詐欺罪で起訴された場合、10年以下の懲役という非常に重い刑罰が待ち構えています。
たかが高速道路の不正利用と考えるかも知れませんが、一歩間違うと人生を棒に振ってしまうことがあるということを肝に銘じておきたいものです。
文・山沢 達也
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