クルマのライトは、上向きと下向きを切り替えられるようになっています。
多くのドライバーは常に下向きにして走っているのではないかと思います。
ひょっとしたら、これまで1度もクルマのライトを上向きにしたことがないというツワモノもいるかも知れません。
しかし、常時ライトを下向きにしたままで走っていると道路交通法違反になることをご存知でしょうか?
つまり、法律上は車のライトを上向きにして走るのが基本らしいのです。
下向きのままで走っていると反則金6,000円となります
あたりが薄暗くなっているにもかかわらず、ときどきライトをつけないで走行しているクルマを見かけます。
街路灯や街の明かりで道路自体はそれほど暗くないことも多く、自分自身はそれほど危険を感じないのでしょうが、他のクルマにとってはライトをつけないで走っているクルマは闇に紛れて気がつきにくいため大迷惑です。
そんな大迷惑な無灯火状態で走っているクルマが、道路交通法違反になるのは誰もが理解できると思います。
無灯火で違反切符を切られると、反則金6,000円と違反点数1点の処分が待ち受けています。
ところが、ライトをずっと下向きにしたまま走っているだけで、この無灯火と同様の処罰を受ける可能性があるのです。
道路交通法第52条に以下のような記述があります。
「車両等が、夜間、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない」
ここで書かれている「政令」というのは、道路交通法施行令第20条のことで、そこには「他の車両等と行き違う場合等の灯火の操作」として以下のように書かれています。
「すれ違い用前照灯又は前部霧灯のいずれかをつけて走行用前照灯を消すこと」
ここに書かれている「すれ違い用前照灯」というのは、下向きライトのことであり、「走行前照灯」というのは上向きライトということになります。
つまり、これらの法律をそのまま素直に解釈すると、前を走っているクルマや対向車の迷惑になるときは下向きにして走行し、それ以外のときには走行用前照灯をつけて(ライトを上向きにして)走りなさいということになります。
これに違反をすると「減光等義務違反」ということになり、無灯火の場合と同様に、反則金6,000円と違反点数1点の処分が科されることになります。
スポンサーリンク
ロービーム(下向き)だとブレーキが間に合わない可能性も
ライトを上向きにしたままで走ると100メートル先まで照らすことができますが、下向きにしてしまうと40メートルほどまでしか照らすことができません。
普段ロービームしか使っていない人は、一度ハイビームにしてみると分かりますが、その明るさは別世界です。
ハイビーム(上向き)にして走った方が、間違いなく安全に走れそうだということは誰もが実感できると思います。
ロービームだと40m先までしか照らすことができないわけですから、40mより先に道路を横断している人などがいても気がつかない可能性があります。
クルマが止まることのできる停止距離は、時速60kmのときで37mだといわれています。
もちろん、ドライバーや車種によっても実際の停止距離は変わりますし、タイヤが摩耗していたり雨が降っていたりする場合には停止距離がのびてしまうことになります。
つまり、下向きライトで照らせる範囲だと、時速60kmで走っているクルマが道路を横断中の歩行者を発見しても停止できない可能性があるということになります。
こういった事情から、クルマはハイビームで走ることが基本とされているわけです。
参考記事:ハイビームで走ることで夜間の交通事故が減るって本当?
市街地では上向きと下向きの切り替えは実質的に困難
確かに、他のクルマがほとんど走っていないような空いた道路であれば、ハイビームにして走行したほうが安全であることは理解できます。
しかし、頻繁に対向車や先行車と遭遇する市街地においては、ハイビームとロービームを頻繁にきりかえなければならず、その操作はかなり煩わしいものとなります。
周りにクルマがいなくなったと思ってハイビームにしたら、すぐに対向車が来てロービームに切り替えなければならないということを、ひたすら繰り返すことになってしまうからです。
そして、対向車が来ているにもかかわらず、うっかりロービームに切り替えるのを忘れると非常に危険なことになってしまいます。
実際にハイビームにしたまま走っているクルマとすれ違った経験のある人はお分かりだと思いますが、本当に目がくらんで何も見えなくなってしまいます。
この状態は、ある意味ではロービームでずっと走り続けるよりもはるかに危険な状態といえるわけです。
対向車がきたときは、ライトを下向きにしなければならないと頭では分かっていても、人間である以上どうしても忘れてしまうことはあります。
そういった「うっかり」によって対向車に対して危険な思いをさせてしまうというのは、それはそれで大きな問題であるといえます。
ライトを下向きにしたままで走ると道路交通法違反になるとはいっても、実際にそれで検挙されたという人の話をほとんど聞かないのは、そういった事情があるのだと思います。
スポンサーリンク
道路の状況に応じてケースバイケースで判断するのが正解
市街地などの交通量の多いところでは、実際にロービームとハイビームを切り替えて走るというのは困難であるし、場合によっては切り替えを忘れて対向車を危険な状態にしてしまう可能性のあることがお分かりになったかと思います。
実際に、市街地の場合には街路灯があったり、街灯りに照らされていたりして、道路もある程度の明るさが保たれているのが普通ですから、ロービームのまま走ったとしても、それほど危険な場面に遭遇するということはないかも知れません。
街路灯が1本もないような山道を走るような場合は別です。
そういった道路をロービームのまま走ると、ライトで照らされている範囲以外のところは真っ暗闇で何も見えませんから、非常に危険であるということがいえます。
こういった道路では対向車などもほとんど来ないはずですから、基本的にハイビームを使って走り、対向車が来たら必ずロービームに切り替えるといった走り方が正解であるといえます。
ロービームとハイビームの切り替えは、道路交通法の決まりうんぬんではなく、道路の状況に応じてケースバイケースで判断する必要があるといえそうです。
ハイビームを自動調整できる次世代型ヘッドライト
ロービームで走り続けることが道路交通法に違反する行為であり、暗い道路などを走るときには危険が伴うことは事実であると同時に、切り替えを忘れてハイビームのまま走り続けることも非常に危険な行為になります。
そういった、人間の「うっかり」を気にせず、道路状況に応じて最適なライトの状態に調整することのできる次世代型ヘッドライトが注目を浴びています。
明るさセンサーや光学式のカメラなど、さまざまなセンサーからの情報をもとに、ライトの照らす範囲を自動で最適化するというものです。
タイプとしてはいくつかの種類に分けられます。
ハイビームで走っているときに、先行車や対向車を感知したら自動でロービームに切り替わるタイプのものや、常にハイビームにしたままであっても、先行車や対向車がいる部分だけを感知して自動で遮光をするように制御するタイプのものなどです。
こういった技術が採用されているのはまだまだ一部の車種にすぎませんが、安全に直結する技術だけに、近い将来にすべてのクルマに採用されることを切に期待したいものです。
文・山沢 達也
スポンサーリンク