運転免許証にはさまざまな種類がありますが、その中でももっとも取得が難しいのが「第二種牽引(だい2しゅけんいん)」だといわれています。
牽引免許というのは、一般にトレーラーを運転するときに必要になる免許です。
大型トレーラーが交差点を右左折するときに対向車線まではみ出すように侵入し、ガクッと折れるように曲がっていくのを見るたびに、運転技術の高さに感心させられます。
そんな運転技術の高さが求められる牽引免許に、さらに難関の第二種免許があるのをご存知でしょうか?
連結式のバスなどを運転するために必要な免許ですが、現在の日本国内ではそういった車両は走っていませんので、「第二種牽引」を取得してもほぼ宝の持ち腐れ状態となります。
しかし、自分の運転技術を誇示できるステータス性の高い運転免許ということで、毎年ある一定数の受験者がいるようです。
最難関の運転免許といわれる「第二種牽引」は、いったいどのような試験によって取得することができるのでしょうか?
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第二種牽引免許の受験資格とは?
「第二種牽引」免許を受験するためには、どのような条件があるのでしょうか?
まず年齢ですが、満21歳以上である必要があります。
普通免許が満18歳以上なのに対して、3歳ほど高い年齢になっていますが、これは普通免許など他の免許を取得してから3年以上経過していなければ受験できないことになっていますので、必然的に年齢は21歳以上になってしまうわけです。
また、すでに他の二種免許を取得している場合も受験資格を満たすことになりますが、どの二種免許も一種免許取得後3年以上経過していないと受験できませんので、結局受験できるのは21歳以上ということになってしまいます。
最初にクリアーしなければならない適性試験
どんなに運転技術に自信があっても、適性試験をクリアーしないことには、学科試験や技能試験には進めません。
適正試験として行われるのは「視力」「深視力」「聴力」「運動能力」の4項目です。
まず視力検査ですが、こちらは両眼で0.8以上、1眼でそれぞれ0.5以上あることが求められます。
普通免許が両眼で0.7以上、1眼で0.3以上になのにくらべると、条件的には厳しくなっています。
もちろん、裸眼である必要はなく、眼鏡を使用してこの条件をクリアーできればOKということになります。
「深視力試験」というのは、三桿法(さんかんほう)による奥行知覚検査器を使って、奥行きを判断する能力を測定するもので、普通免許などの場合には行われない試験です。
この試験を3回行って、平均誤差が2cm以内だと合格になります。
「聴力試験」は、「10メートルの距離で、90デシベルの警音器の音が聞こえること」となっていますが、実際には、試験場で名前を呼ばれたときに普通に返事ができればOKとなることが多いようです。
「運動能力試験」も、特に何らかの試験を実施することはなく、普通に試験場の窓口まで歩いていけるようであれば問題なしとされるようです。
第一種より難易度が高く合格率が35%の学科試験
学科試験は正誤式(○×式)の問題が95問と、イラスト問題が5問出題されます。
正解率9割以上で合格ということになります。
出題の形式としては、一般の人が持っている第一種普通免許などと同じですが、問題の難易度に関しては一種免許よりも高くなっているようです。
第一種免許の学科試験の合格率が70%程度なのに対して、第二種免許の場合は35%ほどと約半分ほどの合格率となっています。
事前にしっかりと対策をたてて受験する必要がありそうです。
ちなみに、他の二種免許をすでに所有している場合には、学科試験は免除になります。
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合格率が20%ほどと難関な「第二種牽引」の実技試験
一般の人が持っている第一種普通免許の場合、教習所を卒業すれば実技試験は免除になります。
しかし、「第二種牽引」の場合には、実際に試験場に出向いて一発試験を受ける以外に取得方法がありません。
ちなみに合格率は20%ほどとなっており、かなりの難関試験であることは間違いありません。
合格までの平均受験回数は、4回~5回となっているようです。
平成27年には全国で1913人がチャレンジをして、394人が合格となっています。
「第二種牽引」は日本国内ではまったく活躍の場がない運転免許ということになるわけですが、「最難関の運転免許」を所有して自分の運転技術を証明したいという人が、チャレンジしているわけですね。
ちなみに、平成19年には受験者数が4346人いましたから、試験を受ける人が年々少なくなっていることは事実のようです。
実技試験はどのような課題があるのでしょうか?
「第二種牽引」の実技試験は、どういった課題をクリアーしなければならないのでしょうか?
実は、「第二種牽引」の実技試験の内容は、「第一種牽引」とまったく同じ内容となります。
「第二種大型」の場合には、「第一種大型」の試験項目にプラスして、乗り心地や扉の位置に合わせた停止などの乗客を意識した項目が多数ありますが、「第二種牽引」の場合には、特にそういった項目はないようです。
ただし、合格点のハードルは高くなり、「第一種牽引」が70点で合格になるのに対して、「第二種牽引」の場合には80点以上で合格となります。
たった10点に違いですが、減点方式で行われる実技試験においては、ちょっとしたミスで10点や20点減点されたりしますので、10点の違いはかなりハードルが高いといえます。
試験の項目としては「第一種牽引」と同じになるため、「場内の走行」「方向変換」「S字通過」「指定走行速度(50km/h)」「踏切通過」などになります。
これらの項目のうちの最難関が「方向変換」で、実技試験に落ちる人の70%は方向転換で失敗しているといわれています。
次に難しいのが「S字通過」で、試験に落ちる人の20%程度が失敗しています。
最難関の「方向変換」というのはどんな項目なのか?
牽引の免許を取得するときに、もっとも難しいといわれている項目が「方向転換」になります。
方向変換というは、俗に車庫入れなどともいわれ、バックで路地にクルマを入れていく課題のことです。
普通免許を取得するときでも、方向変換は縦列駐車と並んで難関課題といわれていますね。
しかし、牽引の場合の方向転換は、一般のクルマのように、曲がる方向ハンドルを切ればいいという単純なものではないのです。
牽引する車両に角度をつけるために、最初に曲がりたい方向とは逆にハンドルを切る必要があるのです。
たとえば、右の路地にバックで入る場合には、最初は反対方向の左にハンドルをきります。
そうすることで、不思議なことに牽引車両(トレーラー部分)は押し出されるようにして左側の路地に入っていきます。
そして、牽引車両の半分くらいが路地に入った段階で、今度はハンドルを反対の右方向に目いっぱい切って、トラクターとトレーラーの連結部分の曲がりを戻していくわけです。
このとき、角度がつきすぎてしまうと、トラクターとトレーラーの連結部がV字型に折れ曲がったようになってしまい、ハンドルを右に切ってもまっすぐな状態に戻すことができなくなってしまいます。
これを、ジャックナイフ状態などと呼んでいます。
このように、牽引での方向変換(車庫入れ)は非常に難易度が高く、まさに職人芸のような技術が要求されるわけです。
実際の試験でこの「方向変換」をしくじると、マイナス20点となってしまいます。
「第二種牽引」に合格するためには、80点以上取らなければなりませんので、この方向変換で失敗した時点で、ほぼ不合格となってしまうわけです。
参考:牽引二種試験奮闘記
文・山沢 達也
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