A級ライセンスやB級ライセンスを持っていても必ずしも運転がうまいとは限らない?
クルマのA級ライセンス所有者に対して、一般の人はどのようなイメージを持つでしょうか?
多くの人は「ドライビングテクニックに長けて、ものすごく運転がうまい人」というイメージを持つに違いありません。
しかし、そもそもA級ライセンスやB級ライセンスといったものが、どのようなものなのかを理解している人は少ないと思います。
はたして、A級ライセンスやB級ライセンスを持っている人は、本当に運転がうまいのでしょか?
また、そういったライセンスはどのように取得するのでしょうか?
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そもそもA級ライセンスやB級ライセンスとは何でしょうか?
A級ライセンスやB級ライセンスというのは、モータースポーツのためのライセンスであり、FIA(国際自動車連盟)やJAF(日本自動車連盟)などが主催するレースに出場するためには、これらの資格が必要になります。
FIAやJAFが発行するライセンスには「国内B級」「国内A級」「国際C級」「国際B級」「国際A級」「スーパーライセンス」「ドラッグライセンス」「ソーラーカーライセンス」などがあります。
まずは、身近な国内B級ライセンスと国内A級ライセンスがどういったものなのかについて、見て行くことにしましょう。
・一般のレースには出場できない国内B級ライセンス
国内B級ライセンスは、モータースポーツの入門用のライセンスといえるもので、このライセンスを持っていても複数のクルマが同時に競い合う形のレースには出場することはできません。
国内B級ライセンスの所有者がどういったモータースポーツに出場できるのかといいますと、主にジムカーナーやラリー、ダートトライアル、サーキットトライアルなどの、単独の走行でタイムを競うものに限られます。
取得の条件としては、運転免許証を所有する18歳以上の人で、JAFの個人会員であることとなっています。
これらの条件を満たす人が、JAFが主催するライセンス講習を受けることによって、はじめて国内B級ライセンスの資格を得ることができるわけです。
講習はモータースポーツの基礎的なルールを2時間かけて学ぶもので、すべて座学で実技の講習はありません。
つまり、18歳の免許取りたての人であっても、2時間の講習を受ければ誰でもB級ライセンスを取ることは可能なわけです。
ですから「B級ライセンスを持っているから運転がうまい」ということには、必ずしもならないということになります。
あくまでも、モータースポーツに関するルールを知っているかどうかということが、国内B級ライセンスの証ということになります。
・国内A級ライセンスを取得すればレースに出場可能
国内B級ライセンスが、他のクルマと同時に競い合う形のレースには出場できないのに対して、国内A級ライセンスであれば、ワンメイクレースなどの国内で開催されるレースに出場することが可能になります。
ワンメイクレースというのは、参加者全員が同一条件のマシンを使って行うレースになります。
そういった意味では、実際に他のクルマと競い合う形でのレースに出場するための、入門用ライセンスが国内A級ライセンスということになります。
国内A級ライセンスの取得条件は、国内B級ライセンスを所有している人の場合、ラリー、ジムカーナー、ダートトライアル、サーキットトライアルなどの競技に、1回以上出場して完走した実績が求められます。
あるいは、公認サーキットごとに定められたスポーツ走行を25分以上したことがあり、そのサーキットから証明を受けられる場合もOKとなります。
国際B級ライセンスを持っていない人の場合には、公認サーキットごとに定められたスポーツ走行を50分以上行った経験があり、なおかつサーキットからその証明を受けている必要があります。
国内A級ライセンスの取得も、基本的には講習を受けることで可能になります。
ただし、国内B級ライセンスの場合とあきらかに異なるのは、座学を受けたあとのその内容に関する筆記試験があることと、実際にサーキットを走行しての実技に関する講習や試験が行われます。
実技試験といっても、運転技術やタイムなどが判断されるわけではなく、サーキット走行時における信号や合図などのレーシングマナーが身についているかどうかをチェックされます。
車もレーシングマシンなどのサーキット専用のクルマを使用するわけではなく、自分の車を持ち込んで使います。
もちろん、ファミリーカーやミニバンなどであってもかまいません。
そういった意味では、国内A級ライセンスも取得にあたってそれほど敷居の高いものではなく、ある意味では誰でも取得可能な資格ということが言えるわけです。
ですから、国内A級ライセンスを持っているから「ドライビングテクニックが高い」とか「運転がうまい」ということには必ずしもならないわけです。
サーキットを走るためのルールがしっかりと理解できれば、誰でも国内A級ライセンスを交付してもらうことができるわけです。
国際ライセンスの場合はどこが違うのか?
A級ライセンスやB級ライセンスといっても、国内ライセンスの場合には、あくまでレースの入門用のライセンスであり、サーキットを走るための必要なルールが理解できれば取得することが可能となります。
それに対して国際ライセンスを取得するには、実際のレース経験などの実績が必要になり、国際ライセンスを取得することで、本格的なレーサーの仲間入りということができそうです。
それでは、具体的にみていきましょう。
・一部の国際レースに出場可能な国際C級ライセンス
国際C級ライセンスは、国際ライセンスのなかでは一番下のグレードになるわけですが、一部の国際レースに出場することが可能となっています。
国際C級ライセンスを取得するためには、ライセンスの申請をする前12カ月以内において、JAF公認の国内レースで予選を通過して決勝戦を最低でも2回完走していなければなりません。
しかし、国内レースには、ほとんど予選落ちすることなくほぼ全員が決勝に進むことができるレースもあり、あえてそのようなレースに2回参加して実績を作る人もいるようです。
国内ライセンスのように講習会などを受ける必要はなく、あくまでもレースに出場したという実績によってライセンスが許可されることになります。
また、ライセンスを取得したあとも、2年以上レースに出場した実績がないと抹消になってしまいます。
ここが、レースに出場しなくても、ずっと所有を続けることができる国内ライセンスとの大きな違いといえます。
そういった意味では、国際ライセンスの所有者となって初めて「運転がうまい」とか「ドライビングテクニックがある」という表現が当てはまるといえそうです。
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・かなり本格的なレースに参加可能な国際B級
国際B級ライセンスとなると、かなり本格的なレース用のライセンスとなります。
「ル・マン24時間レース」や「世界ツーリングカー選手権」「フォーミュラニッポン」などのかなり知名度の高いレースにも参加することが可能になります。
国際B級ライセンスを取得するためには、2年以内に日本選手権などのレースに出場し、予選を突破して5回以上完走する必要があります。
国際C級のときよりもさらにハードルは高くなっていますが、いずれも「完走」すればOKという点がポイントで、たとえビリであっても、完走さえすれば大丈夫ということになります。
とはいえ、このクラスのライセンス所有者となると、さすがに「本格的なレーサー」というイメージになります。
・フォーミュラ2やインディカーシリーズに参加可能な国際A級
国際ライセンスの最高峰である国際A級ライセンスは、基本的にほぼすべての国内外のレースに参加できる資格といえます。
ただし、F1に参加するためには国際A級ライセンスを取得したうえで、さらに「スーパーライセンス」というものを取得する必要があります。
つまり、F1以外のレースであれば、国際A級ライセンスをもつことによってすべて参加できることになり、まさにトップレーサーであることを証明するライセンスといえそうです。
国際A級ライセンスを取得するためには、申請前2年以内に国際B級ライセンスが必要なレースに5戦以上参加をして総合5位以上になるか、メジャーな選手権で5位以上入賞の実績が必要になります。
国際B級の取得までは、あくまでも「完走」が条件でしたが、国際A級となるとそこに「速さ」が求められることになり、まさにトップレーサーであることを証明するライセンスとなるわけです。
このことを知っていれば、普通のサラリーマンがキャバクラなどで「自分は国際A級ライセンスを持っている」などとお姉さんたちに自慢話をしていたとしても、それが真っ赤な嘘であると簡単に見抜けるわけです。
文・山沢 達也
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