クルマのタイヤというのは、パンクして空気が抜けてしまうと走行できなくなってしまうということは、誰もが常識として理解していることです。
しかし、パンクをした状態でもタイヤ交換せずに80kmほどの距離を普通に走行できるタイヤがあるとしたら、これまで自分が思っていた常識は一気にひっくり返ってしまうでしょう。
実は、ランフラットタイヤと呼ばれるものが、それに該当するのです。
ランフラットタイヤは、空気が完全に抜けてしまった状態で80km近くの距離を走れるだけではなく、スピードも80km/h程度までなら問題なく出すことができるのです。
ランフラットタイヤというのは、いったいどのようなタイヤなのでしょうか?
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チューブレスタイヤとパンクの症状
かつて、クルマのタイヤにチューブが使われていた時代には、タイヤに釘などが刺さると一瞬で空気が抜けてしまいました。
走行中にタイヤ周辺からゴトゴトと音がし出して、ハンドルが取られるような症状がでると、ほぼ間違いなくパンクでした。
その後、チューブレスタイヤが主流になってくると、釘などを踏んでしまっても、すぐに空気が抜けてしまうということは少なくなりました。
空気の抜け具合によっては、近くのガソリンスタンドまでパンク修理のために走らせることも十分に可能だったりすることもあります。
しかし、普通のチューブレスタイヤに釘が刺さった状態で長距離を走ることは不可能ですし、空気圧が下がった状態で走り続けることでサイドウォールに裂け目ができて、タイヤが使いものにならなくなってしまう可能性が高くなります。
そのため、空気圧が甘いことに気がついて、パンクであると判断できればすぐに近くのガソリンスタンドや修理工場に駆け込むか、スペアタイヤに交換するのが基本です。
最近ではスペアタイヤがついていないクルマも多く、代わりにパンクの応急処理剤が積まれていたりします。
ただし、その場合でも応急であることには違いなく、すぐにパンク修理をすることが前提になります。
まだまだ普及していないランフラットタイヤ
チューブレスタイヤでパンクをしてしまった場合、仮にすぐに空気が抜けなかったとしても、走れる距離はせいぜい数キロ程度と考えておくべきです。
もちろん、スピードを上げて走ることは危険なので、徐行して修理可能な場所まで走らせることになります。
それに対して、ランフラットタイヤであれば、80km程度の距離なら、まったく普通にクルマを走らせることができてしまいます。
ランフラットタイヤの歴史は意外にも古く、1970年にダンロップというタイヤメーカーが世界に先駆けて開発をしました。
ダンロップランフラットタイヤ:https://tyre.dunlop.co.jp/tyre/products/base/runflat.html
しかし、高価であることや乗り心地があまり良くないといったデメリットもあり、現在でも日産のGT-Rやトヨタのレクサスといった、一部のスポーツカーや高級車にのみ使用されているというのが現状です。
現在のランフラットタイヤは、初期のものにくらべてだいぶ乗り心地なども改善されてきており、価格が下がってくれば今後はどんどん普及が進んでいくことが予想されます。
ランフラットタイヤはパンクしても安全に走れる
ランフラットタイヤは、サイドウォールの部分が補強されていますので、空気が完全に抜けてしまった状態でもペシャンコになることがないという特徴があります。
空気の圧力のみで車重を支えている一般のチューブレスタイヤに対して、ランフラットタイヤは剛性を高めたサイドウォールによって、タイヤのなかに空気がまったく入っていない状態でも厚みを維持できるようになっています。
そのため、高速道路などでパンクをしてしまった場合でも、突然ハンドルを取られるといった大事故につながりかねない事態を回避することができ、非常に安全性が高いといえます。
また、普通のチューブレスタイヤで高速道路を走行中にパンクに気がついて、クルマを路肩に寄せたりした場合、スペアタイヤとの交換作業中に後続車から追突される危険性が常にあるわけです。
その点、ランフラットタイヤであれば、パンクをして空気が完全に抜けた状態であっても80km/h程度の速度でそのまま高速道路を走らせることができますので、近くのインターチェンジまで余裕で移動することが可能になります。
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ランフラットタイヤはパンクしても気がつかない
ランフラットタイヤは、たとえパンクをして空気が完全に抜けてしまった状態であっても普通に走れてしまうタイヤのため、ドライバーがパンクに気がつきません。
そのため、パンクした状態のままずっと走らせてしまう可能性があります。
そういったことにならないように、ランフラットタイヤが装着されたクルマには、TPMSという装置が取り付けられています。
これは、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システムの略で、パンクによってタイヤ内の空気圧が低下したことを警告灯によってドライバーに知らせることができます。
アメリカでは、タイヤの空気圧が下がったことが原因で起きた事故がきっかけとなり、2007年からこのTPMSの装着が完全義務化されています。
ヨーロッパでも2012年に義務化がされており、お隣の韓国でも2013年に義務化されています。
しかし、自動車大国である我が国日本では、残念ながら義務化が遅れています。
昔からそうですが、どうも日本のお役人というのはこういった対応には後手に回ることが多いようです。
もし、このTPMSの義務化がすすめば、ランフラットタイヤの普及に拍車がかかることは間違いのないところです。
もちろんTPMSはランフラットタイヤ以外にも有効です。
最近のタイヤは非常に扁平率が低く、平べったくなっています。
参考記事:最近のタイヤの扁平率はなぜどんどん低くなっているのか?
そのため、普通のチューブレスタイヤであっても、真横から見た場合に空気が甘くなっていることに気がつかないことも多いのです。
気がついたときには、ペシャンコになっていて走行不能になってしまっていたりします。
TPMSが装着されていれば、パンクの初期の段階に気がつくことができて、最悪の事態を回避することができるわけです。
もちろん義務化はされていなくても、カーショップなどでTPMSを取り付けすることは出来ますが、費用的にはシステム全体で4万円程度かかるようです。
ランフラットタイヤの値段はどれくらい?
とても魅力的に感じるランフラットタイヤですが、一般のチューブレスタイヤとの価格差はどれくらいあるのでしょうか?
225/45R18サイズのタイヤで、比較をしてみましょう。
ブリヂストンのポテンザというタイヤの場合、普通のラジアルタイヤが1本あたり24,100円となっています。
これが同じポテンザのランフラットタイヤだと、30,800円となります。
価格差は1本あたり6,700円ですから、4本だと26,800円になります。
それに対して、グッドイヤーのEfficientGripというタイヤの場合は、通常のタイヤが1本あたり18,360円なのに対して、ランフラットタイヤだと1本あたり45,360円に価格が跳ね上がります。
1本あたりの差額が27,000円もありますので、4本だと108,000円にもなってしまいます。
意外に価格差が少ないのがピレリで、CINTURATO P7の一般のタイヤが1本あたり18,300円なのに対して、ランフラットタイヤは20,300円です。
価格差は1本あたりわずか2,000円ですから、4本でも8,000円の違いしかありません。
こうして比較をしてみた感じでは、ランフラットタイヤはピレリのCINTURATO P7にお得感がありそうです。
4本買いそろえても81,200円と10万円を余裕で切ります。
ただし、レクサスやGT-R以外の国産車はTPMSが装備されていませんので、ランフラットタイヤに変えるときには、TPMSを別途取り付ける必要があります。
そのため、タイヤの代金とは別に4万円ほどを計上する必要があります。
日頃からよく高速道路を利用する人などは、ぜひランフラットタイヤの導入を検討してみるといいでしょう。
文・山沢 達也
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