燃料電池車が話題になっているようです。別名FCVとも呼ばれています。
水素を燃料として走る車で、排気ガスは「水」だけしか出ないという非常にクリーンで環境にやさしいクルマです。
実際に燃料電池車として市販されている国産車もありますが、まだまだ普及してないことにより車両本体価格も高く、普及までの道筋はなかなか厳しいものがありそうです。
はたして、これから燃料電池車が主流となる時代は来るのでしょうか?
燃料電池車というのは電気自動車です
燃料電池車という名前だけをみると、どういう仕組みで走っている車なのか分からないという人も多いことでしょう。
燃料電池車の「燃料」というのが「水素」であることはご存知の通りですが、ただこの水素を直接的に燃料として内燃機関で爆発させて走っているわけではありません。
ガソリン車が、燃料としてのガソリンを内燃機関で爆発させることで動力を発生させているのとは、構造的に大きく変わります。
実は、燃料電池車には内燃機関、つまりエンジンはありません。
どういう仕組みになっているかといいますと、車そのものを動かすのはあくまでモーターとなります。
つまり、燃料電池車というのは、モーターで動く電気自動車なわけです。
しかし、一般の電気自動車が、電源からバッテリーに充電をすることでモーターを動かしているのに対して、燃料電池車は「充電」をしない電気自動車ということになるのです。
燃料電池車は、バッテリーに充電した電気を使うのではなく、文字通り燃料電池によって「発電」をして、その電気エネルギーでモーターを動かすわけです。
燃料電池というのは、酸素と水素の化学反応によって発電します。
そのため、燃料としての水素と酸素が含まれる空気さえあれば、発電し続けることができるわけです。
そして、水素と酸素が化学反応を起こした結果として水(H2O)が発生することになります。
燃料電池車の排気ガスは水しか出ないといわれるのはそのためです。
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市販された燃料電池車の特徴と値段
2014年に、トヨタ自動車から量産タイプとしては世界初となる燃料電池車である「MIRAI」が発売されました。
まさに「MIRAI」の名に恥じない未来志向のスタイリングが特徴です。
ガソリン車にくらべて動力性能がどの程度なのかが気になると思いますが、ガソリン車とくらべてまったく遜色ないどころか、トルク曲線がフラットであるという直流モーターの影響で、むしろ街中などではトルクフルで乗りやすいと感じるに違いありません。
最高出力は154馬力と、ガソリン車ならば2000ccクラスといったところです。
車両重量が1850kgもありますので、154馬力では非力だと思われるかも知れませんが、最大トルクが34.2kgと3500ccクラスのエンジン並なので、スタート時などはむしろ力強く感じることでしょう。
最高速度も175kmとなっており、日本国内で乗る車としては必要かつ十分な性能といえるでしょう。
ちなみに、水素タンクを満タンに充填したときの、航続距離はどのくらいなのでしょうか?
カタログデータはJC08モードで650kmとなっているようですが、実際にMIRAIに乗っている人のデータだと、およそ400km程度の走行は可能なようです。
ガソリン車を満タンにしたときの航続距離と、それほど変わらないといっていいでしょう。
また、電気自動車の場合には、充電に時間がかかるという点がネックになっていますが、燃料電池車の場合は、水素を満タンに充填するまでに3分程度しかかりませんので、ほとんどガソリン車とくらべて差はないといえるでしょう。
しかし、現状は水素ガススタンドの数が非常に少なく、うっかり遠出をしてスタンドが見つからなかったりするとアウトということになりそうです。
電気自動車であれば、近くに充電のステーションがなくても家庭の100V電源で充電することができますが、水素ガスの充填だけは専用設備のあるスタンドが近くにないことにはどうにもなりません。
そういう意味では、燃料電池車はまさにこれからの車ということがいえますし、普及のためには水素ステーションの数が今後どれだけ増えて行くかにかかっていると思います。
トヨタMIRAIの公式サイト:https://toyota.jp/mirai/
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燃料電池車のコストを考えてみる
燃料電池車が量産車として市販されたとはいっても、生産台数はまだまだ非常に少なく、その分が1台あたりにコストに跳ね返ってくることになります。
ちなみに、先ほど紹介したトヨタのMIRAIの価格は、消費税込みで7,236,000円となっています。
ガソリン車の高級車が2台買える金額になります。
また、ホンダから2016年3月に発売になった燃料電池車である)「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエル セル)」の値段も消費税込みで7,660,000円となっています。
たとえ排気ガスが水だけしかでないクリーンで地球にやさしい車とはいえ、国産のセダンに700万円以上を出せるひとはそう多くないと思います。
そのため、現在のところ国から200万円ほどの補助金が支給されるようになっています。
さらに、東京オリンピックに向けて未来の車をアピールしたい東京都では、国の半分にあたる約100万円の補助金を支給しています。
つまり、東京でMIRAIを買えば、補助金のおかげで420万円程度まで値段が下がることになります。
これならば、一般庶民でもちょっと頑張れば買えない値段ではないと思える金額ですね。
ちなみにガソリン車とくらべた場合、燃料代は高くなるのでしょうか、それとも安くなるのでしょうか?
MIRAIに水素タンクを満充填にすると、ガス代は4000円程度になるようです。
満充填で約400km走行できますから、1kmあたり10円の計算です。
これをガソリン車で換算してみますと、1リットルあたりのガソリン代が120円とした場合、12km走行できることになります。
2000ccクラスのガソリン車の実燃費はおそらく12km/L程度かと思われますので、燃料費代に関しては、ほぼガソリン車と変わらないと考えていいでしょう。
ホンダクラリティ FUEL CELLの公式サイト:https://www.honda.co.jp/CLARITY/
水素は爆発の危険があるのではないか?
水素というと、爆発しやすい危険なガスであるというイメージを持たれている方も多いことでしょう。
1937年に起こった、ヒンデンブルグ号という飛行船の大爆発を頭に思い浮かべる人もいるかも知れません。
その大事故を教訓に、現代の飛行船には安全なヘリウムガスが使われていることを考えた場合、車に水素ガスなんか積んでもいいのだろうか、という疑問がわくと思います。
しかし、実際には燃料電池車に搭載される水素タンクは、特殊な素材により頑丈に作られており、実際に車が大破するような大事故を起こしてもタンクが壊れることはないそうです。
また水素ガスそのものも、空気と混じってある一定の濃度にならなければ爆発することなく、ガソリンとくらべて特に危険性が高いということもありません。
仮に、水素が漏れているところに引火したとしても、水素は比重が軽いために火柱は上に昇っていくだけで、周りに燃え広がることはないようです。
また、ヒンデンブルグ号の大爆発も、爆発を引き起こす原因になったのは水素ではなく、飛行船の外皮に使われていた引火性の高い塗料と、エンジンを回すための燃料が引き起こした火災であったという説が最近では有力視されています。
いずれにしても、ガソリンタンクを積んだ車を普段運転している私たちが、必要以上に水素ガスの危険性について恐れる必要はないようです。
文・山沢 達也
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