車を購入するときには、車種やグレードと同様にボディの色も重要な要因の一つになると思います。
多くの人は、単純に自分の好みで車の色を決めてしまっているのではないでしょうか。
しかし、あなたの好みの色が交通事故を起こしやすい色だとしたらどうでしょう?
実際に交通事故を起こしやすいボディカラーというものがあるとされ、科学的にも根拠があるようなのです。
いったいどんな色の車が事故を起こしやすいのでしょうか?
青いクルマが一番事故を起こしやすい?
だいぶ古いデータになりますが、1968年に出版された「Using Colour to Sell」という書籍によると、2048件の交通事故から割り出した車の色別ごとの事故率は以下になっています。
1位 青 25%
2位 緑 20%
3位 グレー 17%
4位 白・クリーム 12%
5位 赤・あずき色 8%
6位 黒 4%
7位 ベージュ・茶 3%
8位 黄・金 2%
9位 その他 9%
この結果をみて、なんとなく違和感をおぼえた人もいるのではないでしょうか?
イメージ的には、黒などの夜間に目立たない色の事故率が高そうですが、このデータだと黒は6位で事故率はわずか4%です。
逆に、白などの夜間の視認性の高い色が事故を起こしにくいイメージがありますが、実際には4位で12%と黒よりも事故率が高くなっています。
唯一納得出来そうなのが8位の「黄・金」で、かなり目立つ色ですので、他の車に存在をアピールすることで事故は減りそうです。
小学生がかぶる帽子の色が黄色であることを考えても、事故防止に効果のある色なのではないかと想像できます。
8位の「黄・金」以外はどうも腑に落ちないランキングゆえに「48年も前のデータなんて、いまとは交通事情も違うしあてにならない」と無視してしまうことは簡単です。
しかし、こういったランキングになるには、それなりの科学的な根拠があるようなのです。
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青や緑の事故率が高いのは人間の目のレンズの仕組みが原因?
「Using Colour to Sell」の著者によると、このようなランキングになるのは、ただの偶然ではなく、それなりの科学的な根拠があるというのです。
それは人間の目のレンズの仕組みにあるというのです。
人間の目は、遠くの物を見るときには水晶体と呼ばれるレンズを薄くしてピントを合わせます。
逆に、近くの物を見るときには、水晶体を厚くして近くにピントが合うようにするわけです。
ところが、水晶体の厚みが変わるのは、単純に見ようとする物体の距離だけでは決まらないようなのです。
実は、見る色によっても水晶体の厚みが変わるらしいのです。
波長の長い色を見るときには水晶体が厚くなり、逆に波長の短い色を見るときには水晶体は薄くなります。
波長の長い色というのは、いわゆる暖色と呼ばれているもので、赤っぽい色になります。
波長の短い色というのは、いわゆる寒色で青や紫といった色が該当します。
つまり、波長の長い赤っぽい色を見ているときは水晶体が厚くなり、近くを見ているときと同じような状態になり、逆に波長の短い青や紫などの色を見ているときには水晶体が薄くなり遠くを見ているときと同じ状態になるわけです。
そして、色収差という現象によって、青いクルマは実際の位置よりも遠くに見えてしまうようなのです。
遠くにあると思っていた車が実際には近くにあるということになればたしかに危険で、ブレーキングが遅れ気味になって事故率が高くなるというのも十分に納得できます。
また、波長の長さがちょうど真ん中に位置するのが黄色で、色収差により距離感の誤認がおこらないとされています。
その結果として、黄色の車は事故率が低くなるとのことです。
また、黄色の場合は目のセンサーともいうべき網膜ににじんだように映るという特徴があるために、実際の大きさよりも大きく感じる効果もあるようです。
黄色が目立つ色であると感じるのは、そういった理由からなのでしょう。
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まったく結果の異なる別のデータも存在します
青いクルマの事故率が高く、黄色い車の事故率が低いというデータには、人間の目の構造による裏付けがあって十分に説得力があるのですが、1999年に発表されたオークランド大学のデータでは次のような順位になっています。
1位 茶
2位 黒
3位 緑
4位 白
5位 青
6位 黄
7位 赤
8位 灰
ご覧のとおり「Using Colour to Sell」のデータとはまったく一致しません。
青が5位ということになると、先ほど納得した目の構造からくる色収差によって誤認が生じるという根拠もちょっと怪しくなってきます。
ただ、黄色に関してはこちらのデータでも6位と比較的低い順位になっており、黄色の車が事故を起こしにくいというのは、どうやら間違いなさそうです。
こちらのデータで注目すべきなのは、黒が2位と上位に来ています。
確かに黒は、夜間などは他の車に発見されにくい色ですので、事故率が高くなっても不思議ではありません。
また、こちらのデータでは灰が一番低い順位になっています。
灰色にシルバーも含めるとすれば、これらの色は明らかに他の車から見て視認性が高い色であり、事故が起きにくい色であることは間違いのないところだと思います。
このように見ていきますと、科学的根拠という点からは先ほどのデータにも一理ありそうですが、われわれドライバーが感覚的に感じる事故率という視点で見ると、こちらのデータの方に信憑性がありそうな気がします。
いずれにしても、黄色の車の事故率が低いのは間違いなさそうなので、安全を第一に考える人は黄色の車に乗るのもいいかも知れません。
ただし、かなり目立つ色であることは間違いないので、よほど黄色が好きな人以外は購入にあたってかなり勇気が必要になりそうです。
文・山沢 達也
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