クルマの査定額というのは、ほとんどのお店でオークション相場や日本自動車査定協会が提供する査定基準に基づいて行われています。
そのため、基本的には全国どこで査定を受けても買取り価格や下取り相場にそれほどの差が生じないような気がします。
しかし、実際にはそうではありません。
車種によっては売却する地域の違いで、買取り価格に大きな差が生じることもあるのです。
ここでは、地域によってクルマの査定額に大きな差が生じるのは、どういったケースなのかについて考えてみたいと思います。
雪の降る地域と降らない地域で4WD車の査定額は大きく異なります
日本という国は、冬になると豪雪が降る地域と、年間を通してほとんど雪の降らない地域があります。
そして、雪が降る地域と降らない地域では、クルマのチョイスも大きく変わってきます。
雪が降る地域で需要があるクルマといえば、なんといっても4WD仕様です。
2WDのクルマにくらべて4WDのクルマは、雪道での走行が抜群に安定します。
そのため東北や日本海側の雪の多い地域では、中古車市場において4WD車に対するニーズが非常に高くなります。
物の値段というのは需要と供給によって決まりますので、4WD車を欲しいと思っている人がたくさんいる地域では、必然的に査定額が高くなるわけです。
たとえば、群馬県や栃木県などでは、北側の地域ではたくさん雪が降りますが、南側の地域ではあまり雪が降りません。
もし、群馬県や栃木県の南側に住んでいる人が4WDのクルマを売却しようと思ったら、同じ県内でも北側のお店に持ち込みをした方が高く売れる可能性があるということになります。
その一方で、太平洋側のほとんど雪の降らない地域や沖縄などでは、4WDのクルマに対するニーズがあまりありません。
4WD車というのは、2WD車にくらべて車重が重くなります。
車重が重くなれば燃費も悪くなりますし、加速性能なども2WDにくらべて劣りますので、雪の降らない地域で4WDのクルマを積極的に買う理由はないわけです。
つまり、雪の降らない地域で4WDの車を購入する人というのは、スキーやアウトドアーが趣味であるといった、一部の人に限られてしまうのです。
ニーズが少なければ、4WD車が雪国などのニーズの高い地域にくらべて高く売れないのは当然のことです。
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東京では驚くほど軽自動車が売れません
軽自動車も、地域によって買取り価格に差の出やすい車種となります。
日本全国における軽自動車の所有比率は、2017年のデータで35.53%となっています。
つまり、日本を走っている乗用車の実に3分の1以上が軽自動車ということになります。
しかし、東京都だけに限ってみると、その数字は一気に下がり、2017年のデータで15.84%となっています。
全国軽自動車協会連合会が統計を取り始めてから、20年近くずっと東京都が最下位です。
参考:軽自動車比率2017年
東京の場合には、電車やバスなどの公共の交通機関が発達しているために、通勤や日常の足としてクルマを使うケースは非常に少ないといえます。
軽自動車とういうのは、セカンドカーとして所有する人も多いのですが、東京に住んでいる人にはそもそもセカンドカーという概念があまりないはずです。
東京でクルマを所有している人の多くは週末などに趣味やレジャーで使用することを目的としているため、1家族にクルマは1台というのが普通です。
そのため、必然的に軽自動車の比率が下がってしまうのだと思います。
また、都市部でクルマを所有するということは、駐車場などの維持費管理のための費用が地方にくらべてかかります。
都市部ではクルマというのはある意味では贅沢品であり、クルマを所有している人というのは相対的に所得の高い人ということがいえます。
都市部で軽自動車があまり売れずに、どちらかというと高級車が売れる傾向にあるというのは、そういった理由もあるのではないかと考えられます。
それに対して公共の交通機関が発達していない地方の場合には、クルマは生活必需品です。
クルマがないと通勤できませんし、買い物にも行けません。
そのため、地方では大人一人に対してクルマを1台所有するというケースが多くなります。
家族で何台もクルマを所有することになるわけですから、税金などの維持費が安く燃費もいい軽自動車をセカンドカーとして選択する人が多いのも当然です。
ちなみに、軽自動車の比率が一番高いのが、沖縄県です。
沖縄を走っている車の53.55%が軽自動車となっています。
つまり、沖縄を走っているクルマの2台に1台は軽自動車ということになります。
沖縄で軽自動車の比率が高い理由としては、クルマが生活必需品であるということや世帯収入が全国的にも低いということなどが考えられます。
東京都の平成30年度の最低賃金が1時間あたり985円なのに対して、沖縄は762円となっています。
このような理由から、都市部では軽自動車のニーズが少ないために買取り価格が安くなる傾向にあり、クルマが生活必需品で世帯所得が低めの地方では高くなる傾向にあります。
あなたの住んでいる地域でのクルマの査定額は以下のリンク先から簡単に知ることができます。
農村部で絶対的な人気があるのが軽トラックです
軽自動車の需要が地域によって大きな差があるということは理解できたかと思いますが、それ以上に極端なニーズ差が生じるのが軽トラックです。
軽トラックは、農村部では非常に人気に高い車種です。
かつては耕運機やトラクターなどを使って農作物を運搬していましたが、最近の農家では軽トラックが大活躍をしています。
コンパクトで小回りが利き、狭い田んぼ道でも入っていくことができる軽トラックは、まさに農家のためにあるクルマといっても過言ではないほどです。
もともと軽トラックというのは中古車市場での値崩れがおきにくく、年式の古いものであっても高額で売れたりすることが多いですが、特に農村部であればかなりの高額査定が期待できます。
また、軽トラは4WD仕様が高く売れます。
田んぼや畑周辺の悪路を走ることが多いため、走破性の高い4WDはニーズが高いのです。
乗用車だと4WDが高く売れるのは雪国だけになりますが、軽トラの場合には基本的に全国どこでも4WDが高く売れる傾向にあります。
そんな農村部で大人気の軽トラックですが、当然ながら都市部ではニーズはありません。
軽トラの活躍の場ともいうべき、田んぼや畑が都市部にはほとんどないからです。
なんらかの理由で都市部に住む人が軽トラックを買ってしまったら、売却時の査定額にはそれほど期待しない方がいいかも知れません。
中古車の輸送コストも地域ごとの査定額の差を生む原因になります
4WD車や軽自動車のように、地域によって需要に大きな差がある車種の場合には、需要のない地域で買取りをされたクルマを需要のある地域まで運んで販売することになります。
たとえば、雪がめったに降らない関東地方で買取りをした4WDのクルマをオートオークションに出品したりするときに、新潟などの雪国の会場まで運搬して出品したりします。
あるいは、高級車などの地方ではあまり売れないクルマを、都市部で開催されるオークション会場まで運んで出品するということもよく行われます。
そうなりますと、現地で買取りをされてそのまま現地のオークションに出品されるクルマにくらべて、余分に輸送コストがかかることになります。
それでも、オークションで無事に落札されれば問題ありませんが、落札されずにクルマを持ち帰ることになったりすると、さらにコストが跳ね上がってしまうことになります。
また、オークションに出品せずに自社で直販をしているような業者であっても、その地域ではあまり売れないクルマを買取りしたときには、ニーズが高い別の地域の店舗まで運んで販売したりします。
そういった輸送コストを誰が負担するのかといいますと、結局はクルマを買取り店に持ち込んだり下取りにだしたりしてクルマを手放す人ということになります。
つまり、その地域にマッチしていないクルマを売却するときには、どうしても査定額は安くなってしまうということです。
クルマの買取り業者にしてみれば、少なくとも輸送コスト分は安く買取りをしないと利益が出にくくなってしまいますので、これは仕方のないことです。
また、輸送コストというのは、高額なクルマであっても軽自動車のように安価なクルマであっても基本的には変わりません。
そのため、安価なクルマの方がもともとのクルマの値段に対する輸送コストの割合が高くなるということになります。
このように、クルマのリセールバリューというのは、単純に人気車種やグレードなどだけではなく、売却をする地域にマッチするかどうかによっても大きく変わってくるということを、頭の片隅に入れておくようにするといいでしょう。
文:山沢 達也
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