前方を走っているクルマが、交差点の手前で突然ブレーキを踏んだのでこちらもあわててブレーキを踏んだら、そのクルマは交差点直前でウインカー出すと同時にハンドルを切って左折をしていく。
ドライバーであれば、そんな光景を何度も目撃しているに違いありません。
また、車線変更のときに一切ウインカーを出さずに、右へ左へと蛇行しながら他のクルマを追い越していく悪質なドライバーをときどき見かけることがあるでしょう。
しかし、こういった行為はあきらかに交通違反であるにもかかわらず、違反切符を切られたという人の話を聞いたことがありません。
こうした行為は他のドライバーにとって迷惑でなおかつ危険であるにもかかわらず、なぜ警察は本格的に取り締まろうとしないのでしょうか?
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ウインカーを出さなくても交通違反をしているという認識がない?
交差点の30m手前では必ずウインカーを出さなければならないことや、車線変更の3秒前にウインカーを出さなければならないことは、ドライバーならばみんな知っているはずです。
教習所で運転を習っているときには、誰もがお手本のように交差点の30m手前や、車線変更の3秒前にはウインカーを出していたはずです。
そうしないと、教官がハンコを押してくれないので当然ですね。
しかし、運転免許の試験に合格して、自分一人で道路を走るようになると、いつの間にかそうしたルールは頭の中から消え去ってしまう人が少なからずいるようなのです。
「ウインカーを30mも手前から出すなんて、優等生っぽくてカッコ悪いぜ!」
ヤンキーのお兄さんたちはそう思うのかも知れません。
しかし、ヤンキーどころか、日頃からまじめなお父さんやお母さんたちが、平気で交差点の直前でウインカーを出すといった危険な行為をしているのです。
特に、休日にしかクルマに乗らないような、運転に不慣れなドライバーがそういった行為をする傾向があるようです。
つまり、本人にはまったく悪気はなく、周囲のクルマをあわてさせているという認識もないわけです。
ウインカーを出すのは事故防止のために必要不可欠
ウインカーというのは、周りのクルマに対して自分の進路方向を知らせる大切な役目があります。
周りのクルマにしてみれば、ウインカーを点滅させているクルマの進路方向が予測できるので、ブレーキ操作なども余裕を持って行うことができるわけです。
また、自分のクルマが他のクルマに追突されたりしないための、自己防衛の手段でもあります。
つまり、ウインカーをしっかりと出すということは、事故を防止するためには必要不可欠な行為といえます。
同じ交通違反でも、駐車違反などとくらべてよほど危険性が高いと思います。
それなのに、ウインカーを出すという行為を、あまりにも軽視している人が多いのが現実です。
なぜ警察はウインカーのルールを守らない車をどんどん検挙しないのか?
ウインカーを右左折の直前にだしたり、ウインカーを出さずに車線変更をしたりという行為は、道路交通法第53条の合図不履行違反になります。
合図不履行違反で検挙されると、違反点数1点と6000円の反則金が科せられることになります。
しかし、スピード違反や駐車違反で捕まった人の話はよく耳にしますが、合図不履行違反で捕まった人の話はあまり聞いたことがないと思います。
ちなみに、平成29年度に摘発された交通違反別のランキングは次の通りです。
1.最高速度違反
2.一時停止違反
3.携帯電話使用等違反
4.通行停止違反
5.信号無視
6.駐停車違反
7.追い越し・通行区分違反
8.踏切不停止等
9.免許証不携帯
10.整備不良運転
11.酒酔い・酒気帯び運転
12.無免許運転
13.積載違反
交差点の直前でウインカーを出すクルマや車線変更のときにウインカーを出さないクルマを街中であれほどみかけるのに、合図不履行違反はランキングにまったく顔をだす気配がありません。
なぜ、警察は合図不履行違反の車両を検挙しないのでしょうか?
一番の理由としては、違反車両を捕捉しにくいという点があるのだと思います。
スピード違反であれば、ネズミ捕りやオービスなどによって、違反車両を待ち構えていて捕捉することが可能です。
また、駐車違反なども、違反車両が動かぬ証拠としてそこにあるわけですから、違反切符を切ることは容易です。
ところが、合図不履行違反に関しては、走行しているクルマの流れの中で発生する違反なので、たまたまパトカーの直前を走っているクルマが違反でもしなければ、捕捉をするというのは困難でしょう。
それに、日頃から合図不履行違反をしまくっているドライバーであっても、すぐ後ろにパトカーが走っていることに気がつけば、教習所に通っていたときのような優等生的な運転をするに違いありません。
スピード違反や駐車違反のように簡単には捕まえられないというのが、合図不履行違反での検挙数が少ない1つの原因になっていると思われます。
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合図不履行違反を厳密に取り締まるのは困難?
合図不履行違反をしているクルマは、どんどん取締りをしてほしいと思っている人は少なくないでしょう。
しかし、合図不履行違反を厳密に適用すると、かなりの数のドライバーが検挙の対象になってしまう可能性があります。
「俺は交差点の30m手前では必ずウインカーを出しているし、進路変更のときにも3秒前にウインカーを出しているから絶対に大丈夫だ」
そんなふうに胸を張って言う人もいるかも知れません。
しかし、そんな人であっても、絶対に違反をしないとは言い切れません。
そもそも、30mという距離がどれくらいなのかを、目測で判断するのは容易ではありません。
交差点のかなり手前からウインカーを出しているつもりでも、実際には20mくらいだったりする可能性もあります。
また、進路変更の3秒という時間にしても、人によってその感覚はまちまちです。
実際に時計の秒針を眺めながら数えてみると分かりますが、3秒という時間は思った以上に長く感じるはずです。
自分では3秒以上前からウインカーを出していたつもりでも、実際には2秒程度である可能性もあります。
このように、ウインカーを出すタイミングというのは、ドライバー個人の感覚に頼る部分もあるので、厳密に30mや3秒というルールをすべての人が守るというのは困難といえます。
もし、警察がメジャーとストップウォッチを持って取締りをしたら、かなりの数のドライバーが検挙の対象になってしまいに違いありません。
また、合図不履行違反が適用されるのは、右左折のときや車線変更のときだけではありません。
路肩に停車するときには左側のウインカーを出さなければなりませんし、その状態から発進させるときには右側のウインカーを出さなければなりません。
右左折のときや進路変更のときにはしっかりとウインカーを出している人であっても、停車や発進のときにはうっかりと忘れてしまうという人も少なくないでしょう。
このように、合図不履行違反を厳密に取り締まるとなると、対象者があまりにも多くなってしまうために、よほど悪質な場合を除いては警察も大目にみてくれているというのが現実のようです。
ドライブレコーダーの動画をもとに検挙はできないのか?
最近はドライブレコーダーを設置しているクルマも多くなっています。
そのため、合図不履行違反をしているクルマの証拠動画を撮影しようと思えばいくらでもできます。
普通に道路を走っていれば、ウインカーのルールを守らないクルマはいくらでも目にするからです。
実際に、自分の前方を走っていたクルマが交差点の直前でウインカーを出して左折したことに腹を立てて、ドライブレコーダーで録画した動画を警察署に持ち込む人もときどきいるそうです。
しかし、その動画をもとにして、警察が合図不履行違反のドライバーを検挙するということはないようです。
撮影がクルマの後方からなので、ドライバーを特定できないからです。
オービスがドライバーの顔を撮影するのは、誰が運転していたかを明確にすることで「友人にクルマを貸していた」などと言い逃れができないようにするためです。
同様に、合図不履行違反をしたクルマのナンバーがドライブレコーダーに映っていたとしても、そのクルマの所有者と運転者が同一人物かどうかを動画から判断することは困難です。
目の前で交通違反をしたクルマを捕まえてほしいという気持ちは分かりますが、ドライブレコーダーの画像を警察に持ち込んでもあまり意味はなさそうです。
文:山沢達也
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